農業利益創造研究所

コラム

松下幸之助氏は「経営者は人柄だ」と言っていた、優良経営者の共通点

Panasonic(旧松下電気器具製作所)を一代で築き上げ、いまだに経営の神様としてその思想や哲学を後世に残す松下幸之助氏が、「経営者は人柄だ」と考えていたという話はあまりにも有名ですが、農業経営においてもどうやら同じことが言えるのかも知れません。

研究の一環としてヒアリング農家にアンケートを実施させてもらうなかで、直接的に経営や農業に関係ない「少し横道にそれた質問」にもいくつかご回答いただいています。

これらを集計したところ、農業者の方々の人間味に溢れる人柄がよくわかる興味深いデータとなりました。

今回はこれらのデータから見えてきたヒアリング農家の「人物像」についてです。

※「ヒアリング農家」について詳細は、以前の記事「優良稲作経営農家をヒアリングしたらこんなにすごかった!」を参照ください。

農業経営者はピンチに強い?

まずはじめに「無人島に持って行くなら?」という今回で最も横道にそれた質問を投げかけて返ってきた回答の集計結果です。

canvas not supported …

一見すると、さほど大きな特徴がないようにも見えましたが、細かく見ていくと様々な傾向が見えてきます。

例えば1位が「刃物」という括りになっている理由は、一般的に想像される「サバイバルナイフ」の類に混じって「ナタ」と回答した方が多かったため。

唐突な質問に、普段から使い慣れた道具の名前がひらめいたといったところでしょうか。一般人にとってはあくまで空想に過ぎないシチュエーションですが、農業経営者の方々には無人島で実際に「ナタ」を振るっている自分の姿が鮮明に想像できるのかも知れません。

さらにこのアンケートで一番面白い特徴が見られたのは3位の食料系。

一般的に食料という括りで考えると、例えば缶詰やチョコレートなどいわゆる保存食の類が回答にあがるケースが多いようですが、自分の口に入れるものは自分で調達するというマインドが強いのか、ほとんどの方が食料を調達するための道具を回答にあげました。

また、食料系という括りの中で「種」という回答が4割近かったというのも農業経営者ならではの発想でしょう。既に出来上がった食料品を答えた方は1割にも満たないという非常に面白い結果でした。

加えて、一般的な回答では「お酒」や「ゲーム」など娯楽系の順位がもう少し低くなるようですが、ヒアリング農家の場合は堂々の第4位。

「無人島」という言葉から「サバイバル的な状況」よりも「何も考えず自由に過ごせる時間」を連想された方が多かったようです。

今回は集計の都合上「食料系」と分類した「釣り竿」という回答ですが、これを「娯楽」としての意味合いも含んでいるものと考えると、この傾向は上記の集計の数値で見るよりもさらに高い可能性もあります。

普段から大自然との関わりの深い農業経営者には、無人島に取り残されるくらいさほど危機を感じる状況ではないのかも知れません。

趣味趣向について

一般的に経営者たるもの、身につけるものには気を使うべきという考え方があります。

お客様や取引先と直接会う機会の多い営業マンは「自信をつけるために高い腕時計をつけろ」とアドバイスを受ける事も多いのだとか。

特に所得の高いビジネスパーソンには、自らのステータスを示す高級腕時計や高級車に傾倒する方も多いようですが、これをヒアリング農家に当てはめた場合はいったいどうなるのでしょうか。

持っている腕時計と自家用車のメーカーを尋ねて見ました。

まず腕時計ですが、こちらはなんと40.4%がそもそも「腕時計を身につけない」という回答。それもそのはず、理由は「農作業の邪魔になるから」だそうです。

canvas not supported …

時計をすると回答された方々も、メーカー別に見ると「1位:カシオ」「2位:セイコー」「3位:シチズン」と、安くて機能の優秀な国内メーカに人気が集まっています。

canvas not supported …

集計している中で面白かったのは、1位のカシオにおいてメーカー名を尋ねているにもかかわらず「Gショック」とご指名で票を入れられた方が多かった点。

「壊れない」という圧倒的な機能美を持つ時計だけに、ファンの方が多いようです。

普段から農業機器の費用対効果と向きあっている農業経営者らしい視点とも言えるでしょうか。

この結果から推察すると、どうやらヒアリング農家の方々は「質実剛健」を好む傾向が強いと言えそうです。

次に自家用車についてですが、こちらは一般的なデータより少し変わった傾向が見られました。

canvas not supported …

ダントツの1位は高級車からコンパクトカーまでラインアップが豊富で販売台数世界一のトヨタ。

年齢層の高い世代にとっては特に「安くて壊れない車の代名詞」「日本を代表する世界企業」というイメージが強く、一般的な数値よりもさらに高い割合を占めており、トヨタがヒアリング農家から厚い信頼を得ている証拠だと言えそうです。

逆に気になるのは、販売シェアで言うと「スバル」の前後あたりに入ってきそうな「マツダ」という回答が見当たらなかった点。

2000年以降の新生マツダは「走り」に対する思想レベルが高いと言われ若い世代を中心に厚い信頼を得ているイメージがありますが、そういった思想が年齢層の高いヒアリング農家のニーズにはあまりフィットしないのかも知れません。

時計の集計から見えてきた「質実剛健」を好む傾向も、車に求める「質」の部分が「走り」ではなく、ファミリーカーとしての機能性に評価軸が傾いているとすると納得がいきます。

一方で、時計で言うとロレックス、車ではレクサスやBMWなどハイクラスなメーカーを選んだ層の意見として「農業は儲かる職業だということをアピールし、農業人口の増加に貢献したい」という声も聞かれました。

ハイクラスなブランドが持つ「ステータス感」を効果と考えると、ここもやはり「費用対効果」的な計算がしっかり働いている様です。

ヒアリング農家が自慢に思うこと

そして、ヒアリング農家の方々の人柄が最もよく現れ、読んでいて思わずほっこりしてしまったのが「あなたの自慢」についてフリー項目で自由にお答えていただいた内容を読んでいる時でした。

回答の傾向を大きく分類すると以下の通り。

canvas not supported …

実はここで最も注目すべき点が非回答(なし)の割合の高さです。

自慢というワードに対して「なし」と答えた方が全体の31.1%と、その他のアンケートではとても積極的にご協力いただいているヒアリング農家の方々の特性を考えると、あまりにも不自然に高い非回答率です。

この理由は、実際に「自慢はしない」という回答があったことから推察する事ができました。

質問内容について無関心だったり、本当に「自慢がない」という類の非回答ではなく、どうやら「自慢を人様に語るべからず」といったマインドが強く働いた結果のようです。

ですが、そんな自慢の苦手な方々でもついつい「自慢」したくなってしまう事があるようで、このアンケートで一番目についたのは「子供」や「息子」というキーワードを含んだ回答でした。

中には『新しく買ったコンバイン(孫と展示会に行き、キャビン付きじゃなければ乗らないと言われ購入):原文ママ』と、一見コンバインを自慢しているのかと思いきや、どうやらお孫さんとのエピソード込みで自慢に思っている様子が見て取れます。

他にも妻であったり地域の人であったり、身の回りの人との関わり合いを大事にしているということがよくわかるエピソードが多く寄せられました。

それを裏付けるのが次のデータです。

積極的に異業種と交流

「異業種(農業関係者以外)の方との交流」があるかを尋ねたところ、半数近い人が「ある」と答えました。

canvas not supported …

具体的には、役員の仕事や青年会、消防団など地域活動に参加している方が多く、他業種の人とはそういう場所で広く交流しているとの回答が見られました。

農業関係者以外の人脈から情報を得る機会の重要性を意識して交流している方もおり、それが農業の経営にも活きているという事のようです。

ここでも人との関わりを大切に考える傾向が強く表れています。

そして最後に「どんな時に幸せを感じる?」という質問の集計結果です。

価値観が如実に表れる質問で、アンケート前の予想では「仕事で評価された時」「夢が叶った時」など、大きな成果をあげた事に関する回答が多くなると考えていましたが、実際はこの様になりました。

canvas not supported …

ヒアリング農家の方々が回答にあげたのは、「家族」「睡眠」「飲食」「収穫」と日常に関するものが約8割を占めています。

家族と一緒に過ごす時間や、毎日行っている睡眠や飲食。つまり、高所得農家の皆さんは、日常生活の傍にあるものを大切に想い、そこに幸せを感じていらっしゃるようです。

まとめ

松下幸之助氏のいう経営者に求められる「人柄」とはすなわち、人を大切に考える人間観を根底に持ち、素直な心で使命感をもって自分の仕事に取り組める人物を指しているのだそうです。

それを踏まえて今回の結果を見ていると、ヒアリング農家の方々の人物像は驚くほどに合致しています。

何事にも物おじをせず、行動力があり、人を大切に、だが損得には厳しく、冷静な判断力を持ち合わせている方々だという事がわかりました。

どんなビジネスでもやはり、成功する秘訣はまず根底にある人間力を磨く事が非常に重要なのだと、実例を通して知る事ができた大変貴重なデータでした。

南石教授のコメント

今まで見たことのないような切り口・視点で、優秀な経営者である高所得農家の素顔が垣間見える結果がでています。

われわれの多くはこうした情報に好奇心をくすぐられます。

今後は、人工知能AIを活用して、一般の平均的な所得の農家を対象にしたインタビュー結果と比較することで、高所得農家の素顔が明らかになると思います。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。