農業利益創造研究所

コラム

新規就農者必見! 農業所得トップ100農家の経営を分析してみた

個人情報を除いた2020年度の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家16,590人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

農林水産省の統計調査によると、令和元年の新規就農者は55,870 人であり、その中で新規自営農業就農者は42,740 人、新規雇用就農者は 9,940 人、新規参入者は 3,200 人です。新規自営農業就農者とは親の経営を引き継ぐことなので、経営作目はすでに決まっているケースがほとんどですが、新規参入者は自分で作目を選択することになります。

それでは、利益を出すためには、どういう農産物を生産すれば良いのでしょうか? この永遠の課題に、今回はデータ分析から迫ってみたいと思います。

農業簿記ビッグデータの中から作目別に世帯農業所得(控除前農業所得+専従者給与額)が高いトップ100人の農家を抽出し、どのような地域で何の作目を経営すればよいか分析してみました

トップ100農家の世帯農業所得はこんなにすごい

作目別にトップ100農家の世帯農業所得の平均を集計すると、このようになりました。全データの平均と比較して3~4倍の所得額で、世帯として年収1,000万円以上なんて羨ましい限りです。

作目別にみると、野菜農家が2,400万円! こりゃまたぶったまげた、という金額です。

ちなみに、ビニールハウスを使用する施設園芸の方が露地野菜よりも儲かる、と言われていますが、この会計データでは露地野菜>施設園芸、という意外な結果が出ました。

露地野菜のトップ100はほとんどが北海道の農家です。データを分析すると、じゃがいも、すいか、コーン、甜菜、玉ねぎなどの野菜を1作目10ha以上作付けし1,000万円以上販売し、さらに複数の野菜を栽培している農家がほとんどでした。

農業所得率でみると畜産は売上や所得は大きいですが、経費も多くかかることがわかります。一番所得率が高く効率の良い作目は果樹ですね。果樹は木が育って果実が得られるまで時間はかかりますが、その後はあまり経費がかからず、ブランド化して高く売ることができ、効率の良い農産物といえるのかもしれません。

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世帯農業所得率 (%)
全国平均 Top100平均
普通作 26% 39%
野菜 27% 35%
果樹 34% 45%
施設園芸 26% 38%
酪農 15% 19%
肉牛 13% 21%

トップ100農家のベスト3の都道府県は

トップ100農家はどこの都道府県が多いのか、何を生産しているかを作目別に集計しました。

経営作目別 世帯農業所得TOP100の都道府県ランク
区分 順位 都道府県(件数) 主な作目
普通作 1位 北海道(70) 稲+大豆+小麦+野菜がほとんど
2位 秋田県(6) 米単一
3位 青森県(4) 稲+果樹or大豆
山形県(4) 稲+果樹or大豆
長野県(4) 稲+果樹or大豆
野菜 1位 北海道(76) 野菜(様々)+大豆+小麦がほとんど
2位 栃木県(3) れんこん、ねぎ、レタス
茨木県(3) ほうれんそう、大根
鳥取県(3) スイカ
3位 岩手県(2) キャベツ
千葉県(2) 大根、キャベツ
果樹 1位 愛媛県(15) すべてミカン
2位 長野県(13) ぶどう、りんご、プラム
3位 山形県(10) さくらんぼ、西洋なし、桃
施設園芸 1位 栃木県(19) ほとんどいちご
2位 愛知県(11) いちご、菊、きゅうり、トマト
3位 北海道(10) プラム メロン、トマト、花
酪農 1位 北海道(38) 酪農+野菜(コーン、小豆)
2位 栃木県(19) 酪農単一
3位 鳥取県(8) 酪農単一
肉牛 1位 栃木県(17) 肉牛+水稲が多い
2位 鹿児島県(12) 肉牛単一
3位 北海道(11) 肉牛+水稲、甜菜、小豆が多い

普通作(米+麦+大豆)と野菜はダントツで北海道の農家が高所得です。土地利用型の農業をするなら北海道で経営したいところですね。

果樹は見ての通り、おいしい果物が採れる産地がそろいました。酪農はもちろん北海道がトップ、そして肉牛は鹿児島が入ってきました。

北海道では普通作や野菜が強く、酪農も雄大な土地を生かして、複合経営を行って高利益になっているようです。茨城県はれんこん、栃木県はほうれんそう、鳥取はスイカ、愛媛県はみかん、栃木県はいちごなどその地域や自然に合った特産物を集中的に作っている農家が高所得です。

まとめ

農業をやったことのない新規就農者が、高所得農業をどこの地域で行うか迷ったら、北海道で露地野菜を大規模に作付けするのがおすすめです。

北海道以外で行う場合は、小松菜、ホウレンソウなどの葉物野菜や、ジャガイモ、たまねぎなどの根菜類、キュウリ、トマトなどの果菜類が栽培しやすいと言われてます。これらは、大規模な土地が不要で、設備投資が少なくてすみ、労働力もさほどかからず、栽培しやすい作目だとのことです。

しかし、これらはあくまでも一般論で、重要なのは「その土地に合った作物が最も利益が出る」ということです。農産物が自然の恵みにより、収穫量やおいしさや病害虫被害などに影響されるのは当然です。高利益の農業経営を目指す新規就農者の方は、ぜひこれらの分析結果を参考にしてみてください。

南石教授のコメント

農業界では、しばしば、〇〇御殿という言葉が聞かれます。ひと昔は、キャベツ御殿やレタス御殿が有名でした。天候不順などで多くの地域でキャベツやレタスの生産量が減少し市場価格が高騰します。その一方で、天候不順の悪影響を受けなかった地域の農家の収入は大幅に増加して、御殿が立つほどの所得になるということの比喩として、キャベツ御殿やレタス御殿が使われました。

天候に関わりなく、安定して高所得を得ている農家もあります。例えば、北海道のように大規模な農地を所有している農家や、全国的に有名なブランド農産物の産地の篤農家などです。こうしたトップ農家について、さらに詳しい分析を進めれば、農業で成功する方程式がさらに詳しく分かるかもしれません。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。