農業利益創造研究所

コラム

儲かる野菜はどれ?販売金額や所得を徹底調査(施設園芸編)

個人情報を除いた2020年度の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家16,590人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

野菜農家の簿記データを元に「どの野菜が儲かるのか?」について掘り下げるこちらのコラム、今回は「施設園芸」についての分析結果をお届けします

一般的に「露地栽培」は低単価の野菜、手間と費用が掛かる「施設園芸」は高単価の野菜というイメージがありますが、果たしてどのような結果になるでしょうか。

なお、露地栽培編と同様に、米・茶・たばこ・花き・樹木・果樹等が主幹作目であるデータは除外し、「野菜」が主幹作目である農家の簿記データのみを分析対象としています。また、「兼業農家を除く」という観点から、販売金額200万円以下のデータは除外しています。

手掛けている農家が多い「人気」の施設園芸野菜は?

canvas not supported …
地域内で20%以上の施設園芸野菜農家が主幹作目にしている作目
作目 高採用率の地域
トマト 東北、北陸、関東・東山、東海、近畿、中国、九州、(四国)
いちご 東北、関東・東山、東海、近畿、(四国、九州)
きゅうり 関東・東山、四国
ミニトマト 東海、(東北、近畿)
ピーマン (九州)
アスパラガス
なす (四国)

※( )書きは15%以上

第一位はトマトで、ほぼ全ての地域の野菜農家の15%以上が栽培を行っています。露地栽培の集計においても、北海道のばれいしょについでトマトは第二位でしたが、施設園芸においても人気は根強いようです。

※なお、北海道で施設園芸を行っている野菜農家は非常に少なく、露地栽培編と違って、今回の「施設園芸」における集計では、北海道特有の作目の影響はほとんど見られません。

第二位はいちご、第三位はきゅうりと続いています。いちごもトマトほどではないにせよ、全国的な人気を誇っていて、農家が20%以上が栽培している地域も多くなっています。

施設園芸で栽培される野菜は、見た目が重視される(見た目が良いと高単価で取引される)ものですので、生で食することの多い野菜が選ばれている印象です。

地域性としては、ピーマンが九州で、なすが四国で15%以上の農家に栽培されています。もともとの栽培農家が少ないという理由もあるでしょうが、アスパラガスは特に多い地域はありませんでした。

施設園芸野菜の平均作付面積・販売金額は?

次に、主幹作目である野菜の平均作付面積について、調べてみます。

canvas not supported …

当たり前ながら、露地栽培よりも遥かに狭い面積での栽培が行われていることがわかります。「露地栽培編」の面積グラフと比較すると、(作目ごとにばらつきはありますが)約10分の1です。新規就農者は広い土地を最初から用意するのが大変なため、これらの野菜は新規就農者に人気がある印象です。

一方、面積においては作目別の特徴は出にくくなっているようで、ねぎやほうれん草がやや大きいですが、それ以外の作目では面積に大差がありません。

それでは、販売金額はどうでしょうか。

canvas not supported …

面積が大きいほうれん草やねぎがとりわけ販売金額が高いということはなく、さほど大きな違いはありません。平均面積・販売金額ともに北海道組が突出していた露地栽培に比べると、比較しやすいグラフになっています。

【施設園芸】作付面積(a)当りの販売金額 トップ5
1位 しいたけ 1,824,735円/a
2位 きゅうり 811,454円/a
3位 ミニトマト 770,895円/a
4位 いちご 721,171円/a
5位 なす 705,553円/a

平均販売金額÷作付平均面積の数字を比較してみると、もっとも高いのはしいたけでダントツです。きのこは一般的な野菜とは栽培方法が違うので単純には比べられませんが、狭い場所で販売金額を上げるにはしいたけが良い、という考えには一理あるかもしれません。

次点がきゅうり、その次はミニトマト、その次はいちごとなっており、栽培している農家が多い作目とほぼ一致しています。露地栽培に比べて施設に費用がかかる施設園芸では、農地に対して効率よく利益が出せることが重視されているのかもしれません。

施設園芸野菜の平均所得・所得率は?

世帯農業所得・世帯農業所得率についても、チェックしてみましょう。
※単語の定義については、統計分析に使用している用語の説明をご確認ください。

canvas not supported …

野菜の特徴として、稲作に比べて雑収入(補助金)の影響が少ないため(「2020年に儲かった作物分野は? 様々な数字を徹底比較」)、販売額と所得額が比例する傾向にあります。所得額はきゅうりが一位となっていますが、決してダントツというわけではなく、第二位のなすや第三位のねぎと大差ありません。

次に、所得率についても見てみます。

主幹作目 所得率
トマト 25.3%
いちご 31.3%
きゅうり 31.4%
ミニトマト 20.8%
ピーマン 27.0%
アスパラガス 35.2%
なす 32.4%
ねぎ 26.5%
しいたけ 12.0%
ほうれん草 27.0%

販売額・所得額では目立った結果ではなかったアスパラガスが、高い所得率をたたき出しているのが意外なところです。つまり、アスパラガスは費用が少なく効率よく稼げる野菜ということになります。

なお「露地栽培」編では、アスパラガスは一覧の作目から漏れておりますが、露地栽培のアスパラガスを分析したところ、所得と販売額はそれほど高くないが所得率は高いという同傾向が見られました。

施設園芸の所得率に戻ります。次いで、人気作目のきゅうり、いちごが高い所得率となっています。これらの野菜は、安定して利益が出せるようです。

逆にしいたけは12%と低い所得率となっています。しいたけは面積が他の作目に比べて圧倒的に小さかったため、大規模な農場に比べると経費(施設の減価償却費等)の割合が大きくなってしまうのではないか、と推察されます。また、野菜栽培は比較的補助金が少ない分野ですが、しいたけの補助金はいくつか散見されますので、補助金をもらっている農家もいるのかもしれません。

まとめ

露地栽培では北海道の存在感が群を抜いていましたが、施設園芸ではそのようなことはなく、比較的人気の野菜が利益率も良い、という穏当な結果となりました。

施設増設にはコストがかかるので、施設園芸は露地栽培ほど作付面積を増やすのが容易ではありません。きのこであるしいたけを除くと、平均販売金額÷作付平均面積が大きいほど人気の作目であるという傾向が見られたのも、そのためかもしれません。

施設園芸ですと、露地栽培ほどは気候に左右されないでしょうから、ある程度は利益率の良い野菜を選んで栽培していくことが可能です。今回の分析を、参考にしていただければ幸いです。

「儲かる野菜はどれ?販売金額や所得を徹底調査(露地栽培編)」も、ぜひご覧ください。

南石教授のコメント

作付面積あたりの販売額(円/a)は、面積あたり収量(kg/a)×販売単価(円/kg)で計算できます。作付面積あたりの販売額が大きな作物は、面積あたり収量、販売単価どちらかが大きいか、あるいは両方とも大きい作目といえます。

経営全体の販売額(円)は、作付面積あたりの収量(kg/a)×販売単価(円/kg)×作付面積(a)で計算できます。収量、単価、面積が3つとも大きな作目、2つが大きな作目は、経営の販売額が大きくなります。

高収量には栽培技術、高単価には販売方法の工夫が必要になります。作付面積を増やすには労働力が必要で、労働力が賄える範囲でしか規模拡大はできません。今回の分析に加えて、収量、単価、労働時間、更に経費も加味した分析ができると、さらに役立つ結果が得られそうです。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。