農業利益創造研究所

コラム

儲かってる果樹農家って、どこの都道府県? 経営的特徴は?

個人情報を除いた2020年度の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家16,590人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

調理せずに食べることができる甘い果物は老若男女問わずに大人気です。ギフトとしても喜ばれ、高価なものもたくさんあります。ふるさと納税や専門店では、シャインマスカットに代表されるぶどう、桃、梨、みかん、りんごが人気のようです。

あれ?メロンやいちごは?と思われる方もいるかもしれませんね。実は、メロンやイチゴは農林水産省によると「野菜」に分類されます。今回は木に成る(気になる!?)果樹に限定した分析です。

前置きが長くなりましたが、農作物の中でも多くの果樹は収穫できるまでに何年もかかります。おいしい新品種ができるまで品種改良にも長い年月を要し、経営的には畜産に似ているのかもしれません。

しかし近年、おいしい果樹がたくさん世の中に出てきていますし、高付加価値販売で、かなり果樹農家は儲かっているのではないでしょうか。

ちなみに、2020年度簿記データの果樹農家の世帯農業所得率は34.5%、露地野菜農家の所得率は26.8%です。所得率が全てではありませんが、この数字を見る限り、果樹の利益は高いのではないか、と予想できます。

論より証拠ということで、今回は果樹農家1,175件のデータを分析し、特徴を調べてみたいと思います。

果樹で有名な県の特徴

今回は果樹で有名な産地である、和歌山県(主な果樹はみかん・うめ)、山梨県(ぶどう・もも)、山形県(さくらんぼ)、青森県(りんご)、の4つの県で、売上や費用、資産や借入金の農家平均額を集計してみました。

果樹で有名な県の 一農家平均額
和歌山県山梨県山形県青森県
世帯農業所得7,5924,4685,9074,267
世帯農業所得率46.3%41.3%35.2%32.2%
収入金額合計16,41310,82716,77013,232
果樹の収入13,89610,19413,16511,158
稲作の収入9791,573553
生産原価5,4133,8576,7635,193
諸材料費3555311,054476
動力光熱費379418776403
減価償却費1,1107301,282879
雇人費9176681,1471,278
一般管理費・その他3,4082,5024,1003,774
現金・預貯金等14,4497,9639,0916,797
固定資産計11,8057,92418,31511,575
建物・構築物2,6112,8246,9444,581
農機具等2,3991,9554,6372,172
長期借入金1,5411,4994,3721,909

※1 経営体数は和歌山県が19件、山梨県が83件、山形県が45件、青森県が135件
※2 金額の単位は千円

和歌山県と山梨県は世帯農業所得が高いですが、他の2県は全国の果樹農家の平均的な世帯農業所得とほぼ同じです。特に和歌山県の農家は、売上も所得も所得率も高く、儲かっていると言えるでしょう。

特徴的なのは、山形県です。山形県で有名な特産物は、さくらんぼ、メロン、ぶどう、すいか、さらに米の産地としても有名で、幅広い農産物が収穫できる産地です。

表を見ても、稲作の売上額が他の県より多く、諸材料費、動力光熱費、減価償却費、雇人費が多く、固定資産額も高く、長期借入金も高いです。

果樹以外の稲作や野菜などの複合経営を行っているため、果樹以外の農業機械を導入したり人を雇ったりしていて、それが費用としてかかっているのではないかと推測できます。

山形県は、所得は590万円と立派ですが所得率が低いので、果樹以外の複合経営により費用効率が低下しているのかもしれません。

所得率の高い農家と低い農家の特徴

次に、全国の果樹農家の中で世帯農業所得が高い農家(所得率45~50%)と、低い農家(15~20%)の経営構造を比較してみました。

世帯農業所得率の比較による 一農家平均額
所得率15~20%所得率45~50%
世帯農業所得2,1777,389
専従者給与1,1592,601
収入金額合計12,51215,593
 稲作の収入505235
生産原価6,8154,669
 諸材料費912620
 減価償却費1,238904
 雇人費1,848672
一般管理費・その他3,5203,535
現金・預貯金等6,35910,174
固定資産計26,29311,006
 建物・構築物11,2854,698
 農機具等11,2854,698
長期借入金9,1281,256

※1 経営体数は所得率15~20%が59件、所得率45~50%が102件
※2 金額の単位は千円

収入金額は1,550万円と1,250万円で300万円ほどの違いはありますが、ここから得られる世帯農業所得は738万円と217万円と相当の差があり、費用の使い方がかなり違うのではないか、と考えらえます。

費用構成については、所得率が低い農家は、稲作の収入がある、諸材料や減価償却費、雇人費が高い、そして固定資産額が高く、借入金が多い、という特徴です。前述した山形県の特徴に似ていますね。

これらの分析データを踏まえると、所得率を上げるには、果樹をメインで行って複合経営をしない方が良いということなのかもしれません。

年代別での特徴

次に、果樹農家の収入金額と世帯農業所得額を年代別に集計すると、おもしろい結果になりました。

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30代の若い人の収入・所得は少なく、40代で最大となり、それ以上はだんだん減っていく傾向になっています。若い人はまだ技術が未熟なのかもしれないということは想像できますが、60代以上がだんだん低くなっています。

40代の所得が高いのは、体力が充実していてバリバリ働ける働き盛りということが当然あるかもしれませんし、さらに、規模拡大したり、色んな事に挑戦する気力が充実している年代でもある、という結果なのかもしれません。

まとめ

果樹は生で食べて良し、贈り物に良し、加工して良し、観光農業もできて、品種をブランド化することもできる、可能性豊かな農作物です。

ただし、果樹は野菜などに比べると、栽培に年月がかかります。そのため、儲かっている時にこそ先行投資で新しい品種の果樹を栽培しておくことが大事です。経営が苦しくなってから、代わりの品種などを模索しても手遅れになってしまう可能性があります。

生産方法や販売方法の工夫、多様なビジネス形態、先見性の必要性。果樹栽培は、経営者マインドによって大きく成長できる分野ということなのかもしれません。

南石教授のコメント

経営の発展は、創業期、成長期、成熟期、衰退期、第2創業期、第2成長期などに、一般に区分されます。今回の分析を見ると、代々続いている農家も、似たような経営発展の段階がありそうです。

経営が時を超えて継続的に発展するには、衰退期に入る前に後継者にバトンタッチして、第2創業期や第2成長期に早く移行することが期待されます。特に、果樹経営の場合には、数年~数十年単位で生産や経営を考えていく必要があるので、後継者問題が重要です。主要な果樹産地ごとに、年代別の特徴を分析すると、産地の特徴があぶりだされるかもしれません。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。