農業利益創造研究所

収入・所得

アンケート結果「2021年 1年間を振り返って、経営実績(売上利益)はどうでしたか?」

農業利益創造研究所では、農業に携わる方からご意見をお聞きするアンケートを定期的に実施しています。2021年12月の1か月間の質問は、「2021年 1年間を振り返って、経営実績(売上利益)はどうでしたか?」でした。ご回答いただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。

あっという間に1年が終わり、昨年の漢字は「金」、流行語大賞は「リアル二刀流/ショータイム」であり、スポーツなど様々な活躍した人を称えようという前向きなムードで終わった(終わりたい)空気がありますが、まだまだ新型コロナウイルスの不安が続いています。

1年間を振り返って、経営実績はどうでしたか?

今回のアンケートの結果は以下のようになりました。

2021年 1年間を振り返って、経営実績(売上利益)はどうでしたか?
「大吉」想定よりかなり良かった 10.5
「小吉」少し良かった 21.0
「吉」 例年どおり 15.8
「末吉」少し悪かった 26.3
「凶」 良くなかった 26.3

かなり良かったという方もいますが、半分以上の方は例年より良くなかったようです。具体的にどのように良くないのかまではこの回答からわかりませんが、農業の場合は大方、(1)気象・災害の影響で収量減、(2)農産物の単価ダウン、(3)人の問題、なのではないでしょうか。

経営者が自ら考えてコントロールできるものならなんとかなるのですが、自然や市況は自分でコントロールできないことが農業経営の特徴です。

2021年の農業界の主なニュース

2021年の農業界では、主にこのようなことが起こりました。

・7月の大雨、9月の台風による農作物の被害
・2021年産米の概算金・買い取り価格が全国で大幅に低下
・新型コロナウイルス禍の影響で生乳廃棄の恐れ
・農林水産省で「みどりの食料システム戦略」「スマート農業」を推進
・農業DX構想~「農業×デジタル」で食と農の未来を切り拓く

他にも色々なことがありましたが、残念ながら明るい話題は少なかったように思います。

2020年の簿記データに見る農業の動向は

農業利益創造研究所では、2020年の簿記データを分析して、すでに以下のようなコラムを掲載しています。2021年の簿記データではこれらがどう変化していくのか、いずれ分析してコラムとして発表したいと考えています。

(1)「コロナ禍でもたくましく販路拡大? 2020年度経費の意外な傾向
概要:2019年と2020年の1農家当りの荷造運賃手数料が37.4%もアップしています。これは、通販を行う農家が増えたから、という可能性があります。

科目 2019年 2020年 変化率
荷造運賃手数料 1,458,133円 2,003,227円 37.4%

(2)「2020年に儲かった作物分野は? 様々な数字を徹底比較
概要:世帯農業所得が高いのは酪農、所得率が高いのは果樹でした。

(単位:千円) 普通作 稲作一位 果樹 野菜 施設園芸 酪農 肉用牛 平均
経営体数 2,739 1,685 1,175 5,283 790 391 474 14,895
世帯農業所得 4,458 6,473 4,315 5,367 4,145 9,306 4,388 4,937
収入金額合計 17,090 23,192 12,491 20,063 15,702 62,522 33,355 20,128
販売金額 11,919 16,669 11,292 16,348 14,225 55,696 27,491 16,245
農業経営費 12,632 16,719 8,177 14,696 11,557 53,216 28,967 15,191
世帯農業所得率 26.1% 27.9% 34.5% 26.8% 26.4% 14.9% 13.2% 24.5%

まとめ

2020年までの5年間で、災害査定の対象となった農地や農業用施設の被害額は全国で約7,863億円に上り、少なくとも86%が豪雨・台風災害によるものであることが、農水省への取材で分かっています。2016年は熊本地震の被害が大きかったものの、17年は九州北部豪雨、18年は西日本豪雨、19年は台風19号、20年も7月豪雨と、大きな豪雨・台風被害がありました。

2021年は、地球温暖化、カーボンニュートラル、電気自動車化、SDGs、などのキーワードも目立ちました。目の前のことだけにとらわれるのではなく、将来的なことや持続可能な農業を考えながら今を考えることを一人一人が意識して行動していきたいものです。

なお、1月のアンケートは「2022年 新しい年への挑戦、新しく始めたいことはありますか?」です。新しい年のスタートです。皆さん、新たな挑戦を始めていきましょう。たくさんの投票をお待ちしています。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。