
農業利益創造研究所では、農業に携わる方からご意見をお聞きするアンケートを定期的に実施しています。2021年6月(2021/7/1~2021/7/31)の質問は、「コストを下げるために何を一番優先して実践しようと思いますか?」でした。ご回答いただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。
最終的な集計結果は、以下のようになりました。
ち密な管理で、資材の使用量を減らす | 13.3 |
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効率性を高め、労働費を減らす | 26.7 |
規模拡大して効率性を高める | 33.3 |
スマート農業で効率性を高める | 0.0 |
農業機械を長持ちさせる | 26.7 |
回答数が少なめなのでこの結果で農業経営者の意識や考え方を決めつけることはできませんが、一番投票が多かったのが「規模拡大して効率性を高める」、二番目が「効率性を高め労働費を減らす」と「農業機械を長持ちさせる」でした。
規模拡大が簡単に行えない作目もありますが、一般的には規模拡大することにより10a当りの農業機械の減価償却費が下がり、作業効率も良くなりますし、農業資材も大量に購入することによる価格値引きもあります。さらに収量が増えて農産物の売上もアップするわけですから、利益を上げるには一番の近道と言えるでしょう。
しかし、「米のコスト率が低い作付面積には2つの谷があり規模拡大には注意!」というコラムに書いたように、稲作の場合は必ずしも規模拡大とコストとはきれいな反比例にならず、逆に規模拡大に伴う高価な大型機械購入によりコストアップになってしまうことも、注意しなければなりません。規模拡大によって必要となるのは農機だけではなく、たとえば人手が足りなくなって人を雇うことで人件費がかかってしまうリスクもあります。
労働費と減価償却費
投票の二番目は、労働費と減価償却費に関わることでした。農林水産省の「農産物生産費統計」によると、米の10a当り生産費の構成で一番は労働費、二番は農機具費です。この2つの経費をいかに抑えるかが、全体のコストを下げるには有効のようです。作目によって費用構成は異なるかもしれませんが、費用構成の中でわずかな費用を5%下げるのと、30%の費用を5%下げるのでは金額が大きく違ってきます。
スマート農業は0人
なんと、スマート農業によって効率性を高めようという人はゼロ、という意外な結果となりました。農林水産省が力を入れて推進していても、現場ではさほど興味が無いのでしょうか、それともスマート農業導入は逆にコスト増加になってしまうと思われているのでしょうか。
確かに、スマート農業により労働費は減らせることができるかもしれませんが、自動運転の高価な農業機械やドローンなどの新規購入で農機具費が増加する可能性もあります。こちらを立てればこちらが立たずの、まさにトレードオフの関係なのかもしれません。どのようなバランスでスマート農業を導入するかも、今後は経営者の腕の見せ所になっていくでしょう。
なお、8月のアンケートは「将来への不安は何ですか?」です。農業経営を営む上で必ず不安や心配事はあるものですから、たくさんの投票をお待ちしています。