農業利益創造研究所

インタビュー

ほうれん草の値は自分で決める!契約販売で利益増「藤田農園」

レジェンド農家 インタビュー「藤田農園(藤田 伸一さん)」

「農業は儲からない」なんて考えはもう古い!
農業だって、やり方次第で儲かるということを実践している農家が、栃木県にいました。

栃木県日光市でほうれん草栽培を営んでいる「藤田 伸一」(ふじたしんいち)さんの経営をご紹介します。

儲かる秘密1:徹底したほ場整備による作業効率化

栃木県日光市高原は、戦後の食糧増産計画により全国に作られた開拓地の一つで、標高1,200mの台地に広がっています。この地域では、高冷地特有の冷涼な気候条件を生かし、暑さに弱いほうれん草の夏季栽培が盛んです。

そんな地域にある藤田農園もほうれん草専作農家の一つで、3.3haがハウスによる雨よけ栽培。播種は4月中旬から行い、約3.5回転させて5月下旬から10月末まで収穫を行っています。

藤田農園はかつて露地栽培が中心でしたが、雨で土壌が流出したり、安定した生産が難しいことから、天候に左右されない雨よけ栽培への転換に乗り出しました。傾斜がきつい土地だったために大がかりなほ場整備が必要で、非常に資金もかかりました。

「雨よけハウスには補助金が使えましたが、ほ場整備は自己資金でやるしかありませんでした。大量に石が出てきてしまって、こんな土でハウスが建てられるんだろうか?と不安になることもありました」と藤田さんは当時を回想します。

地道な努力が実り、雨よけ栽培に移行した今は高品質を保てる上、雨天でも作業が進められるので効率が格段に上がったそうです。さらに離農した方の農地を購入して大規模化を図り、現在の売上は1億2千万円と、非常に大規模な経営を行っています。

これだけの農園を運営するには、人手が欠かせません。スタッフは常勤・非常勤合わせて45名で、収穫・包装・梱包と各種作業を担当しています。20~80代と幅広い年代で、最近は「定年後に働きたい」という希望の男性も増えてきたそうです。

「人を雇うのが一番大変ですね。皆に感情がありますから」と藤田さんは語ります。スタッフの送迎のために農園側で車を出すなど、働きやすい環境を整えることにも気を配っているそうです。

儲かる秘密2:定量・定額の契約販売を広げて利益を増大

ほ場整備の他に、藤田さんが積極的に取り組んだのは「契約販売の拡大」です。

「他の業種では、自分で作った商品に自分で値段をつけるのは当たり前。農家だけそれをできないのはおかしい、という不満が前からありました。ですから、自分の決めた値で売るために契約販売を広げたかったんです」

最初の契約販売は、中嶋農法で知られるエーザイ生科研株式会社(現・株式会社生科研)の中嶋常允氏の講演を聞きに行った際、中嶋氏に相談をもちかけたことがきっかけだったそうです。このご縁で、藤田農園のほうれん草はエーザイグループに取り扱われるようになりました。

「とにかく良い出会いに恵まれましたね。バイヤーさんが新しいバイヤーさんを紹介してくれて、その繰り返しで契約先も増えていったんです」とのこと。今では全体の6~7割が契約販売で、豊洲市場を始めとする5つの市場とも契約しているそうです。

藤田さんはトラブルを避けるため、全ての取引相手に同じ値段で出荷し、納品量も最初の契約時から変えることはありません。「変えられるようにすると、お互いわがままになってしまいますから、定額・定量が一番いいんですよ」と藤田さんは言います。

販売価格は「企業秘密」とのことで教えていただけませんでしたが、高単価で扱ってもらえるように努力しています、とのこと。常に決まった出荷量を用意しなければいけないなどのプレッシャーもありますが、信頼に応え続けることで良い付き合いが生まれています。

ピンチがチャンス!? リーマンショックで利益が増えた理由は?

2008年に起こったリーマンショックの際には、バイヤーから「この値段での取引は難しい」と言われてしまい、値引きをしない信条の藤田さんも頭を抱えたそうです。

そこで藤田さんは知恵を絞り、「核家族化で一戸当たりの野菜の消費量は減っているはず。量を減らせば、一袋の値段が下げられる」と考えて、一袋の容量を200gから150gへ下げました。

ボリューム感がない、とバイヤーは難色を示しましたが、蓋を開けてみると150g入りの袋は飛ぶように売れました。藤田さんの読み通り、小分けのほうれん草を求める消費者が、都市部には多かったのです。

「うちでも150gを扱いたい、という新しい引き合いも来て、1袋当たりの単価を下げたのに、利益は上がり、以前より儲かったんですよ(笑)。工夫次第で利益は出るものですね」と藤田さんは言います。ピンチもチャンスに変えてしまう、素晴らしい経営手腕と言えるでしょう。

このように成果を出している藤田農園ですが、私の息子は跡を継がないので、現在この農園の譲渡先を探しているんですよ、と驚きのお話を最後にお聞きしました。高齢になったら高地で暮らすのも大変だから、自分は引退して引っ越すつもりです、との潔い決意を語っておられました。

「本当にこの仕事は面白いですよ、工夫次第で利益が生まれるというやりがいがありますから。ほうれん草を愛する方にこの農園を継いでいただき、この農園からもっと大きな利益を生み出していただきたいですね」と語る藤田さんは、大きな心で未来を見据える立派な農業経営者でした。

藤田農園を継いでくれる方を、本気で募集しています!

<条件>
・ほうれん草栽培に対する情熱と知識がある方
応募される方は、「氏名」「住所」「電話番号」「E-mai」「農業経験等の自己PR」をご入力の上、お問い合わせください。折り返しご連絡させていただきます。

※この件に関するご質問・ご応募の場合は、「お問い合せ内容」フォームの一行目に、「藤田農園の譲渡先に関する問い合せ」とお入れください。
お問い合せ

※譲渡先が決定した場合は締め切りとさせていただきます。

関連リンク

株式会社生科研

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。