農業利益創造研究所

インタビュー

「トマップファーム」北海道で100年の歴史ある農園を輝かせる

農業女子インタビュー「トマップファーム(高橋 ひかりさん)」

女性が生き生きと働く業界は伸びる!
農林水産省は、女性農業者と民間企業・団体を結びつける農業女子プロジェクトを発足させました。農業利益創造研究所が提携しているソリマチも、「農業女子応援キャンペーン」を行っています。

そこで、農業利益創造研究所でも、女性農業者へのインタビューを通じて農業を営む女性たちを応援していきたいと考えています。

今回は、北海道仁木町でさくらんぼ・ぶどうを栽培している「トマップファーム」の高橋 ひかりさんにお話をお伺いしました。

農業未経験から果樹園の跡継ぎに!

北海道仁木町は、対馬暖流の影響を受け四季を通じて温暖多湿な気候で、北海道を代表する果樹産地です。近年はワイナリーやぶどう園が増え、ワイン特区にも指定されました。

その仁木町で、高橋さんは2019年に設立した株式会社北海道開拓使の代表という立場で、トマップファームという自社農園を運営しています。ほ場は約3ha、主な作目はさくらんぼ、ハウスぶどう、醸造用ぶどう、とうもろこしです。

実は、高橋さんは親からの農園を継いだわけではありません。出産を機に幼稚園教諭を退職したのち、農園を手放すことを検討していたご夫妻と個人的に知り合い、後継ぎになることを決断した、という珍しい経緯です。

「不動産会社をやっていた父の元へ、ご夫妻から農園売却の相談がありました。自分たちはもう高齢で継ぐ人がいないから手放すしかない。でも、100年の歴史がある農園がなくなってしまうのは寂しい。それなら私が跡を継ぐ!と決断しました」

高橋さんは全くの農業未経験。勇気が要る決断だったのでは?とお聞きすると、「ご夫妻が楽しそうに農園のお話をされるので、心配はさほどしていませんでした。私も新しいチャレンジが楽しみになるタイプですから!」とポジティブなコメント。

かくして、期待を胸にトマップファームへやってきた高橋さんですが、農作業においては想像より大変な一面もあったそうです。

「私はそれまで、やる気があれば何でもできる!と思っていました。でも、重い荷物が持ち上がらないとか、やる気だけではどうにもならないことが世の中にはあるんだ、と身を持って実感しました。師匠(前経営者)や兄弟やスタッフの助けがあったから大丈夫でしたが、一人だったら続けられなかったかもしれません」

農園のご夫妻は今でも現役で、様々なことを高橋さんに教えている最中。とても良い関係で、高橋さんの娘と仲良く遊んだりと、本物の家族のような絆で結ばれているそうです。

コロナ禍の中で直販売上がアップ!

トマップファームは直販にも力を入れていて、直販:卸(JA・卸市場)の割合は6:4。コロナ禍の影響で、昨年は特に売上が伸びたそうです。

「さくらんぼ狩りなどのイベントは人が減ってしまいましたけど、通販の売れ行きはとても良かったですね。傷のあるさくらんぼを「ジャム用」として売り出したら、飛ぶように売れて驚きました。STAY HOMEで料理を楽しむ人が増えたからかもしれません」

直販は手間がかかりませんか?と聞いてみると、「手間はものすごくかかります。ただ、お客様の声を聴きたいので、スタッフみんなのモチベーションのためにも続けたいですね」とのお返事。

ちなみに、受注管理や伝票作成をある程度代行してくれるふるさと納税は、とてもありがたかったです、ともおっしゃっていました。ふるさと納税は、やはり利益創造の助けになるのかもしれません!

加工品やイベントなど、様々なチャレンジ

農閑期である冬に売れる商品が欲しい、さらにロスをなくしたいという切実な思いから、トマップファームは現在、加工品の開発に取り組んでいます。

「果物は傷がつくと、B級品として非常に安くなってしまいます。せっかく大切に育ててきたのに、悲しくて。味は美味しいのに納得がいかない!と思いました」

ただ、果実は長持ちしないため、忙しい収穫シーズンに加工する必要があるのが課題です。冷凍保存など試行錯誤していますが、来年以降は業者に開発を委託することも検討する、とのことでした。

また、トマップファームはさくらんぼ狩りなどのイベントにも力を入れています。新型コロナの影響もありますが、お客様と十分なコミュニケーションを取るために、完全予約制で一度に入れるお客様は一組だけ(!)だそうです。

「特に子供たちの色んな質問に答えるのは楽しいですね。この農園が学びの場になってほしい、と思います」と、高橋さんは元幼稚園教諭の顔を覗かせます。

農業において女性は有利?不利?

そのようにポジティブな高橋さんに、どうしたら農業に従事する女性が増えると思いますか?という切り込んだ質問をしてみると、「仲間を探す場所が必要」という回答が返ってきました。

「女性には力仕事への限界がありますし、子供がいれば子供優先で動かざるをえません。だから、就農を考えている仲間と協力することが必要です。たとえば女性同士一緒に農園を経営するとか、そういう仲間と出会える場所が増えてほしいですね」

他にも、子連れでも働ける農園が少ない、そういう農園があったとしても、情報発信が不十分で見つけられない状況なのかもしれない、と高橋さんはおっしゃっていました。

逆に女性が有利な点としては、収穫・梱包などの細かい作業に向いていること、農作物を購入することが多い女性目線で商品が作れること、などだそうです。

農業で活躍する女性をサポートする場はまだ十分とは言えません。しかし、高橋さんのような農業女子の活躍を受けて、今後少しずつ増えていくでしょう。

ワインの町で自家製ワインを造る夢

最後に、将来の展望について尋ねると、醸造用ぶどうでワインを作るのが今の大きな目標です、と高橋さんはおっしゃっていました。

実は高橋さんが就農した時、もともとは醸造用ブドウを栽培していた約2haの土地が使われていませんでした。それならばと、高橋さんが1年前に再び醸造用ぶどうを定植させました。2年後には本格的な収穫ができる見込みで、それに向けて準備をしているそうです。

「仁木町はワイン特区にも指定されたり、ワインツーリズムプロジェクトを始めたりと、ワイン造りに力を入れています。農業は地域で盛り上げていくものだから、私も一緒にワインを造りたいんです」

お酒造りは大変でまだまだ勉強中、とのことですが、高橋さんの情熱と仲間の支えがあれば、きっと豊かで美味しいワインができるに違いありません。

トマップファームは、高齢で離農を考える方からの第三者継承が非常に上手くいったケースです。第三者継承は、土地や設備や機械、前任者のノウハウまで授けてもらえることもあり、新規就農よりも条件的に有利です。

高橋さんは、新規就農者と離農を考える方のマッチングサイトがあると良いですね、とも最後におっしゃっていました。こういった幸せなマッチングが増えれば、日本の農業の未来もさらに明るくなることでしょう。

関連リンク

北海道仁木町 自然体験農園 | NIKI TOMAPU FARM
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 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。