農業利益創造研究所

対談

ビッグデータで農業の未来を創る~農業利益創造研究所の目指すところ~

「3者 巻頭対談」

南石 晃明
九州大学大学院農学研究院 教授南石 晃明
平石 武
農業利益創造研究所 理事長平石 武
反町 秀樹
ソリマチ株式会社 代表取締役社長反町 秀樹
平石

農業利益創造研究所理事長の平石です。日本農業は高齢化による農業人口の減少、そして後継者不足が加速化しており、このままでは日本農業が衰退し、食料自給率も上がらず将来的に不安な状況となりかねません。

しかし、本当に農業は儲からないのでしょうか。中には高利益を出している農業者も存在しています。

そのような農業経営のデータを分析し、農業者に「利益値創造の気づき」を与え、一歩前に出るための「背中を押す情報」を提供できればと、2020年に日本最大の農業会計ビッグデータを分析・研究し情報発信する一般社団法人 農業利益創造研究所を設立しました。

本日は九州大学大学院農学研究院の南石教授、ソリマチ株式会社の反町社長にお越しいただき、農業利益創造研究所が目指すべき目標について、話し合っていきたいと考えています。

設立の経緯

反町

ソリマチは「会計でみんなを幸せにする」を哲学=ビジョンとし、35年前に新潟県の長岡市でスタートしました。わたしたちの農業会計ソフト『農業簿記11』のユーザー数は約4万件、JA全中様からも推奨をいただき、全国の562JA様(2021年4月時点)のうち約8割強のJA様で記帳代行のシステムとしても運用され、約6万件の組合員さんの記帳支援を行っています。35年間、農家さんを幸せにしたいと考え、効率化や合理化を一所懸命にご提案してきました。

しかし昨今、農家さんを幸せにするために、効率化合理化だけではなく利益創造に貢献したい、と考えるようになりました。お客様のデータをベースに利益創造に貢献できるのではないかという希望を持ちまして、農業利益創造研究所の平石理事長のところにご相談申し上げました次第です。

平石

『農業簿記』のビッグデータを活用して農家の利益創造に貢献したい、本当に素晴らしいお考えだと思います。人口も減っていますし、今はコロナなどの色んな外部環境の変化もある。その変化と共に農業も変わっていかなければいけない。そういった中でデータを活用してお役に立ちたい、という考えはこの時代に即していると思います。

南石教授からも、今後の農業の課題などについて、簡単にお話していただけますか。

南石

九州大学の南石です。日本の農業の課題で一番重要なのは後継者問題、つまり若い後継者の方に農業に興味を持っていただき、農業というビジネス、あるいは農的生活で成功していただくことだと思います。

「農業は儲からない」とか「きつい仕事だ」というイメージがありますが、われわれの分析では、必ずしもそういう従来のイメージは当てはまらないと明らかになってきています。

これからの農業はこういう戦略で取り組んでいけば所得も利益も得られ、他のサラリーマンや他の個人事業者の方以上に生活の質も達成できる、そういった道筋を示していただけると多くの方の役に立つと思います。

反町

たくさんの利益を出している農家には成功の種があるはずです。ソリマチは全国に拠点がありますから、定性情報を農家さんにヒアリングし、それを財務データと合わせて農業利益創造研究所に分析していただく。

その分析によってどうすれば利益が出せるか、どういう目標を設定して経営をどう変えたら良いのかという公式が発見できれば、日本の農業の前進になるはずです。国策として農業の繁栄は重要な課題ですから、その社会的意義の一端を担えるのではないか、そんな希望を持っています。

平石

簿記データだけでは、どう利益を創造したらいいか見出すのが難しい部分もありますので、定性データも重要ですね。南石教授は、農家さんのリサーチに基づいた分析研究を昔から行っているとお聞きしたのですけれども、どのような形の研究でしょうか。

南石

農業法人を対象にしたアンケート調査の実施とそのデータの解析です。わたしたちは、全国に約2、3万社ある営農組合、農業法人の約1割、約3千社にアンケート調査をし、実際に回答していただいた約五百社のデータ解析を行いました。営業利益率などの代表的な財務的分析や経営方針、貿易自由化に対してどういう風に受け止めているかなどもお聞きしています。

それで浮かび上がった面白い結果の一つは、自分の経営に自信を持ち、経営戦略が優れていると考えている方は自由貿易もチャンスと捉えることが多い、ということです。そのように細かくデータを見ていくと、経営者の考え方と経営の成果や利益の関係性が明らかになってくる可能性があるのです。

こういったわたしたちの成果も活用していただいて、今回の対象である個人経営で成功されている農家はどういう経営をしているのかを解明していただけると、日本の農業にとって大変役に立つと思います。

AIが生み出す可能性

反町

今、南石先生から「真実を解明する」というお話をいただいて、非常に感銘を受けました。わたしどもが持っているビッグデータをAIを使って分析し、これまでは明らかにできなかったであろう真実を解明していくのは、非常にわくわくする試みです。

真実を探求して、利益を創造して、関わっている人をみんな幸せにする。農業が良くなると日本が良くなることを考えると、このプロジェクトは非常に有意義ですね。

南石

これまで使われていた統計分析では、分析に際して相当な試行錯誤が必要です。ですが、AIはビッグデータに対して様々な手法を機械的に適用してグルーピングしたりパターンを見つけたりできるので、極めて省力的に分析ができるという特徴があります。

そうやって出てきた結果にわれわれのような研究の専門家や実務の専門家の知見を加えていくことで、意味のある解釈ができるのではと期待しています。AIの使用は非常に有意義で、統計学だけでは手間がかかり過ぎる分析が、極めて効率的かつ効果的にできるのではないか、と期待しています。

平石

これからもソリマチさんにはデータが集まり続けますから、さらに何万件のデータが増えていきます。そのビッグデータから、人間が想像もつかないようなことをAIが自動的に見つけ出してくれるのではないか、と期待しています。それが、農業利益創造研究所で取り組みたいことの一つです。

たとえば、単なる数字の分析だけではなく、リサーチデータの文章をAIで分析することによって、「きつい」とか「つらい」と、農家さんの感情を分析できる可能性もあります。膨大な数年分のデータを踏まえて分析すると、過年度傾向など面白いものが見えてくるのではないかと思います。

未来に向けた展望

平石

最後に、この農業利益創造研究所の今後目指す方向や役割について、さらなるご意見はございますか。

反町

ソリマチ株式会社は農家さんのビッグデータを大量に収集し、さらにリサーチャーとして定性情報を集めていきたいと考えています。簿記データに合わせて、どのような定性情報が必要なのか、その情報によって何がわかるか、というアドバイスをいただいて、われわれが足回りにてデータを収集・構築する。農業利益創造研究所にはそのデータを堅固で価値のある情報に変えていただく。その結果をユーザーである農家さんの利益創造に役立てることで、「会計で幸せになってもらう」というわたしたちのビジョンを実現したいです。

あと、農家さんに貢献したいと考える方はたくさんいらっしゃるので、そういう方たちに農業利益創造研究所の外部ブレーンのような形で関わっていただければと、そんな希望を持っています。

平石

ありがとうございます。南石教授はいかがでしょう?

南石

「農業」というと農産物を生産している農家が連想されますが、将来的には農業をもっと広く捉えていただいて、農産物を加工している、直接販売している、その食材を使った食事をレストランで提供している、フラワーアレンジメントや花屋さん、さらにはアウトドアのスポーツ、そのような農業を核とした周辺の産業の利益をも創造する活動に取り組んでいただければ、日本の将来にとって非常に有益だと考えます。

また、AIの一つの特徴は画像処理に強いことです。たとえば農作業場がきれいに片付いていると利益が出やすいなど、農場の写真のデータと簿記データの間にある関係性、そういう今までの統計学では解析できなかったような分析結果もAIを活用することで明らかになる可能性があります。

全く関係性がないと人間には思えるようなものが、意外に利益に貢献する要素であるとわかる可能性もあります。そういう幅広い視野で分析を進めていただくと興味を持つ方が増えるのではないでしょうか。

平石

農家さんは、利益を出すにはどうしていいかわからないと感じている場合もありますし、農業者を取り巻く周りの農業関係企業も含めて、農業利益創造研究所で分析研究した新しい結果を情報発信することによって気づきを与えていきたいですね。

南石教授のおっしゃった画像と定量データをぶつけるという案は、今までにない新しい発想だと思います。様々な視点から分析研究して、日本の農業者および日本の農業の未来に幸せを創り、農業利益創造研究所を通してお役に立ちたいですね。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。