
「農業王2024」受賞者インタビュー 福島県福島市の鈴木満さん・陽子さん
ソリマチ株式会社と農業利益創造研究所は、日本農業に無くてはならない個人事業農家を応援するために、優れた経営内容で持続可能な優良経営を実践している農業者を表彰する「農業王 アグリエーション・アワード2024」を実施しました。
今年で三年目となる本アワードでは、約10万件の農業会計データと関わるソリマチ株式会社が、青色申告決算書をもとに経営の収益性・安定性を審査して、最終的に北海道から九州までの9ブロックから、普通作(米+麦・大豆)部門、野菜部門、果樹部門、畜産部門、花き部門の「農業王」を選出いたしました。
農業王には、収益性、安全性、経営力、地域貢献、持続可能性に優れた「SDGs農業賞」15名、収益性、安全性に優れた「優良経営賞」70名の二つの賞があります。
今回は、果樹部門で「SDGs農業賞」を受賞した福島県福島市の鈴木満さん・陽子さん夫妻からお話をお聞きし、経営についてご紹介します。
技術を受け継ぐ決意で就農
鈴木農園は、果樹王国といわれる福島市のなかでも果樹がさかんな飯坂町東湯野にて、桃、ぶどう、りんごを作っています。代表の鈴木満さんは、工学を専攻し、自動車部品メーカーに勤めた自身の経験を活かし、理論的な思考に基づき、農業経営を実践しています。同時に、両親の代からのおいしい果物を大切に作る細やかな技術を受け継いでいます。
14年間の会社勤めの後、妻の陽子さんとともに、満さんが実家の農業を継いだのは2016年。
「いい果物を作る両親の姿をそばで見て育ちました」と満さん。その果物を受け取って食べた顧客からの御礼の手紙の内容が忘れられなかったそうです。
「こんなにおいしいものを食べられたら、いつ死んでも悔いはありません」―。ここまで評価される果物づくりを「(誰も継がないまま)終わらせるのはもったいない」と、勤め先の愛知県からUターン。両親と副代表の陽子さん、常勤パートさんらで果樹づくりに励む日々を送っています。

理論的思考にもとづいた経営
農園では、常態化しつつある気象災害に積極的に対応し、安定的な果樹生産につとめています。例えば、近年増えつつある霜の被害。実がつく前の花やつぼみの頃に霜にあたるとその後の生育に大きなリスクとなるため、細心の注意が必要です。そこで、Wifi温度計とモバイルルータを組み合わせ、ほ場の温度が自宅のスマホからチェックできる装置を開発。寝床からも温度を確認し、霜の発生で気温が下がれば、夜中でもほ場に出向き対策を打つそうです。
時に吹く強風に備え、防風ネットも設置しています。「やみくもにネットを張るのはなく、風がどの方向から吹きやすいか、どのぐらいの強さの風なのかを考え、ネットを設置する方角や強度を考えます」と陽子さん。「前職のおかげでなんでも理論的に考える癖がついています(笑)」。ほかにも起こりうるリスクへの対応に備え、リスクマネジメントに役立つGAP認証も取得しました。

費用対効果を考えた設備投資
データを収集・分析し、経営に活かす一方で、昔ながらの手法も継承しています。例えば、ももの収穫には、父、進さんの手作りによる「採り棒」という道具を使い、ひとつずつ丁寧に収穫していきます。梯子で樹上にのぼり、収穫した桃をかごに入れていく一般的な方法とは異なります。「目的は桃を痛めないようにするため。傷つかないだけでなく、スピードもこのほうが早いのですよ」(満さん)。

高品質な果樹栽培を優先し、そのために必要な設備投資は惜しまず、一方で資材はできるだけ安価なものを調達するようつとめています。ただ、何が何でもコストを切り詰めるわけではないそうです。パートも季節的な雇用から常勤体制に切り替えました。人件費がかさみますが、早く習熟してもらうことで、効率的な仕事につながります。こうした取り組みを通じた高い収益性が評価され、農業王に選定されました。
若い顧客層を獲得
大切に作られた果樹は個人への直販が中心です。就農後は、福島駅で毎週開催されるマルシェに夫婦で参加してきました。ぶどうのかぶり物を身に着けて、です。「若い世代にも知ってもらえれば思いまして(笑)」と満さん。

近年は、農家の高齢化のみならず、顧客の高齢化も進む一方。「名前は覚えてもらいにくいですが、かぶり物ならば覚えてもらえるかなと思って(笑)」―。満さんたちの期待通り、両親の代からの常連客に加え、子育てが終わった世代や、出張で訪れた人や観光客など、顧客の年代も属性も広がりました。
ぶどうとりんごは大半を直販で売り、収穫や賞味時期が短い桃も、約半分を直販で売り切るまでになったそうです。直販にかかせない顧客管理や販売管理は、満さん自作のソフトでおこなっています。
地域活性化のための組織をけん引
満さんは地域活性化にも活動の場を広げています。「子供の頃から好きな東湯野という地域を農業で盛り上げたい」と、仲間の農家10名ほどで「東湯野ふるさと保全組合KA-KA-SHI組」という組織を2019年に立ち上げ、満さんはその代表もつとめています。
果樹栽培がさかんなこの地域は、市街化調整区域であるため、住宅や工場などが建つことはありません。「人を増やすには農業を元気にするしかない」という思いから30代から60代の農家が活動しています。贈答用の段ボールをおそろいで作ったり、果樹産地であることを知ってもらうためにのぼり旗を掲げたり。
さらに、果樹栽培がしたいという非農家出身者を研修生として受け入れ、農地をあっせんし、独立するところまでサポート。すでに2組が独立を果たしました。「少しずつこの地域が活性化しているかなという雰囲気は感じています」-満さんの朗らかな笑顔から、果樹づくりや地域への深い思いが伝わってきました。
農業王の受賞、おめでとうございます。
関連リンク
福島飯坂・鈴木農園
ソリマチ株式売社「「農業王2024」受賞者決定!」
ソリマチ株式会社「農業王SDGs」

コメントを投稿するにはログインしてください。