農業利益創造研究所

収入・所得

2024年版「儲かり野菜」ランキング! 所得率48%超の意外な1位とは?

個人情報を除いた2024年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家15,780人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

2025年は、米価の上昇が特に印象深い1年でした。しかし、お米だけでなく野菜もまた、異常気象などの影響で価格が高騰しました。

生産者にとって販売価格の上昇は喜ばしいことですが、それが「生産量の減少」に起因するものであれば、経営全体として手放しで喜べる状況とは言えません。

2025年分の決算データはまだ集計前ですが、2024年のデータを振り返り、高収入かつ低コストで生産できた、いわゆる「儲かり野菜」は何だったのかを探ります。2024年に掲載した「新規就農者必見!高所得率の儲かり野菜を探る<2023年版>」が大きな反響を頂いたため、今回は2024年のデータで分析を行います。

なお、本分析では野菜農家の販売金額が最も大きい品目を元に、「トマト経営」「タマネギ経営」のように分類・定義している点をご了承ください。

高所得率の野菜ランキング

農業経営の基本は、最小限のコストで最大の売上を上げ、利益を最大化することにあります。しかし、同じように努力して経営しても、選ぶ品目によって利益には差が生まれます。つまり「所得率(利益率)」が高い野菜と、そうでない野菜が存在するのです。

2024年の農業簿記ユーザー5,910件の野菜農家データを基に、世帯農業所得率((控除前農業所得+専従者給与)÷収入金額×100)が高い野菜のランキングを作成しました。

以下の表の通り、少ないコストでより多くの売上をあげることができる野菜トップ5は、わさび、レンコン、スイカ、メロン、イチゴでした。

特にわさびの所得率は48.9%と驚異的で、売上の約半分が利益として残る計算です。わさびは、清流が絶えず流れるほ場(わさび田)を整備する初期コストこそかかりますが、造成後の維持管理は比較的容易です。肥料代もさほどかからず、高価な収穫機械も必要ありません。

レンコンは収穫に重労働を伴いますが、栽培可能な土地が限られているため、市場価格が比較的安定しているのが強みです。スイカ、メロン、イチゴはいわゆる「甘い野菜」であり、付加価値をつけやすく、高単価での販売が可能な品目と言えます。

一方で、キャベツ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモのように、露地かつ大規模面積で効率的に栽培する野菜は、率は低くとも「世帯農業所得額」が非常に高い傾向にあります。
「高付加価値で高く売る」か、「徹底的な高効率・低コストで大量に作る」か。このどちらかが、儲かり野菜の鍵と言えるでしょう。

世帯農業所得率 高い順ランキング
収入金額世帯農業所得世帯農業所得率
ワサビ21,41010,46448.9%
レンコン16,9176,01235.5%
スイカ25,3898,79634.6%
メロン23,1047,93934.4%
イチゴ18,8086,14532.7%
サツマイモ22,9267,37932.2%
キュウリ18,2195,56930.6%
ナス15,9214,62429.0%
キャベツ30,4198,51628.0%
ニラ25,2917,05627.9%
ホウレン草24,2316,70827.7%
トマト21,1455,84827.7%
アスパラガス11,9403,29927.6%
ピーマン20,6945,55126.8%
ダイコン29,0227,61126.2%
タマネギ64,27516,77026.1%
ニンジン32,5288,08324.9%
レタス27,4446,80324.8%
ミニトマト19,5004,75824.4%
ネギ17,4424,14823.8%
ジャガイモ50,23811,69223.3%
ブロッコリー24,1675,34922.1%

※金額の単位は千円

野菜の費用構成

野菜栽培において、一般的にどのような費用がかさむのでしょうか。

「販売金額を100とした場合の各費用の構成比」をグラフ化しました。ご覧の通り、最も大きいのが労働費(雇人費+専従者給与)、次いで荷造運賃手数料、3番目が減価償却費です。

荷造運賃手数料は野菜の形状や重量による差が大きいため、今回は分析を見合わせ、「労働費」と「減価償却費(設備投資額)」に焦点を当ててランキングを作成します。特に新規就農を検討している方にとって、「どれくらい人手が必要か」「設備投資は重いか」の2点は、品目選びの重要な判断材料になるはずです。

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労働費ランキング

青色申告決算書に「労働費」という科目はありませんが、本記事では便宜上、「雇人費+専従者給与」を労働費と定義して計算しました。
(※専従者給与額と実労働時間は必ずしも一致しませんが、あくまで目安として算出しています)

収入金額に対する労働費の割合が低い(=少ない労働力で多くの売上を上げられる)順にランキングしました。1位から5位は、タマネギ、ジャガイモ、ナス、アスパラ、キュウリという結果になりました。

タマネギとジャガイモは、北海道を中心に大規模作付けが行われ、収穫の機械化も進んでいるため、労働費率が低く抑えられていると考えられます。一方、ナス、アスパラ、キュウリは手作業での収穫が主ですが、データ上では意外にも労働費率は低めでした。

逆に、先ほどの「所得率トップ5」に入っていた野菜は、労働費率は高くなる傾向にあります。

労働費 低い順ランキング
収入金額専従者給与雇人費専従者給与
+雇人費(A)

収入金額 率
備考
タマネギ64,2756,5086367,14411.1%
ジャガイモ50,2385,2005865,78711.5%
ナス15,9211,7056272,33214.6%
アスパラ11,9401,2155921,80715.1%
キュウリ18,2191,6891,0802,76915.2%
ピーマン20,6941,6211,5523,17315.3%
ブロッコリー24,1672,3921,3413,73315.4%
ニンジン32,5283,6421,4365,07815.6%
メロン23,1042,7458853,63115.7%所得率④位
キャベツ30,4193,3561,4564,81215.8%
トマト21,1452,0611,3263,38616.0%
ネギ17,4421,3181,5652,88416.5%
スイカ25,3893,0941,2494,34217.1%所得率③位
ダイコン29,0223,4371,7045,14117.7%
サツマイモ22,9262,5651,5374,10117.9%
ミニトマト19,5001,8661,8253,69118.9%
レタス27,4442,9262,3395,26619.2%
イチゴ18,8082,5351,1603,69519.6%所得率⑤位
レンコン16,9172,3821,0153,39720.1%所得率②位
ニラ25,2912,7872,7765,56322.0%
ワサビ21,4103,9731,1815,15424.1%所得率①位
ホウレン草24,2312,8893,3306,22025.7%

※金額の単位は千円

固定資産投資ランキング

最後に、固定資産投資額が低い順のランキングを見てみましょう。
建物・構築物+農機具の固定資産額(取得価額ではなく、減価償却費を差し引いた帳簿価格)を収入金額で割った率で算出しています。

トップ5は、わさび、レタス、キャベツ、タマネギ、ネギとなり、葉物野菜が多くランクインしました。これらは収穫が主に手作業であるため、高価な大型機械をあまり必要としない野菜です。

所得率1位のわさびはここでも1位となりましたが、わさび以外の所得率上位野菜(メロンやイチゴなど)は、ハウス設備などの固定資産額が多くなる傾向が見て取れます。

固定資産投資 低い順ランキング
収入金額建物・構築物
固定資産額
農機具
固定資産額
固定資産÷
収入金額 率”
備考
ワサビ21,4102,1272,31420.7%所得率①位
レタス27,4443,4274,44428.7%
キャベツ30,4194,0825,36931.1%
タマネギ64,2757,91513,78633.8%労働①位
ネギ17,4422,7163,58036.1%
ピーマン20,6944,4223,08336.3%
ナス15,9213,5702,39737.5労働③位
ニンジン32,5286,3546,21938.7%
ニラ25,2915,8734,01139.1%
トマト21,1455,2433,24840.2%
キュウリ18,2194,3522,99340.3%労働⑤位
ミニトマト19,5004,9153,22041.7%
サツマイモ22,9264,6695,01542.2%
ブロッコリー24,1674,6915,57242.5%
アスパラ11,9402,4042,80043.6%労働④位
スイカ25,3896,3254,99744.6%所得率③位
ダイコン29,0226,0636,94844.8%
ジャガイモ50,23810,82512,50246.4%労働②位
レンコン16,9175,4862,49947.2%所得率②位
イチゴ18,8085,2944,16950.3%所得率⑤位
メロン23,1048,0204,35353.6%所得率④位
ホウレン草24,2315,9238,65160.1%

※金額の単位は千円

まとめ

今回の分析から、以下の傾向が見えてきました。
 〇所得率が高く経営効率が良い: 高付加価値販売ができる野菜(わさび、甘い野菜など)
 〇労働費率が低い: 大規模・機械化が進んだ野菜(根菜類など)
 〇設備投資が少ない: 葉物野菜
もちろんこれら以外にも、「市場価格の安定性」「収穫までの期間」「保存・加工・出荷調整の容易さ」など、考慮すべき条件は多々あります。

ぜひ今回のデータを参考に、ご自身の地域の気候特性や、経営者として目指したい農業のスタイルを照らし合わせ、最適な野菜を選択してみてください。

南石名誉教授のコメント

今回の分析では、様々な野菜の世帯農業所得率と共に、労働費率や固定資産率などの経費のランキングが明らかになりました。

ワサビは、世帯農業所得率が1位で、収入金額のうち5割弱が世帯農業所得(=経営主の労働・土地・資金対価等を含む農業所得と家族の専従者給与の合計)になることが明らかになりました。その要因の一つは、収入金額に占める固定資産の割合が最も低いことです。

ただ、忘れてはならないのは、ワサビ産地の多くは、真夏でも15~20度以下の冷たい清流が豊富な場所に立地していることです。そうした自然環境や立地条件を最大限活かす栽培であることが、ワサビの世帯農業所得率が高い背景にありそうです。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。