
農業利益創造研究所では、農業に携わる方からご意見をお聞きするアンケートを定期的に実施しています。2021年11月の1か月間の質問は、「新しい政権に、農業政策が期待できると思いますか?」でした。ご回答いただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。
10月31日に衆議院選挙が行われ、与党が293議席を確保し過半数を超え、内閣総理大臣に岸田文雄氏が選出され、新しい政権が誕生しました。
岸田首相の公約は、国産農畜産物の需給と価格の安定・農業者の所得向上、米価の大幅下落に対応するための支援、多面的機能の維持や食料自給率の向上と中山間地農業の支援、など打ち出しています。
政治的なことを議論するつもりはありませんが、今後の農業政策がどのようになるのか、農業者や農業関係団体にとって大きな関心だと思います。
新しい政権に、今後の農業政策を期待できるか?
11月のアンケートの結果は以下のようになりました。
大いに日本農業のための政治になると思う | 0.0 |
---|---|
多少は日本農業のための政治になると思う | 38.4 |
何も変わらない、今まで通りだと思う | 53.9 |
今までより悪くなるのではないかと懸念する | 7.7 |
期待できると考える人より、現状維持+悪くなる人の方が多くなりました。今回は答えやすくシンプルな質問に留めましたが、本来であれば農業者が具体的に何を期待するかもお聞きしたかったところです。
最近のニュースを整理し、当研究所の独断的な意見ですが、農業界では以下のような政策が注目されているのではないでしょうか。
■生産調整等の米政策、米の在庫を考慮した米需給の改善
■経営安定対策(収入保険、マルキン、新型コロナウイルス対策)
■所得向上施策
■後継者、担い手対策
将来的な食糧自給率向上のためにも日本農業を支える後継者や新規就農者を増やすことが重要であり、農業者増加のためにも所得増大や安定対策を行う、ということだと思います。
経営安定対策の実態
今後の農業政策の中の「農業所得向上」については、当研究所にて微力ながら貢献できるのではないかと考えます。それ以外で重要な「経営安定対策」について、現状ではどのような実態になっているか、農業簿記データから分析してみました。
農業には様々な補助金・交付金・保険金がありますが、今回は2020年に何らかの理由で販売金額が減少した分を補填してくれる「収入保険」(加入農家数ではなく受給農家数をカウント)と、コロナ禍により販売金額が減った際の「持続化給付金」や「経営継続補助金」「家賃支援給付金」の受給農家数を集計しました。
計 | 普通作 | 野菜 | 果樹 | 酪農 | 肉用牛 | |
---|---|---|---|---|---|---|
経営体数 | 10,062 | 2,739 | 5,283 | 1,175 | 391 | 474 |
収入保険 | 4% | 2% | 5% | 6% | 0% | 1% |
コロナ関連 | 14% | 5% | 19% | 15% | 2% | 23% |
※経営体数を100とした割合 (%)
収入保険の受給農家は、野菜と果樹が多く、稲作は少なくなっています。稲作にはもともとナラシなどの保険があるからだと思われます。
酪農農家が0件なのはどうしてなのでしょうか。売上が落ちた農家がいなかったのか、売上減少分を補填する他の保険があったのか、などと推測できます。
コロナ関連は、野菜、果樹、肉用牛が多いようです。外食業界の低迷が響いているのかもしれませんが、酪農(牛乳)はコロナ禍とは無縁だったようです。
まとめ
現在新政権は、「新規就農者への農業次世代人材投資資金」や、「みどりの食料システム戦略」など様々な施策を打ち出していますが、お金をばらまくだけでなく確実に成果が出るように期待しています。
なお、12月のアンケートは「2021年 1年間を振り返って、経営実績(売上/利益)はどうでしたか?」です。あっという間に2021年が終わります。皆さんの経営はいかがだったでしょうか。たくさんの投票をお待ちしています。