農業利益創造研究所

収入・所得

会計データから発見! 高所得率メロン農家の第2作目はこれだ!

個人情報を除いた2022年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家11,500人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

一般的に野菜農家は複数の作目を組み合わせた複合経営を行っています。それは、春夏秋冬その時の気候に合わせた作目を最適な組み合わせで作付けすることにより所得を最大にすることができるからです。

それでは、野菜の作付けの組み合わせによってどのように所得は変わるのか、最適な組み合わせは存在するのか、農業簿記ユーザーの中で4,452件の野菜農家のデータを分析してみました。

主幹作目別 世帯農業所得率の大きいトップ10

経営全体の中で販売金額が一番大きい作目を主幹作目と言い、その販売金額の比率を主幹比率と言います。主幹作目別の経営体数が70件以上ある作目の農家を集計し、世帯農業所得率が大きいトップ10の作目を表にしてみました。

所得率が大きいトップ3は、スイカ、メロン、サツマイモです。世帯農業所得額が約800万円ですから、生産効率が良くて高所得の作目と言えます。

所得額が1,000万円を超えているのはタマネギとジャガイモです。どちらも北海道の農家が多く、大規模野菜経営を営んで高所得を得ています。

主幹作目別 世帯農業所得率の大きいトップ10
主幹作目世帯農業所得世帯農業所得率主幹比率
スイカ8,69234.0%72.9%
メロン7,28433.5%65.7%
サツマイモ8,20233.3%79.0%
イチゴ5,76831.2%90.9%
ニラ7,04729.9%91.4%
タマネギ18,17129.7%77.7%
ナス4,03926.6%82.9%
ニンジン8,95226.1%54.7%
ジャガイモ12,64025.9%53.1%
ダイコン8,39825.8%69.0%

※金額の単位は千円。

イチゴとニラの主幹比率は90%を超えており、複合経営を行わず単独で作付けする農家が多いことがわかりました。

ちなみに、ニラは多年生植物で、1度植えると何年も生育し、年に何回も収穫できますので、ニラ単独で経営が成り立つのでしょう。

イチゴは一般的に11月から5月に収穫しますが、夏から秋はイチゴの苗を育てるのに忙しく、結局1年中イチゴの栽培をしています。

下の表のように、イチゴとニラはむしろ単一作目で栽培した方が所得率が高くなっています。

単一作目の方が所得率が高い
所得率
上位20%農家
所得率
低位20%農家
イチゴの主幹比率93.6%87.5%
ニラの主幹比率96.7%91.8%

主幹作目と第2作目の最適な組み合わせ

次に、主幹作目と第2作目をどのように組み合わせると一番所得率が高くなるかを調べてみました。

高所得率のスイカ農家は鳥取県に多く、第2作目はメロン、ストック(花)、ホウレン草、小松菜、でした。ストックとは3月~5月に咲くアブラナ科の花で、鳥取県は全国でも有数のストック産地だそうです。

色々と調べても、この主幹作目には「この第2作目だ!」という組み合わせはなかなか見つかりませんでした。しかし、メロンを調べていた時に「あれっ?!」というデータを見つけました。

主幹作目がメロンで所得率が高い農家の第2作目を調べたら、なんとミニトマトを作付けてる農家がほとんどでした。もしかしたら、メロン+ミニトマトの組み合わせが最適なのではないでしょうか。これは大発見です!

下の表のように、第2作目がミニトマトの農家の所得率は40.8%(1,000万円と高所得額)であり、ミニトマト以外は30.9%です。これは、主幹作目メロンの最適な組み合わせの第2作目はミニトマトである、と言ってよいのではないでしょうか。

主幹作目がメロン、第2作目が
世帯農業所得世帯農業所得率
ミニトマト10,08340.8%
ミニトマト以外6,25030.9%

※金額の単位は千円。

ちなみに、メロンとミニトマトの販売金額の割合は6対4程度の農家が多かったです。

メロン+ミニトマトの農家分布

メロン+ミニトマトの農家は29件ありましたが、各農家の収入金額を横軸に、世帯農業所得率を縦軸にして分布図にしてみると以下のようになりました。ほぼすべての農家が所得率30%越えで、50%の農家も何件かいます。

canvas not supported …

以下は、収入金額と世帯農業所得額の分布図です。きれいに右上がりに並んでいます。メロン+ミニトマトを作付けし、経営規模を大きくすれば所得も増えていくことがわかりました。

canvas not supported …

なぜメロン+ミニトマトの組み合わせが高所得率なのでしょうか?

メロン+ミニトマトの農家29件を都道府県で調べたら、山形県が25件、北海道2件、青森県と茨城県が1件であり、山形県が圧倒的に多いです。

インターネットで「山形県のメロン+ミニトマト栽培」を検索すると、山形県荘内農業技術普及課の報告として、ICT養液土耕システムによるネット系メロンハウス早熟栽培と、ミニトマトハウス抑制栽培を組み合せた栽培体系が、所得向上に有効だというレポートがありました。

一つのハウスで、3月から6月までメロンを栽培し、その後すぐ7月から12月までミニトマトを栽培し、1年じゅうハウスを有効活用して出荷できる体系だということです。

おそらく、このように2つの作目をうまく組み合わせて工夫することで所得向上を実現しているのだと思います。今回の分析結果は、このレポートを裏付けるものであるのかもしれません。

まとめ

今回、地域や作目により単一栽培が良い作目や、複合経営が良い作目があること、そしてその組み合わせにも工夫が必要だということがわかりました。

「鳥取のスイカ+ストック」も、「山形のメロン+ミニトマト」も、県の研究機関などが組み合わせを推奨しているものです。

その地域に合った気候や土壌に、最適な作目を組み合わせて、栽培方法も指導機関が徹底して指導し、そして地域ブランド化する。地域全体で取り組んで所得向上を目指すことが、結果として個々の所得向上につながるのではないかと思います。

関連リンク

やまがたアグリネット「庄内砂丘地域におけるネット系メロンハウス早熟栽培とミニトマト抑制栽培を組み合せた体系
ルーラル電子図書館 <ストック>スイカ後作で・・・

南石名誉教授のコメント

農業経営学では、古くから、複合経営のメリットが解明されてきています。様々な要因が関係しますが、資源の有効利用は主要な要因の一つです。今回の分析では、同じ施設(ビニールハウス)や農地で、異なる時期にメロンとミニトマトという2つの作物を栽培することで、施設や農地の稼働率を高めて、これらの資源を有効に活用できるメリットがあります。

さらに、「一つのハウスで、3月から6月までメロンを栽培し、その後すぐ7月から12月までミニトマトを栽培し、1年じゅうハウスを有効活用して出荷できる」ということは、施設だけでなく、労働という資源も有効に活用できます。

この他、複合経営のメリットとして、リスク分散があります。仮に、メロン収量や販売価格が高くなる年に、ミニトマトの収量や価格が低下する、あるいはその逆の傾向があれば、2つの作物を組み合わせて栽培することで、農業収入の年次変動のリスクを小さくできます。実際にこうした傾向があるのか、新たな分析が待たれます。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。