農業利益創造研究所

収入・所得

2024年の稲作経営の所得は上がったが、今の米価が適正価格なのか?

個人情報を除いた2024年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家15,780人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

農林水産省の資料によると、JAから卸売業者に販売された60Kg当り相対取引価格は、2024年1月時点は15,358円、12月には 24,665円と、1.6倍に跳ね上がりました。

そして、2025年に備蓄米が放出され、お店には高い米と安い米が並んでいるという過去に経験のない状況となっています。

2024年の夏からの米不足により価格が上昇し、すでに掲載しているコラムの通り稲作農家の農業所得は上昇しました。

ソリマチ農業簿記ユーザーの稲作農家4,254件のデータを集計し、どのような農家がどれくらい所得向上となったのか、細かく分析してみたいと思います。

稲作経営の3年間の推移

まずは、稲作経営の3年間の推移を見てみましょう。

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2023年は2022年と比べて販売金額は増えましたが、経営費が上がって世帯農業所得(控除前農業所得+専従者給与)は若干の増加でした。経営費の増加は、国際価格の上昇により肥料費などの資材や燃料代が上がったことによります。

しかし細かく調べてみると、稲作経営において、肥料費は大きく増加しましたが、農薬費と燃料費はあまり増加していないことがわかりました。

2023年から2024年の差を見ると、販売金額が約1.4倍アップし、農業所得が846万円(1.7倍)になりました。

経営の工夫により肥料費が約14%減少していた、ということもありますが、何と言っても米の価格が上がったことによる所得上昇です。

2024年の60Kg当り相対取引価格は、2022年と比べ約2倍弱(約23,000円台)になっています。

所得増加は都道府県で違いがあるか

全国平均の農業所得は約1.7倍に上がりましたが、都道府県別に違いがあったのでしょうか。

下のグラフは、世帯農業所得金額トップ10です。(稲作農家が15件以上いる都道府県を集計)

愛知県の農業所得が1,844万円はすごいですが、昨年の所得も高かったようで増減率は低くなっています。茨城県と埼玉県、栃木県、千葉県の関東地域の農業所得が高いのは少し意外な結果です。

増減率で高い地域は、北海道や青森県、秋田県の東北地域と埼玉県です。米業者に高く売れたのかもしれません。

残念ながら色々調べても、なぜその地域では米が高く売れたのかまではわかりませんでしたので、参考程度にしてください。

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経営規模別の所得増加率

収入金額の経営規模別に農業所得の増減に違いはあるでしょうか。

下のグラフを見ると、小規模から大規模までのすべての階層で農業所得が増加しています。
収入金額5,000万円から1億円までの大規模階層では、農業所得が2023年より670万円ほど上がっているのはすごいです。

しかし、1億円以上の階層では増加していますが、増加率はさほど高くないことがわかります。

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下のグラフは、販売金額と雑収入と経営費、世帯農業所得の増減率をグラフにしたものです。
小規模階層の方が農業所得の増加率が高くなっており、いかに小規模階層は今までコストが高くて所得が非常に少なかったのかがわかります。

大規模階層ほど販売金額の増加率が高くなり、米の値段上昇による恩恵を受けていますが、雑収入(交付金等)は減少しています。

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これらのことから、米の値段が上がることですべての階層で所得が向上した、と結論付けられます。

そして、世帯農業所得が850万円以上である収入金額2,000万円以上の経営は、持続性のある再生産可能な経営 であると言えます。

販売する時期に違いはあるか

2024年は月別の販売金額に違いはあったのでしょうか。

月別販売金額のグラフを見てみると、2023年は販売のピークが9月でしたが、2024年は10月に大きく販売金額が増加していることがわかりました。

おそらく、夏から米価が徐々に上がってきたことにより、米業者が高く買い取ってくれるのを待ってから販売した農家が多くいたのではないかと思われます。

先に記述したように、北海道と東北地域の農業所得の増加率が高かったのは、収穫時期が遅いので米の買取価格が上がっている時に販売したからではないかと推測できます。

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雑収入(交付金等)への依存は

稲作経営では、水田に米以外の麦や大豆、野菜を作付けすることで「水田括用の直接支払い交付金」をもらうことができます。

本来は純粋に米の販売金額から経営費を引いた利益がプラスになることで経営の持続性が保たれます。

しかし、下のグラフのように2023年は販売利益(販売金額ー経営費)はすべての階層で赤字でした。

それが2024年になるとすべての階層で黒字となっています。

7,000万円~1億円の階層では、雑収入が無くても利益が800万円です。2024年時点の米価なら交付金が無くても構わない、と決めつけることはできませんが、本来は交付金無しで利益が出る経営が通常ですから、米価アップは必要であると言えます。

2025年4月現在の米60Kgの相対取引価格は27,102円となっています。これはさすがに高いと思いますが、月別販売額が多かった2024年10月時点は23,800円でしたので、これくらいの価格は必要なのかもしれません。

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まとめ

これらのデータは、農業簿記をつけている農家のデータであるという前提ですが、2024年は米の価格が上がり、収入金額500万円以上の稲作経営すべての規模階層で農業所得が大きく増加しコストの増加をカバーできた、という傾向であったと言えます。

しかし、農林水産省では安い備蓄米を放出し、様々な価格の米が売られており、今後の米の価格がどうなるかまったくわかりません。

政治的なことを言うつもりはありませんが、農家が安心して米を生産できることと、工夫と努力をしている経営が儲かって後継者が増え、そして消費者に適正な値段の米が供給される、そういう仕組みを考えてもらいたいと思います。

関連リンク

農林水産省「令和6年産米の相対取引価格・数量について」

南石名誉教授のコメント

今回の分析では、近年の稲作経営の経営概況の動向が明らかになりました。

2023年産までは、農家が販売した米価では、世帯農業所得は全農家平均で500万に達しませんでしたが、2024年産では、世帯農業所得は全農家平均で約850万円になり、2023年の1.7倍になりました。

2024年産の所得を収入金額別にみると、世帯農業所得850万円以上を得るには、収入金額が2,000万円以上必要であることも明らかになりました。所得500万円以上では、収入金額は1,500万円以上必要です。

また、交付金等の雑収入を含まない販売利益(=販売金額ー経営費)を収入金額別にみると、2023年はすべての階層で赤字でしたが、2024年には黒字になっています。これらのことから、少なくとも2023年産までの米価は、個人経営の稲作経営にとっては低すぎる価格水準であったことを示しています。

一般的な米の流通では、農家が販売する時の米価と、消費者が買う時の価格には、大きな差(例えば、3倍程度)があります。流通過程では、精米や運搬などの経費が必要になりますが、これらの流通経費が妥当なのか、流通経費を削減して農家と消費者が恩恵をうける販売経路の姿は何か等についても、農家と消費者の双方が考える必要がありそうです。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。