
2023年度に開かれた第53回日本農業賞において、集団組織の部の大賞に福島県昭和村の「JA会津よつばかすみ草部会(2024年4月に「JA会津よつば昭和かすみ草部会」へ変更)」が選ばれました。雪深い気候を生かしてかすみ草の一大産地を作り上げたこと、売上が近年右肩上がりであること、手厚い教育制度などで新規就農者が増加していること等が評価されました。
昭和村・柳津町・三島町・金山町の栽培者で生産されるかすみ草は「昭和かすみ草」の名前でブランド化され、市場でも高い評価を得ています。今回は、JA会津よつば昭和かすみ草部会の部会長である立川幸一さんにお話を伺い、かすみ草栽培の歴史や発展、工夫についてお伺いいたしました。
豪雪と高地を活かして、かすみ草の一大産地へ
福島県昭和村は奥会津と呼ばれる地域に位置し、標高は高いところで海抜1,482メートルにものぼる山々に囲まれた自然豊かな場所です。冬期の降雪量は非常に多く、3メートルほど積もる時すらあり、特別豪雪地帯に指定されています。

そんな昭和村を中心とする昭和かすみ草は日本有数の産地で、夏秋期の栽培面積は日本一です。かすみ草を手掛ける農家は4町村合わせて92戸で、なんと約3分の1が新規就農によって栽培を開始された生産者です。農業の世界で高齢化が深刻であることを考えると、これは驚異的な数字です。
かすみ草はハウスで栽培され、花は6月頃から咲きます。苗を10日ごとにずらして植えることで花の咲く時期をずらし、順ぐりに出荷します。かすみ草は冷涼な気候を好むため、気温の高い真夏は標高の高いところで、春秋は低いところで栽培を行う農家も多いそうです。
また、この地域では「通称、雪室(ゆきむろ)」と呼ばれる昭和村農林水産物集出荷貯蔵施設を利用しています。ここへ冬の間に大型10tトラック300台分の雪を運び込み、夏にはこの雪を利用して予冷庫内を冷却します。出荷前のかすみ草は、この予冷庫で冷やしておくのですが、雪を利用することで冷却にかかるコストを大幅に節約できます。まさに、雪国ならではのユニークな工夫ですね。

新規就農者が産地全体の3分の1!
昭和村のかすみ草栽培の歴史は、昭和58年にさかのぼります。リンドウ等が当初は広く作付けされていましたが、品目転換でかすみ草が選ばれました。かすみ草が選ばれたのは、高所にあるこの地域の冷涼な気候に合っているからです。また、当時のかすみ草の産地は北海道と長野に限られていたため、福島県という首都圏に近い場所で栽培を行えば、増加する需要に対応できるのではないか、という想定もありました。
また、この地域では葉たばこを広く栽培していましたが、昭和63年頃の葉たばこ廃作奨励を契機に、かすみ草への転換は加速しました。その後に訪れたバブル経済によって、花の需要が増えたために単価が上がり、さらに栽培者が増えるという追い風が起こりました。
こうして日本有数のかすみ草の産地となった昭和村地域ですが、このような産地ではお互いに支え合えるという大きなメリットがあります。「各市場までの輸送運賃や雪室の利用料を共同で払っているため、コストが安く抑えられます。最近は2024年問題で運賃の値上げも深刻ですが、大勢で負担を分け合っているので乗り切れるのです」と立川さんは話してくれました。
産地を支える上で重要なのは、高齢化による生産者の減少にいかに歯止めをかけるか、です。昭和村を中心としたこの地域ではこの問題にも早期から積極的に取り組み、新規就農者を積極的に募集しました。空き家のリフォーム代を一部負担する、研修にも力を入れるなど、手厚いフォロー制度も備えています。

「かすみ草栽培に高価な機械は必要ないので、その点は新規参入におけるメリットです。ただし、ハウスにはお金がかかりますので、行政・JAの補助金や助成金によってサポートしていただいています。また、自分で学ばなければならない昔と違って、今は研修制度が手厚いので、就農二年目から十分な売上を上げることも可能です。昭和かすみ草は、地理的表示保護制度(GI)にも認定されブランド化に成功しているので利益を出すことができますし、新規就農者で離農する方はここ十年の間、いないんですよ」
これらの取り組みが、冒頭でご紹介した「全体の3分の1が新規就農者」という驚異的な結果につながっています。各地方の花き産地からも、この成功例を学ぶべく訪れる方が大変多いと立川さんは言います。
「ただし新規就農の方を支えていくには、人がずいぶんと減少して産地が衰えてからでは遅い。早め早めに実行に移すことが肝心ですね」
コロナ禍でも売上アップの理由とは
コロナ禍では緊急事態宣言や自粛によってイベントがなくなり、花の需要も大打撃を受けたはずです。しかし、立川さんによると、意外にもコロナ禍で花の需要が増えるという側面もあったそうです。
「売上激減を覚悟していたのですが、予想に反して注文が途切れませんでした。リモートワークで家に花を飾る方が増えたので、結婚式などのイベントが減っても、花のニーズ自体は減らなかったようなのです」
かすみ草はドライフラワー向きの花で、上手に飾れば一年も長持ちするので、その点もコロナ禍による巣ごもり需要にぴったりでした。また高齢化によって花き農家が全国的に減少していたので、他産地からの供給が減ってしまった分、昭和かすみ草の注文が増加したという背景もあったそうです。

「実は、うちへの新規就農者もコロナ禍で増えたんですよ。仕事に疲れて田舎で暮らしたい、そう考えて移住してきた方もいました」
美しい花は毎日の暮らしを豊かにします。清楚で落ち着いた雰囲気のかすみ草は、癒しを求める現代人の心情にも、ぴったりと合っているのかもしれません。
進化するかすみ草の「これまで」と「これから」
現在のかすみ草の人気は、品種改良や様々な工夫にも支えられています。たとえば昔に比べて、ずいぶんと花のサイズが大きくなりました。
「昔は、小さい花の方が人気があったので、かすみ草も小ぶりだったんです。今は時代に合わせて大きくなり、花もしっかりと存在感があります」と立川さんは昔を振り返っていました。
収穫後にもひと工夫があります。実は、かすみ草の花は独特のにおいが強く、食事の場所に飾るには適さないとも言われます。そこで昭和かすみ草は、収穫後に行う「水揚げ」で、においを抑制する抑制処理剤を配合しています。
「反対意見も部会内では出ました。でも、そちらの方が売れると信じて、全量の処理に踏み切りました。変なにおいがしないということで、お花屋さんでも評判ですし、これなら結婚式のテーブルにも飾れる、という評判も聞きます。結果として、ブランド力の向上につながったと考えています」
また、色をつける技術も発達しています。かすみ草は「白」というイメージの強い花ですが、白いかすみ草に色水を吸わせることで、色とりどりの鮮やかな着色が可能です。様々な色のかすみ草が並んでいる様は壮観で美しく、「映える」という言葉がぴったりです。
「遠くから昭和村を車で訪れて、かすみ草の写真を撮ってSNSでアップする方もいるんですよ。すると、その写真をSNSで見た方が、またここへ来てくださる。よほどお花が好きなのか、一人で大量に買っていかれる方もいますし、そういう反響も嬉しく思っています」
コロナ禍の需要に合うドライフラワーや、SNS時代にぴったりの鮮やかな着色。そのような時流に合った特徴に加えて、立川さんたち昭和かすみ草部会の方々が創意工夫と努力でかすみ草を進化させてきた結果が、今の成功へつながっています。昭和かすみ草の売上は過去5年間にわたって増加しているのですから、まさに絶好調といえるでしょう。

「昭和かすみ草は品質がよくて長持ちする。そういう評価を勝ち取った結果、平均より高くても買っていただけていますし、利益も出せています。さらに市場を広げるため、今後は海外進出も視野に入れています。昭和かすみ草をより多くの人に届けて、この産地をもっと盛り上げていきたいですね」
そう語る立川さんは現状に満足することなく、今後の展望を見据えていました。高品質の昭和かすみ草は海外でも歓迎されることは間違いありません。今後も昭和村を中心としたこの地域は日本有数の産地として、また日本の花き産地のトップランナーとして、様々な方に支えられて飛躍を続けることでしょう。
関連リンク
JA会津よつば「夏秋期日本一の福島県昭和村のかすみ草 ─ JA会津よつばかすみ草部会」

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