農業利益創造研究所

作目

高所得率野菜であるスイカ経営の特徴を探る

個人情報を除いた2023年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家11,655人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

年々日本が暑くなってきていますが、暑い夏といえばスイカですね。暑ければスイカの消費量が増えるだろうと思いがちですが、実は核家族化により大玉のスイカの消費は増えていないとのことです。

今回は、2023年の農業簿記ソフトユーザーの中から、134件のスイカ農家の経営を分析してみたいと思います。

スイカは儲かり野菜

当研究所では、世帯農業所得率が高い(効率が良い)野菜を「儲かり野菜」と呼び、今までコラムで紹介してきました。

「新規就農者必見!高所得率の儲かり野菜を探る<2023年版>」では、2023年の儲かり野菜の1位はワサビ(所得率44.7%)、2位はスイカ(36.1%)、3位はパセリ(35.7%)でした。そして、スイカの世帯農業所得額平均は945万円ですので、儲かる作目であると言えます。

スイカの消費量はそんなに増えていないということですが、農業簿記ユーザーのデータを分析すると、3年間の経営の年次推移は下記のグラフのようになりました。

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このグラフを見ると、収入金額は増加し、農業所得も増えています。しかし、農業所得率が減少しているのは、近年の物価高により経営費も増えているからだと思われます。

高所得率スイカ経営の特徴

スイカ農家134件はどのような経営なのか、下のように散布図グラフを作成してみました。横軸は収入金額、縦軸は世帯農業所得額です。

黄色の点線は平均値、赤い点線は近似曲線です。収入金額が増えて大規模化すればするほど農業所得額も比例して増えています。収入金額が2,500万円を超えると所得1,000万円を超える農家が出てきていますが、所得が少ない経営もいくつかあります。

縦軸を世帯農業所得率にした散布図を見ると、所得率が高く経営効率が一番良い経営規模は、収入金額が3,000万円だというのが近似曲線でわかります。経営によってこれだけのバラツキがあるわけですから、所得率が低い経営と高い経営には何らかの特徴があるはずです。

近似曲線による所得率が高い収入金額の階層(2,000~4,000万円)の中から、高所得率と低所得率の経営を抽出してみました。

データから読み取れる高所得率経営の特徴は以下の通りです。

 ・世帯農業所得が1,379万円で2倍の金額である
 ・所得率は45.5%という高さ
 ・主幹作目比率(作付けしてる作物の中でスイカの割合)が高い
 ・減価償却費が少ない(機械を長くじょうずに使っている)
 ・雇人費が少ない(農作業に工夫がある)
 ・荷造運賃手数料が低い(もしかしたら直売所による販売が多いのかも)
 ・固定資産額は高い(投資をして高効率化を行っている)

収入金額2,000~4,000万円規模の中での経営比較
高所得率経営
(経営体数:21)
低所得率経営
(経営体数:17)
収入金額30,32430,375
経営費16,53023,615
世帯農業所得13,7946,760
世帯農業所得率45.5%22.3%
専従者 人数2.11.8
主幹比率70.2%66.7%
種苗費1,0891,213
肥料費9981,583
農薬衛生費1,1661,502
諸材料費1,3261,668
動力燃料費690956
減価償却費1,5132,041
雇人費4722,506
荷造運賃手数料5,4756,247
建物・構築物 資産額12,6525,114
農機具 資産額7,0104,944
借入金 額4,0054,695

※金額の単位は千円。

スイカの販売時期による違い

スイカの原産はアフリカの砂漠といわれており、高温乾燥地域で水はけの良い場所を好むそうです。温暖地域では4月に定植し6~7月に収穫、冷涼地では5月に定植し7~8月に収穫です。

先ほどの高所得率経営と低所得率経営の月別の販売金額をグラフにしてみました。高所得率経営は8月の販売額が多いことがわかります。

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農林水産省の作物統計によると、スイカの生産量が高い都道府県は、熊本県、千葉県、山形県、鳥取県です。

農業簿記ユーザーのデータ数が多かった鳥取県と石川県と山形県で月別販売金額を集計すると、鳥取県は6月7月に販売し、石川県は7月がピーク、山形県は8月がピークとなっています。温暖地域から冷涼地域にじょうずに販売時期がずれています。

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この3県の所得率を調べると、高い順に、山形県(39.3)、鳥取県(37.4)、石川県(29.4)でした。高所得率経営は8月に出荷しているという分析でしたが、これは山形県である、ということがわかります。

また、主幹作目比率を調べてみると、山形県(84.5)、鳥取県(76.1)、石川県(61.5)となっており、主幹作目比率が高い方が所得率も高くなっています。あまりあれこれと作物を複合経営するよりは、スイカをメインとした栽培の方が高効率経営であると言えそうです。

まとめ

儲かり野菜であるスイカを分析してみましたが、スイカ経営の中でさらに高効率経営はどのような特徴があるかわかりました。

最近では小玉のスイカ、カットスイカ、黄色いスイカ、サラダに入れたり、スムージーとしても、などなど時代に合わせ多種多様な形が出てきていますので、これからも儲かり野菜の人気フルーツとして続くと思われます。

関連リンク

農林水産省の作物統計
農業利益創造研究所「新規就農者必見!高所得率の儲かり野菜を探る<2023年版>」

南石名誉教授のコメント

今回の分析では、「儲かり野菜」のスイカを栽培する経営も、詳しくみると多様であることが明らかになりました。収入金額が2,000~4,000万円の農家群の世帯農業所得率をみると、世帯農業所得率が高い農家群の所得率(45.5%)は、低い農家群の所得率(22.3%)の2倍以上あります。

同じスイカでも、販売時期や流動経路によって販売価格は大きく異なります。また、栽培技術、作業方法、圃場、立地条件等によって、収量、品質、コストも異なります。これらの要因が複雑に絡み合って、所得率に影響していると思われます。

個人経営の所得率は、法人経営の利益率のように、収益指標であるといえます。収入金額や売上などは、個人経営でも法人経営でも経営規模の指標です。経営規模の拡大を目指すのか、収益性の向上を目指すのかは、経営方針によります。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。