
農業利益創造研究所では、農業に携わる方からご意見をお聞きするアンケートを定期的に実施しています。2022年2月の1か月間の質問は、「あなたが一番好きな「かんきつ類」はなんですか?」でした。ご回答いただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。
あなたが一番好きな「かんきつ類」はなんですか?
もう3月になり春はそこまできていますが、今年も寒い冬でした。きっと皆さんは暖房のきいた部屋でみかんなどのかんきつ類を食べたのではないでしょうか。
今回のアンケートの結果は以下のようになりました。
みかん | 40.0 |
---|---|
オレンジ | 6.7 |
グレープフルーツ | 13.3 |
いよかん | 0.0 |
ぽんかん | 20.0 |
はっさく | 6.7 |
ぶんたん | 0.0 |
ネーブル | 13.3 |
やはりみかんの人気が高いですね。おいしいのは勿論ですが、皮をむけばすぐに食べられる手軽さも魅力なのだと思います。
20年ほど前から「タンゴール(ミカンとオレンジを交配したもの)」という品種改良された種類のみかんが出回り、甘さとさわやかさ、果汁がたっぷり、ゼリーのようなとろける食感で、皮が薄くて種が無く食べやすい、という評判で高値で取引きされるようになり、栽培する農家が増えてきました。
人気の高いタンゴールみかんは、以下のようなものです。
(1) 甘平(かんぺい) 愛媛県の果樹試験場で誕生した品種
(2) せとか 長崎の試験場で生まれたが、愛媛県が全国の7割近くを生産
(3) 紅まどんな 愛媛生まれのオリジナル品種
2020年度みかん収穫量の都道府県別の1位は和歌山県ですが、ブランド化がじょうずなのは愛媛県のようです。
みかんは高所得な作目か?
かんきつ類の中で人気なのは「みかん」というアンケート結果でしたが、経営的特徴を農業簿記ソフト利用者16,000件のデータを集計して調べてみました。果樹と野菜の全国平均と、タンゴールの中でも高い値段で販売されている「甘平」と「せとか」の収入金額と世帯農業所得は、以下の表のようになりました。
(経営体数) |
果樹農家全国平均(1,175件) | 「せとか」栽培農家(25件) | 「甘平」栽培農家(15件) | 野菜農家全国平均(5,283件) |
---|---|---|---|---|
収入金額 | 12,491 | 17,583 | 12,413 | 20,063 |
世帯農業所得額 | 4,315 | 6,934 | 4,371 | 5,367 |
世帯農業所得率 | 34.5% | 39.4% | 35.2% | 26.8% |
※金額の単位は千円。
果樹農家は野菜農家と比べて経営規模や所得は若干低いのですが、所得率は果樹の方が高くて非常に効率の良い経営であるということがわかります。さらに「せとか」を栽培している農家は、農業所得額も所得率も非常に高いです。
「せとか」を栽培している農家の都道府県を調べたら、愛媛県18件、広島県2件、佐賀県2件でした。さすが蛇口をひねるとみかんジュースが出ると言われる愛媛県です。
果樹はハイリスク・ハイリターン
野菜は植えてから数ヶ月で収穫・販売できますが、果樹の場合は数年単位の時間を要します。桃栗3年、柿8年とよく言われますが、「梨・桃・レモン・キンカン」は約3~4年、「柿・りんご・さくらんぼ・みかん・ハッサクなど」は約4~5年ですから、最近「甘平」が人気が出てきた、とわかってもすぐに栽培することはできませんし、また、まったくの新規就農者は手を出しづらい作目です。
大半の果樹農家さんが「繁忙期に1年分の収益を稼ぎきる」戦略をとっていますが、異常気象や災害などが発生した際に大きなダメージを負うデメリットがありますので、果樹はハイリスク、ハイリターンかもしれません。悲観的に準備して、安定的においしい果物を消費者の皆さんに届けてもらいたいですね。
3月のアンケートは、「あなたが一番好きな「きのこ」は何ですか?」です。今回のかんきつ類に続いて、一番好きなものシリーズ第2弾です。たくさんの投票をお待ちしています。