農業利益創造研究所

農業経営

「農業王2023」受賞者決定!持続可能な農業経営の実現を応援します。

一般社団法人農業利益創造研究所とソリマチ株式会社は、日本農業に無くてはならない個人事業農家を応援するために、優れた経営内容で、持続可能な優良経営を実践している農業者を表彰する「農業王 アグリエーション・アワード 2023」を実施しました。

本アワードでは、2022年ソリマチ農業簿記ユーザーの個人情報を除いた青色申告個人農家のデータを分析し、九州大学名誉教授 南石 晃明氏、新潟食料農業大学 准教授 青山浩子氏など、農学博士・学識経験者等で構成される委員会にて、経営の収益性・安全性・成長性・地域貢献、そして持続可能性を兼ね備えた経営者を選考し、受賞者を決定いたしました。

選考方法

応募者の青色申告決算書をもとに経営の収益性・安全性を評価して全国101名を選考し、その経営者へのヒアリング調査により経営力や持続可能性についてさらに選考を行い、最終的に北海道から九州までの9ブロックから、普通作(米+麦・大豆)部門、野菜部門、果樹部門、畜産部門の「農業王」を選出いたしました。

農業王には2つの賞があります。
1.収益性、安全性、経営力、地域貢献、持続可能性に優れた「SDGs農業賞」15名
2.収益性、安全性に優れた「優良経営賞」86名
受賞者へは、賞状、トロフィー、ステッカー、受賞農場と全国平均を比較した経営診断書、などを贈呈致します。

農業王を受賞した 普通作経営の特徴

受賞者101名は、全国平均と比較してどれくらい優良経営なのか、どのような特徴があるのかを、簿記データを分析し明らかにしてみます。

最初に、普通作経営29名を集計し、全国の普通作経営の平均と比較すると下の表のようになりました。収入金額経営規模は全国平均より1.7倍大きく、世帯農業所得は2.5倍、所得率も高く、借入金率が低い安全経営であることがわかりました。

【普通作】農業王と全国平均との比較
農業王 受賞者2022年全国平均
収入金額36,25021,344
世帯農業所得13,2215,259
世帯農業所得率36.5%24.6%
借入金率19.6%43.9%

※世帯農業所得=農業所得+専従者給与 / 借入金率=借入金÷収入金額。
※金額の単位は千円。

※世帯農業所得=農業所得+専従者給与 / 借入金率=借入金÷収入金額

収入金額を100とした科目の金額の比率を算出し、農業王と全国平均との差をグラフにしました。差がプラスの科目は農業王の方の金額が高いことを示します。また、あまり差が無い科目は省略しました。

農業王受賞者は、雑収入(補助金等)に頼らない経営をしており、規模を大きくして経費を削減していることがわかりました。すばらしい経営です。

canvas not supported …

※差がプラスの科目は農業王の金額が高いことを示す

野菜作経営の特徴

農業王の野菜作経営31名の経営は以下のようになりました。

【野菜】農業王と全国平均との比較
農業王 受賞者2022年全国平均
収入金額37,00423,113
世帯農業所得15,1956,114
世帯農業所得率41.1%26.5%
借入金率12.6%26.7%

※世帯農業所得=農業所得+専従者給与 / 借入金率=借入金÷収入金額。
※金額の単位は千円。

経営規模は大きくても借入金に頼らず、そして世帯農業所得が1,500万円もあります。何と言っても驚きなのは、41.1%という非常に高い農業所得率です。

なぜそれほど高い所得率なのか、収入金額を100とした科目の金額の比率の差で調べてみましょう。主な費用科目がまんべんなく低くなっていることがわかります。

近年価格が高騰している肥料費や動力光熱費も低くなっていますので、どのようにしたらこのような結果になるのか不思議です。農業王の中でも特に優良な経営の15名は現地にてインタビューをして、経営の秘訣をこのサイトで記事として掲載しますので、ぜひご覧ください。

canvas not supported …

果樹作経営の特徴

農業王の果樹作経営26名の経営は以下のようになりました。野菜作経営と同じように、経営規模は大きくても借入金に頼らず、1,400万という高い世帯農業所得と、高い所得率がすばらしいです。

【果樹】農業王と全国平均との比較
農業王 受賞者2022年全国平均
収入金額30,07814,887
世帯農業所得14,4145,187
世帯農業所得率47.9%34.8%
借入金率6.9%15.3%

※世帯農業所得=農業所得+専従者給与 / 借入金率=借入金÷収入金額。
※金額の単位は千円。

収入金額を100とした科目の金額の比率の差を見てみると、燃料費が高くなっているということから施設栽培の経営が多いということがわかります。

果樹経営は、消費者に直接販売したり倉庫で貯蔵する関係で、一般的に収入金額の約15%という高い金額が荷造運賃手数料となるのですが、農業王はこの手数料が非常に低く抑えられているので所得が高くなっていると言えます。この秘訣も知りたいですね。

canvas not supported …

酪農と肉用牛の特徴

農業王の酪農経営10名と、肉用牛経営6名の経営は以下のようになりました。

【酪農】農業王と全国平均との比較
農業王 受賞者2022年全国平均
収入金額52,37970,900
世帯農業所得11,3245,243
世帯農業所得率21.6%7.4%
借入金率22.9%24.4%
【肉用牛】農業王と全国平均との比較
農業王 受賞者2022年全国平均
収入金額61,11039,323
世帯農業所得12,4863,911
世帯農業所得率20.4%9.9%
借入金率22.6%41.3%

※世帯農業所得=農業所得+専従者給与 / 借入金率=借入金÷収入金額。
※金額の単位は千円。

面白いことに、酪農経営は規模が小さい経営が農業王になっています。規模が小さくても世帯農業所得が1,100万円はすばらしいです。逆に、肉用牛経営は農業王の経営規模が大きくなっています。

畜産経営は、飼料費の高騰により農業所得が減少している経営が多くなっています。しかし、酪農も肉用牛も農業王の経営は、素畜費や飼料費が非常に低く抑えられていることがわかりました。

子牛を自家繁殖したり、牧草を自家栽培したりして購入費用を抑えているのではないかと思われます。

農業王2023 受賞者一覧

「経営はバランスである」とよく言われます。人、もの、金をバランスよく活用し、最大限の利益を生み出し、そして永続的に発展していくことが重要ですが、農業王の候補者はその経営バランスに優れた経営者であるといえます。

今後、SDGs農業賞15名の経営内容のインタビュー記事を当サイトにて掲載していきますので、優良経営を参考にして頂きたいと思います。

「農業王2023」受賞者一覧はこちらのサイトをご覧ください。
「農業王2023」 受賞者決定!ソリマチは、持続可能な農業経営の実現を応援します。 

関連リンク

南石名誉教授のコメント

農業王2023の受賞農家は、全国平均と比較して、収入金額は1.7倍、世帯農業所得は2.5倍、世帯農業所得率は1.5倍、借入金率は0.4倍であることが明らかになりました。

換言すれば、農業王2023の受賞農家は、少ない借入金で高い所得を得ていることになります。こうした傾向は、作目別にもみられます。

SDGsは、持続可能な開発目標と訳されますが、持続可能な農業を実現するためには、環境保全や収量・品質維持といった技術的な持続可能性と共に、財務的な持続可能性も重要になります。まさに、農業王2023の受賞農家は、全国平均的な農家と比較して、財務的な持続可能性を有していると言えそうです。

農業経営の持続可能性を担保するためには、後継者や人材の育成が重要になります。こうした点も含めて、SDGs農業賞15名の経営内容のインタビュー記事を参照頂きたいと思います。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。