
個人情報を除いた2024年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家15,780人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。
確定申告の時期はふるさと納税が話題になります。ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。農産物をふるさと納税に出品している農家にお聞きすると、「商品の掲載、受注、決済、顧客管理などのわずらわしい手間がかからず、簡単にネット販売できる」ということで好評です。
残念ながら、農業簿記のデータだけではふるさと納税に出品している農家を調べることはできず、売上にどれくらい貢献しているかを分析することはできません。
よって、ソリマチの確定申告ソフトユーザーのデータを分析し、ふるさと納税を行っている農家の数を確認し、ふるさと納税の活用の可能性を探ってみましょう。
ふるさと納税とは
まず、ふるさと納税についておさらいしましょう。
ふるさと納税は、応援したい自治体に寄附することで、特産品などの「返礼品」を受け取ることができ、しかも所得税・住民税は寄附額から2,000円を引いた額が控除される制度です。
ケースによって金額が変わりますが、例えば控除後の所得金額が300万円だとして、ふるさと納税を10万円行ったとしたら、所得税が9,800円減り、住民税が88,200円減り、結局2,000円の負担だけで返礼品が受け取れる、ということになり大変お得です。
全国的にどれくらいの人がふるさと納税の寄附を行っているのでしょう。
「ふるさと納税ガイド」というサイトからデータを引用し、下に都道府県別TOP7と、下位7県を表にしました。
都道府県内で利用している人の率が高い順に、東京都、大阪府、神奈川県、と続きます。いわゆる人口が多い都会ほど利用率が高く、低いのは東北地方です。
ふるさと納税を利用するメリットは、2,000円の負担だけで地方の特産品がもらえることです。
都会の人ほど所得が高くて節税意識が強く、情報感度が高くてふるさと納税を面倒だと思わない人が多い、ということだと思われます。全国平均の利用率は16.3%で、1人の平均寄附金額は99,649円です。
| 利用率 | 平均寄付金額 | |
|---|---|---|
| 東京都 | 23.8% | 134,579円 |
| 大阪府 | 20.6% | 95,004円 |
| 神奈川県 | 20.0% | 105,294円 |
| 兵庫県 | 19.3% | 97,567円 |
| 愛知県 | 18.9% | 99,273円 |
| 京都府 | 18.5% | 96,906円 |
| 滋賀県 | 18.0% | 83,034円 |
| 利用率 | 平均寄付金額 | |
|---|---|---|
| 新潟県 | 9.6% | 79,721円 |
| 島根県 | 9.1% | 73,096円 |
| 山形県 | 8.9% | 74,904円 |
| 福島県 | 8.4% | 90,125円 |
| 青森県 | 7.9% | 74,328円 |
| 秋田県 | 7.9% | 72,263円 |
| 岩手県 | 7.8% | 74,969円 |
確定申告ユーザーのふるさと納税は
確定申告書の控除欄に「寄附金控除」があります。
ただし、寄附金はふるさと納税だけでなく、日本赤十字や公益財団法人、社会福祉法人、認定NPO法人などへの寄附も含まれます。明細までは不明なので、今回は寄付金控除はほとんどふるさと納税であろうと考えて集計しました。
確定申告ユーザー19,415件のうち、寄附金控除がある農家は1,835件(9.4%)であり、平均寄附金額は71,821円でした。全国平均の利用率は16.3%で、平均寄附金額は99,649円ですから、農家のふるさと納税利用は低いです。
都道府県別の利用率を調べたら、1位が和歌山県(30%)、2位大阪府(28%)、3位東京都(26%)、4位山梨県(25%)でした。
都市に住んでる農家の利用率が高いのは納得できますが、和歌山県と山梨県が高いのはおもしろいです。どちらの県も果樹の特産品が有名な県ですから、おそらく農家がふるさと納税に出品しているからふるさと納税に対する意識が高いのだろう、と推測できます。
寄附金金額の額はどれくらいなのか、金額ごとに件数を調べてグラフにしました。平均寄附金額は71,821円ですが、5万円以下が多いです。
ふるさと納税に出品している農産物
ふるさと納税のサイトは、「楽天」や「さとふる」、「ふるなび」などいくつかありますが、どのような農産物が多く出品されているでしょう。2026年3月時点での「さとふる」のサイトで、農産物の商品掲載数を調べました。
お米の値段が上がった影響で、お米の人気が高く件数が断然多いです。果物はメロンとみかんがかなり多く、野菜はいもや豆、根菜といった、保存のきくものが多いことがわかりました。
商品掲載件数が多いということは、自分の農産物を載せても競争が激しい、ということになってしまいますが、ぜひ参考にしてください。
| 分類 | 農産物 | 掲載商品数 |
|---|---|---|
| 米 | 米 | 113,239 |
| 果物 | みかん | 20,145 |
| メロン | 17,011 | |
| ぶどう | 9,961 | |
| いちご | 6,458 | |
| りんご | 5,827 | |
| 野菜 | いも | 3,677 |
| 豆 | 3,552 | |
| トマト | 2,364 | |
| 根菜 | 2,108 | |
| きのこ | 2,024 | |
| 畜産 系 | 卵 | 3,672 |
| チーズ | 3,474 | |
| ヨーグルト | 2,816 |
最近では、ユニークなふるさと納税商品があります
<体験型>
茨城県土浦市 平安装束「十二ひとえ」体験 85,000円
奈良県宇陀市 無農薬栽培 農業体験 40,000円
東京都東村山市 自分だけの味を創造! オリジナルソース作り体験 27,000円
<オーナー制度>
宮城県 【新米が届く】10坪オーナー ひとめぼれ15kg 50,000円
栃木県佐野市 ブルーベリー いっぽんの樹 一年間オーナー権 67,000円
<日常の便利なサービス>
岩手県花巻市 遠方の両親の家の 除雪サービス 18,000円
農業に関係するものは、参考になりますね。
まとめ
以上のことから、農家の人たちはあまりふるさと納税を活用していないことがわかりました。農家は地方に住んでいるわけですから、他の地域に寄附すると、自分の地域の税金が減ってしまう、ということを気にする方もいるかもしれません。
しかし、自分がまずふるさと納税を経験してみて興味を持ち、自分の農産物や体験をふるさと納税に出品して売上アップを図るのも経営戦略の一つだと思います。
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南石名誉教授のコメント
今回の分析では、農家のふるさと納税の利用状況や、農家が出品するふるさと納税返礼品の動向が明らかになりました。農家からみれば、ふるさと納税返礼品は、農産物の販路の一つと考えられますが、ネットショップなどでの販売よりも参入障壁が低いというメリットがあります。
通常、市役所が出荷経費を負担し、市役所が契約する代行業者から返礼品出荷の連絡があり、宅配業者に送り状を持参してもらうこともできるため、農家としては出荷の手間や経費を抑えられます。また、代行業者が、クレーム対応や代金回収も対応するため、決済やクレーム対応の心配もありません。
代行業者は、ふるさと納税サイトへの返礼品の出品や紹介文・写真の掲載も行ってくれるので、その手間や経費負担もありません。このように、農家側の負担が少ないこともあり、膨大な数の返礼品がふるさと納税サイトに掲載されています。その中から、多くの寄付者にどのようにすれば選んで頂けるか、農家の工夫と知恵が試されます。
