農業利益創造研究所

機械・設備

2024年 スマート農機のドローン導入農家は増えたのか?

個人情報を除いた2024年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家15,780人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

当研究所では、 2022年3月に「ドローンは人手不足の救世主となるか? 所持率は低いが可能性は大」というコラムを掲載し、2020年のドローン所有農家の実態を明らかにしました。

4年後の2024年は、ドローンの導入は増えたのでしょうか? 農業簿記ソフトユーザー15,780件のデータから、ドローン農機を購入し減価償却している農家数を集計してみました。

ドローンの普及

土地利用型農業の効率化には大規模経営が良いとされてきましたが、今から約20年ほど前に「精密農業」という「大規模化の中でもより精密なセンシングや肥培管理をしていこう」という技術が生み出されました。

そういった考えと同時にICT技術が進歩し、いずれ「スマート農業」という技術に進化していったと言えます。

スマート農業の中でいち早く注目され始めたのがドローンです。ドローンにより、大規模ほ場の農薬・肥料散布、種の播種、人工授粉などの効率化だけでなく、ほ場状況のセンシング技術により収量増大や品質向上のために活用するという、まさに精密農業が可能な時代になってきました。

農林水産省の資料によると、農薬や肥料の散布用ドローンの販売台数の推移は以下のグラフの通りです。

現在は年間3,000台程度で推移していますが、2020年に一気に増えました。コロナ禍と何か関係があったのでしょうか。

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農業簿記ユーザーのドローン所有状況

それでは、農業簿記ユーザーのドローン所有状況はどうでしょうか。2020年に調査したデータと今回2024年のデータを、営農類型別に集計し、所有率(%)も算出してみました。

2024年の所有農家数合計は1,037件、所有率は4.2%でした。4年前から所有率が2倍に増えています。営農類型別に見ると、普通作がダントツで多く、次に野菜、果樹と続きます。

ドローンを活用している普通作農家が14%というのは、かなり浸透してきたと言えると思います。

2020年と2024年の ドローン所有農家数と所有率
営農類型2024年2020年
所有農家数所有率所有農家数所有率
普通作62214.3%2047.4%
野菜1141.9%511.7%
果樹190.7%30.3%
畜産81.1%40.5%
花き40.5%
工芸作物61.4%
不明2642.8530.9%
合計1,0374.2%3151.9%

ドローン購入年の農家数は以下のグラフの通りです。2020年に急に増加し、2021年が最高となり、その後は毎年150台程度増えています。先ほどの農林水産省のドローン販売台数推移と似ています。

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2020年からのコロナ禍において、人手不足による事業継続危機に対応するために、国から「小規模事業者持続化補助金」という支援がありました。この補助金を活用してドローンを購入した農家が増えたのだと思われます。

経営規模別 ドローン所有状況

次に、収入金額の経営規模別にドローン所有状況を調べてみました。

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収入金額が3,000万円以下の農家が所有農家全体の60%を占めており、中小規模が多いように見えますが、もともと中小規模の全体農家数が多いので各階層ごとに所有率を算出すると、やはり大規模層で所有率が10%以上と高くなっていました。

しかし、1,000万円以下の小規模農家の所有率が多めであることが意外(謎)です。

次にドローンの購入金額別の農家数も調べてみました。なお、購入金額平均額は130万円でした。

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一般的に、低価格帯ドローンは70万円程度、中価格帯は約120万円、高価格帯は約200万円と言われています。50万円以下のドローンを所有している農家は198件ですが、この低価格ドローンは単なる撮影用かもしれませんし、もしかしたら、減価償却資産に登録する際に、本来の機体価格から補助金を差し引いた額を取得価格としているかもしれません。

まとめ

ドローンを購入した農家が、この4年間で約2倍に増え、1台平均130万円であり、意外と小規模経営でも導入していた、ということがわかりました。

おそらく、ドローンという新しい機器が農業に本当に使えるかどうか確かめたくて、補助金を活用して購入したという農家が多かったのではないでしょうか。

現在もスマート農業を行う際に補助金が使えるケースが多いので、ぜひ活用するべきだと思います。しかし、ドローンは購入前に免許の取得や機体登録、飛ばす前の許可申請など行ったり、購入後はバッテリーやノズルなどの消耗品代、メンテナンス代、保険などのコストがかかりますので、慎重に検討が必要です。

農研機構の資料(農研機構技報 No.16)によると、120万円ほどの小型ドローンを所有した場合の採算規模は農地面積35haであると示しています。最近では、農薬などの散布を外部の事業者に委託できるドローンサービス業者も増えてきました。人手不足になるであろう今後の農業にはドローンはとても重要な農業機械になることでしょう。

関連リンク

農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会
農研機構技報 No.16 (スマート農機の導入コストと採算規模)

南石名誉教授のコメント

今回の分析では、農家におけるドローンの導入状況が明らかになりました。ドローンの農業利用が始まった頃には、バッテリー交換無しでの飛行時間が20分程度であったり、風の影響で作業ができない場合がある、といった点が農業利用の大きな制約になるとの意見もありました。

その後、機体(ソフトウェア含む)やバッテリーの価格の低下や性能の向上もあり、ドローンによる農薬散布や肥料散布が各地で見られるようになりました。

営農類型別にみると、普通作での導入率が14%強で特に高くなっていますが、営農現場の肌感覚とも一致する数字と言えます。経営規模別にドローン所有状況をみると、収入金額5,000万円以上の所有率が11%強以上となっており、それ未満の収入金額1,000~3,000万円の所有率(5%強)の2倍以上になっています。他の農業機械と同様に、経営規模の拡大に伴い、農業機械導入の費用対効果が増加する傾向があることが読み取れます。

また、平野部の大区画水田だけでなく、里山の変形小区画棚田でも活用できることが、全国的にドローンの普及が進んでいる一因と思われます。収入金額1,000万未満の農家も、周辺農家の農薬散布作業等を受託することで、農作業サービス事業を拡大できるビジネスチャンスがありそうです。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。