農業利益創造研究所

収入・所得

トマトとミニトマトはどちらが高所得? 経営的な違いがあるか探る

個人情報を除いた2022年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家11,500人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

2020年の農林水産省の野菜の品目別産出額調査では、あらゆる農産物の中でトマトが2,240億円でNo.1の農産物です。

2023年12月の日本農業新聞の記事によると、全国の小売店や卸売会社へのアンケート調査で、トマトの売れ筋は大玉トマトよりミニトマトの方が多くなってきた、とのことです。1980年代にミニトマトが登場し、すぐ食べられる手軽さやかわいらしさから人気が出て、消費者ニーズとしてはトマトを追い抜こうとしています。

そのような中で、大玉のトマト農家とミニトマト農家には経営内容に違いはあるのでしょうか。農業簿記データを分析して探ってみましょう。

トマトについて

トマトは、南アメリカのアンデス山脈高原地帯が原産地であり、世界的に見るとトマトを生で食べる日本人はむしろ少数派なのだそうです。2022年の農林水産省の統計では、トマトとミニトマトの収穫量の割合は74対22と、実際は加工用トマトもありますから圧倒的にトマトの方が多いです。

トマトの栽培時期により夏秋トマトと冬春トマトの2種類があり、また、栽培方法によっては露地栽培とハウス栽培(土耕栽培と水耕栽培)など、多様な方法により1年じゅうトマトが出荷されています。

可能であれば、栽培方法によって経営結果に違いが出るのか、ということまで調べたいところですが、青色申告決算書でわかる範囲で分析してみます。

トマトとミニトマトの違い

農業簿記データの中からトマト農家481件、ミニトマト農家143件を抽出し集計したところ、以下のような経営概況となりました。

トマト農家の経営概況(全国平均)
トマトミニトマト
経営体数481143
平均年齢5250
収入金額19,22321,411
世帯農業所得額4,5715,243
世帯農業所得率23.8%24.5%
建物機械の資産額7,9729,858
借入金額6,0657,925

※金額の単位は千円。

ご覧のようにあまり両者に差が無い結果となりましたが、ミニトマト農家の方が平均年齢が若干若く、収入金額と世帯農業所得が高く、所得率も高く、固定資産や借入金も高いということがわかりました。

ミニトマトの方が規模が少し大きく、設備投資したハウス栽培を行って高所得を得ている、という経営の特徴が見えてきます。

収入金額を100とした経費の比率を調べると、以下のグラフのようにほとんど差はありません。結局、トマトもミニトマトも同じトマトですから差が無いのは当たり前、ということなのでしょう。もし新規就農者がトマトとミニトマトのどちらを生産しようかと悩んだとしても、経営的にはどちらでも良いということになります。

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地域別に分析してみる

2022年の農林水産省の資料によると、トマトの収穫量TOP3は、①熊本県、②北海道、③愛知県、でした。ミニトマトは、①熊本県、②愛知県、③北海道、であり、どちらも違いはほとんどありません。

やはりトマトもミニトマトも栽培方法や経営手法に大きな違いが無いので地域性にも差が無いのだと思われます。

2022年トマトの収穫量TOP3
収穫量 (t)割合(%)
熊本130,30018.4
北海道62,9008.9
愛知47,7006.7

※農林水産省の資料より。

2022年ミニトマトの収穫量TOP3
収穫量 (t)割合(%)
熊本41,30026.3
愛知15,90010.1
北海道14,8009.4

※農林水産省の資料より。

トマトは一年中スーパーで売られていますが、これは季節をずらして生産しているからであり、その栽培方法は「夏秋トマト」と「冬春トマト」の二種類があります。

下のグラフのように、北海道は気温が低いので夏秋トマトが多く生産され、熊本は暖かい地域なので冬春トマトが多くなっています。ハウス栽培の暖房費を考慮しながら、日本全体で均一にトマトが出回るようにするには、地域を考慮した栽培時期の切り分けがベストなのだと思われます。

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栽培時期に違いがある北海道と熊本県の経営概況を調べてみましたが、下の表のように違いが見られませんでした。表には示していませんが、経費構造を見ると熊本県は肥料費と荷造運賃手数料が少し高く、北海道は地代賃借料が高くなっていました。ちなみにハウスの暖房のための光熱費には違いがありませんでした。

トマト農家の地域別経営概況
北海道熊本県
経営体数5041
平均年齢4951
収入金額24,46025,816
世帯農業所得額5,8236,193
世帯農業所得率23.8%24.0%

※金額の単位は千円。

まとめ

今回の分析から、トマトとミニトマトの経営的な違いは無く、さらに地域的な差も無い、ということが発見でした。これはおそらく、農家の皆さん、指導機関、種苗会社やカゴメなどのメーカー、すべての関係者が試行錯誤しながら様々な条件に適合する標準的な栽培方法を確立してきたからだと思われます。

2023年は猛暑が影響し、10月上旬のトマトの生産量が減り単価が上がりました。甘いトマトは消費者人気が高いので、小売業者は甘いトマトを求め、流通・卸売業者は日持ちがするトマトを望んでいるそうです。

物流の2024年問題もありますから、今後は甘く、耐暑性が高く、日持ちするトマトのニーズがさらに高まるかもしれません。

関連リンク

農林水産省「作況調査(野菜)

南石名誉教授のコメント

今回の分析から、「トマトもミニトマトも栽培方法や経営手法に大きな違いが無いので地域性にも差が無い」と思われる結果が明らかになりました。一般的には、何かの違いが明らかになる方が分析結果として分かり易いですが、違いがないことも有用な情報になることがあります。

参考のため、ChatGPT 3.5に、以下の質問をしてみました。大きく間違った内容も、目新しい内容も回答には含まれていないようです。

問:貴方はトマトの経営と栽培の専門家です。トマトとミニトマトの、経営上及び栽培上の違いについて教えてください。

ChatGPTの回答:

トマトとミニトマトは同じ植物の品種であり、栽培方法や経営上の基本的な原則は共通しています。ただし、いくつかの点で異なる要素が存在します。以下に、トマトとミニトマトの経営と栽培の違いについていくつかのポイントを挙げてみましょう。

■サイズと収穫の速さ:トマトは通常、ミニトマトよりも大きく、収穫にはそれなりの時間がかかります。一方、ミニトマトは小型で、成熟が早いため、短期間で複数回の収穫が可能です。

■スペースの要件:トマトは一般的に大きく成長し、広いスペースが必要です。ミニトマトは小型でコンパクトなため、より狭いスペースでも栽培できます。これは都市部や小規模な農園での経営において重要な要素です。

■市場ニーズ:ミニトマトは、サラダやスナックとしての需要が高まっており、特に小売市場での需要があります。トマトは料理の基本的な材料であり、大型のトマトは食品処理産業向けにも利用されています。

■価格と市場競争:ミニトマトは通常、高付加価値の市場で取引されることがあります。そのため、価格は通常高めになることがあります。トマトはより一般的で大量に取引されるため、価格競争が激しくなる可能性があります。

■栽培技術:トマトとミニトマトの栽培技術は基本的には同じですが、ミニトマトの場合、成熟までの期間が短いため、より頻繁な管理が必要です。また、トマトと同じような支柱やサポートが必要ですが、ミニトマトの場合、植物の小型化に合わせて調整する必要があります。

これらは一般的な傾向であり、具体的な条件や市場によって異なる可能性があります。経営や栽培の際には、地域の気候、市場需要、資源の利用可能性などを考慮して計画を立てることが重要です。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。