農業利益創造研究所

インタビュー

2023年に次いで二回目の受賞!家族四人の絆でみかん畑を支える【農業王2025:木村農園】

「農業王2025」受賞者インタビュー 熊本県玉名市の圭佑さん、智佳さん

ソリマチ株式会社と農業利益創造研究所は、日本農業に無くてはならない個人事業農家を応援するために、優れた経営内容で持続可能な優良経営を実践している農業者を表彰する「農業王 アグリエーション・アワード 2025」を実施しました。

今年で四年目となる本アワードでは、約10万件の農業会計データと関わるソリマチ株式会社が、青色申告決算書をもとに経営の収益性・安全性を審査して、最終的に北海道から九州までの9ブロックから、普通作(米+麦・大豆)部門、野菜部門、果樹部門、畜産部門、花き部門の「農業王」を選出いたしました。

農業王には、収益性、安全性、経営力、地域貢献、持続可能性に優れた「SDGs農業賞」15名、収益性、安全性に優れた「優良経営賞」87名の二つの賞があります。

今回受賞したのは、果樹部門で「SDGs農業賞」を受賞した熊本県玉名市の木村 孝之さん。その息子さんの圭佑さんと、奥様の智佳さんからお話をお聞きし、その経営についてご紹介します。

2023年に次いで二回目の「農業王」受賞

熊本県玉名市天水町は古くからみかん栽培で知られる土地で、木村農園もこの地に根を下ろしたみかん農家の一つ。ほ場面積は5haで、収穫時期はパートさんを雇いますが、普段は家族4人でみかん畑を支えています。

木村農園は2023年にも「農業王」を受賞しており、今回は二度目の受賞です。品種は変わらず、温州みかん・パール柑・河内晩柑の3つの品種を栽培しています。

なお、前回の取材時に「「西南のひかり」という品種を試験的に栽培している」というお話をお伺いしましたが、現在も小さい規模のままだそうです。甘味が強くておいしいのですが、栽培にとても手がかかるので、年末にお歳暮用として売り切れる分のみを栽培している、とのことでした。

また、新しい取り組みとして、すだちやへべすの栽培を始めました。比較的単価が良くて安定していること、比較的皮が日焼けに強くて青いうちに収穫するので猛暑の影響を受けにくいことから、ほ場の空き場所に植える作目としてぴったりだと判断したからです。まだ規模は小さいそうですが、徐々に拡大して利益を出していきたい、と圭佑さんは語ります。

徹底したコスト削減で驚異の所得率

木村農園の所得率は、みかん農家の平均よりも二倍近いという驚異的な数字です。特に肥料費が安くなっています。木村農園では剪定した枝をチッパーで細かく砕いて、肥料として散布しているほか、肥料メーカーから直接購入しているため、費用を安く抑えられています。

ただし、さすがに価格高騰の影響は受けており、2023年時点と比べると購入価格が2割高くなってしまったそうです。「今使っているメーカーさんの肥料は、かんきつ用に調整された成分で効果に満足していますから、少し高くなっても変えたくないんですよね」と圭佑さんは語ります。

なお、木村農園の非常にユニークな取り組みの一つに、黒酢の散布があります。これは20年前から続けている取り組みで、食用の黒酢を栄養剤として散布することで全体的な品質向上につながるそうです。黒酢は値段が高いのでコストがかかりますが、その代わりに価格高騰の影響を受けなかったので、そちらは助かりました、とのことでした。

直接販売へのこだわり、お客様に喜んでもらうには?

木村農園ではHP経由でみかんの直接販売を行っていますが、今は意図的に販売量を減らしています。2023年は市場8.4割、直接販売1.6割、2024年は市場9.2割、直接販売0.8割と半減しています。それは猛暑の影響でした。

「いろんなお客様に食べてほしいと母も言いますし、うちはこれまで市場価格に少しだけ上乗せした値段で販売していたんです。でも、去年は市場価格が高騰してしまって、それより高い値段で売るのは難しかったんです。それに猛暑のせいで味のばらつきが生じていて、ますますお客様にお出しするのは申し訳ない、と思いました」

味のばらつきが少ないと判断した「西南のひかり」「パール柑」は直接販売を続けていますが、温州みかんは市場出荷に回しています。なお、木村農園はどの品を直接販売に回すかは、家族みんなで味見をして、「この木のみかんは美味しい」という確信を得たものだけを販売するそうです。

この味見は大変で、「もうみかんは食べたくない」と思うこともあるそうですが、やはりお客様に売る分は妥協できないそうです。味見を減らすために非破壊糖度計の導入を検討しているそうですが、「結局食べないと納得できない、と考えてしまうのでは?」とお尋ねすると、「確かに、そうかもしれません」とお二人は笑っていました。みかんの味には妥協したくない、というこだわりは、さすがの一言です。

また、今年になってから市場の紹介で、大手のデパートとの取引が始まりました。そちらもしっかり味見をしたものを出荷していて、一週間に一回ほど注文があるそうです。これも木村農園さんの高品質なみかんと、気配りの賜物でしょう。

家族四人でみかん園を未来へつないでいく

他にもコスト削減として、木村農園ではなるべく人を雇わないという点を意識し、収穫期以外の作業は全て家族四人で行っています。圭佑さんの奥様の智佳さんは、全くの農業未経験だったので、初めは驚きの連続だったと語ります。

「最初は本当に何もわからなくて、みかん畑って一か所しかないと思ってたんですよ(笑)。まさか移動しながら作業するとは思っていなくて。それに、場所によって品種が違う、というのもわかっていなくて、戸惑うことばかりでした」

智佳さんは現在子育てで忙しいので、農業に従事する時間は少なめです。でも、「お父さんたちが受け継いできたみかん園を受け継げるのは嬉しい。とてもやりがいがあります」と笑顔で語ってくれました。

現在、圭佑さんは実質的にほとんど事業を継いでいる状態で、会計なども圭佑さんが行っています。そのため、今回のインタビューにもお答えいただきました。ただ、実際の事業継承は様々な手続きがあって大変なので、時期を見ているそうです。

また将来を見据えて、木村農園ではほ場の集積に取り組んでいます。自宅の近くに条件の良い耕作放棄地があれば積極的に借りて、逆に自宅から遠くの土地は減らしていきたいと考えています。

「まだまだ父も母も元気ですけど、将来は考えなければ。うちは家族経営ですから、私と妻二人になった場合、経営を続けていくために規模を縮小するのか、手のかからない品種に変えるのか、それとも人を雇うのか、様々な選択肢を考えている最中です」

農業を始めたい方は大歓迎!

最後に、新規就農者への一言をお聞きしました。

「残念ながら、高齢化の影響でみかん農家は減っているんです。でも、みかんは単価も安定している作目ですし、みかん農家を始めたいという方には、私は歓迎の気持ちしかないですね。ようこそ!と思います。私は父のみかん畑を継いだから恵まれていましたが、新規就農の方も補助金制度などを使って、無理のない形で始めてほしいです」

他にも圭佑さんは農業の「良さ」として、自分が社長だからこそ働き方が自由だという点をあげます。確かに農作業は毎日忙しいのですが、上手くやりくりすれば、休みを作ることもできると実体験を元に語ります。

「うちは子供の保育園の行事には、家族四人で参加したりするんですよ。それは会社員だとなかなか難しいと思うので、そういう点が農家の良さですね。うちの周りでも耕作放棄地が増えているのですが、それはつまり土地があるということなので、チャンスですよ」

圭佑さんは、「農業を始めたい人は大歓迎」と笑顔で語ってくれました。木村農園は様々な素晴らしい工夫をこらしていますが、それ以上に家族の絆こそが優良経営の秘訣なのかもしれません。
農業王の受賞、おめでとうございます。

関連リンク

木村農園
農業利益創造研究所「黒酢パワーで美味しいみかん!消費者と繋がる農業【農業王 2023:木村農園】」
ソリマチ株式会社「「農業王2025」受賞者決定!」
ソリマチ株式会社「農業王SDGs」

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

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