農業利益創造研究所

インタビュー

「茂呂いちご農園」いちご王国・栃木でスカイベリーで収益アップ&効率化!

レジェンド農家 インタビュー「茂呂いちご農園(茂呂 雅徳さん)」

「農業は儲からない」なんて考えはもう古い!
農業だって、やり方次第で儲かるということを実践している農家が、「いちご王国」栃木県にいました。

栃木県佐野市でいちごをビニールハウス栽培している「茂呂雅徳」(もろまさのり)さんの経営をご紹介します。

儲かる秘密1:新品種のスカイベリーで収益がぐんとアップ!

茂呂さんがいちご栽培を始めたのは21歳の時。当時、両親は米と麦を栽培していましたが、別の作目を増やすことを検討していました。そこで茂呂さんは栃木の名産「いちご」と「トマト」のいずれかを手掛けたい、と考えました。

「私は農大でトマト栽培は経験していたんです。トマトはコストがかかるし難しい、と痛感していたので、いちごを選びました」と語る茂呂さん。初期費用はビニールハウスだけでも1,200万円で、自己資金と農協の農業近代化資金で調達しました。未経験から始めたいちご栽培は悪戦苦闘の連続で、ようやく安定が見えてきたのは、始めてから10年目だそうです。

いちごのビニールハウス栽培は、一年で最も需要が高まるクリスマスシーズンに合わせて収穫をスタートし、五月頃までが収穫の季節(そのため、インタビューにお伺いした七月は写真のように苗の生育の最中です)。

茂呂さんは、初めは栃木の代表的な品種・とちおとめを栽培していましたが、六年前に新品種のスカイベリーへ切り替えました。スカイベリーに変えたことで省力化が進み、収益もアップしたそうです。具体的には、とちおとめでは10a当たり500万円程度の収益ですが、スカイベリーでは10a当たり700万円程度。茂呂さんは30aの規模を作付けしているので、いちごの収益は全体で2,000~2,500万円だそうです。

「スカイベリーはとちおとめより大粒なので収穫が楽なんです。パックに詰める時も、大きなスカイベリーは一段詰めなので、二段詰めのとちおとめに比べて簡単です。収穫とパック詰めという手がかかる工程が大幅に省力化できて、順調な日は午前中で作業が終わります」と語る茂呂さん。

いいことづくめに思えるスカイベリーですが、難点はまだら果(果実の一部が着色不良で白いままになること)が多く、とちおとめに比べて品質が安定しないことだそうです。新しい品種なので、まだ改良の余地があるのかもしれません。

ちなみに、栃木県で2018年に開発されたさらなる新品種「とちあいか」の苗を、茂呂さんは新しく注文したそうです。「スカイベリー以上に収益性が良いかどうかわかりませんが、まずは自分で栽培してみないと」と語る茂呂さん。レジェンド農家にふさわしく、現状に満足しないで上を目指すチャレンジ精神の持ち主です。

儲かる秘密2:人員を積極的に雇用して効率的な経営を

「人を雇わない」ことで費用を抑える農家が多い中、茂呂さんは意外にも人を雇うことに意欲的です。通年雇用のパートさんを3名抱えていて、シフトで2名ずつ出勤。いずれも40代の専業主婦で、午前中だけ働いてもらっているそうです。

「去年までは、収穫時だけパートさんを雇っていました。でも、それだと毎年新しい人を雇用することになりますし、いちごのパック詰めはとても難しくて、未経験の方に教えるのは大変なんです。いっそ通年雇用にして、ノウハウを覚えてベテランになっていただいた方が、お互いに楽だと思ったんです」

インタビューにお伺いした七月は、ちょうど収穫が終わった農閑期。農閑期も人を雇い続けるのは勇気が要りませんか?と突っ込んだ質問をしてみました。

「利益を多くしてもその分税金で取られてしまいますし、それなら人を雇って自分や家族が楽になる方が良いと思ったんです。今はパートさんにお願いしているのはパック詰めだけですが、両親も高齢で将来的に作業が難しくなってきますから、ゆくゆくはパートさんに収穫もお願いしたいと考えています」とのことでした。

将来的には規模を拡大し、直販の販売チャネル開拓にも挑み、人員を増やして六次産業化や法人化も行っていきたいという思いがあります、と語る茂呂さんは、農業をしっかり「経営」として捉えているようです。

効率と高品質の両方をどう実現する?

高さ1m程度のベンチ上で、いちごを栽培する「高設栽培」が近年人気です。かがまなくて良いので体に負担がかからず、効率よく作業ができるというメリットがあります。

茂呂さんも農地全体の3分の1を高設栽培にしています。効率化のために高設栽培に切り替えていきたい、という思いもあるそうですが、一方でリスクも感じています。

「高設栽培の一番のデメリットは初期投資がかかることです。土耕栽培(土で直接栽培する方法)よりランニングコストもかかりますし、品質が劣りがちなことも事実です。特にスカイベリーはまだら果が出やすいので、品質を担保できないかもと思うと、二の足を踏んでしまいます。今のように両方を手掛けるのが、リスクヘッジとしてはちょうどよいかもしれません」

他にも、高品質化のために気を付けていることはありますか?と尋ねると、ビニールハウス一棟ごとに水の量を変えて品質をそろえるようにしている、湿度は微調整を自分の手で行う、などを上げていました。徹底して効率化を重視している茂呂さんですが、高品質化のためには手をかける時もあるようです。

茂呂さんは現状に満足しないチャレンジ精神を持っている非常に優秀な農業経営者ですが、インタビューの途中で、若い方は自分よりもっと意欲があって熱心ですよ、と謙遜していらっしゃいました。全てが自動化された近代的なビニールハウスでいちご栽培を手掛け、販路拡大にも熱心な30代の農業者が近所にいらっしゃるそうです。茂呂さんを初め、そのような農業利益創造者がいるのですから、栃木のいちごの未来は明るいと言えるでしょう。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。