農業利益創造研究所

インタビュー

農機具導入の新しい選択肢による経営の効率化「JA三井リース」

農業機械は現代農業には欠かすことができず大変便利ですが、高価なため、場合によっては経営を圧迫する危険性もあります。

今回は、農業機械のリース事業を営むJA三井リース株式会社 食農ビジネス推進部様へのインタビューを通じて、農機具を購入ではなくリースで導入することにより、農業経営の効率化にどのような効果があるのかを探っていきたいと思います。

JA三井リース株式会社は、JAグループと三井グループを基盤とし、農林水産業の生産・流通・販売ネットワーク、金融ネットワーク、グローバルな事業ネットワークを有する総合リース会社です。その中で農業と大きく関係しているのが、農業機械のリース事業です。

今までの農家は、JAや金融機関から資金を借入れして農機具を購入し、利息を払いながら元金返済するケースが一般的でしたが、ここ5年間で、農機具リースの活用者が1.7倍に増えているそうです。なぜリースが増えているのか詳しく教えていただきました。

稲作農家の固定資産額について

リースについてお聞きする前に、ソリマチ農業簿記ユーザーの稲作単一経営をしている個人農家3,000件のデータを集計し、収入金額規模階層別の建物や農機具の固定資産額と収入金額に対する減価償却費の比率のグラフを見ていただきました。

「なるほど、農業簿記のデータを集計してこのような分析ができるのですね。経営規模が大きくなるとスケールメリットにより減価償却費が下がり、農業所得が増えていくことがよくわかります。よく見ると、所有している固定資産額は、収入金額のおおよそ4分の3だということがわかりますから、購入するための一時資金の調達が大変です。規模を拡大するうえで設備投資は必須ですので、リースという農機具導入の選択肢をぜひご紹介させてください。」

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リースとは何か?

農機具は価格が高いので、一旦購入すると耐用年数以上に長期間使用するケースが多く、長く使うことは悪いことではないのですが、逆にメンテナンスや修理等の維持コストが増加していくのだそうです。
そういった中で、近年はスマート農業が行える新しい農機具が続々と発売され、作業効率の高い農機具を、故障する前に定期的に入れ替えられるリースを活用する方法が注目されています。

リースとはどのような仕組みなのか、JA三井リースさんにお聞きしますと、以下のような説明でした。
(1)農家の皆様がご使用になりたい農機具等を、JA三井リースが代わって購入します。
(2)JA三井リースが購入した農機具等を、農家の皆さんへお貸しします。
(3)貸している期間やリースの種類に応じて、リース料をJA三井リースにお支払いいただきます。

農機具だけでなく、ハウス、トラック、ドローンなども対象になるので、利用の幅は非常に広がっています。

リースのメリット、デメリット

リースの場合と購入した場合との違いは以下の表の通りです。

「リースは、初期費用がゼロで最新農機具を使用でき、リース期間が終わればまた最新農機具を更新できる点と、機械が故障する前に入れ替えるので修繕費がさほどかからないことがメリットですね。また、リース料金は(※)全額毎年費用に計上でき、固定資産税や保険などの支払いが省略できるのも非常に楽です。」

ただ、良いことばかりでは無く、JAや金融機関から資金を借入れるときと同様に金利手数料がかかるので、一括購入した場合の金額よりリース金額の合計が若干上回る料金となるそうです。また、リースを途中解約する場合には基本的に未払いのリース料の一括精算が必要となるので、要らなくなったら農機具を返せばお終いという訳ではないようです。

しかし、リース会社が生産者の代わりに農機具を購入し所有者となって農家に貸し出す仕組みですから、固定資産の税金や保険などはリース会社が払ってくれます。そういった支払金額も含めると実質的には高くはないので、リースを検討して欲しい、とおっしゃっていました。

(※)金融商品取引法の適用会社もしくは会計監査人設置会社(子会社および関連会社を含む)に該当しない「中小企業の会計に関する指針」の適用会社については、賃貸借処理が可能です。

リース購入(一括払い、分割払い)
所有者リース会社農家
使用期間耐用年数(リース期間で調整可)除却するまで
特徴 【メリット】
・初期投資ゼロ
・最新設備が導入しやすい
・全額費用計上可
・事務処理のアウトソース可
・割安で保証が広い動産総合保険
(スケールメリットあり)
 
【デメリット】
・基本的に中途解約ができない
【メリット】
・一括払いの場合は金利なし
 
【デメリット】
・資金調達が大変
・納税/メンテナンスは自己負担
・資産計上/減価償却費が必要
・割高で保証が狭い動産総合保険
(スケールメリットなし)

リース料金の内訳

リース料金の具体的な内訳は以下のようになっています。

リース料金=農機具本体価格+金利+税金+保険料

リース料金の年間支払い額は、農機具本体価格を年数で割った額にリース会社への金利や手数料がプラスされるので、「リース=高い」というイメージを持ってしまいますが、実際は手数料の中に税金や保険料が含まれています。リースはトータル的に計算すると、資金を借入れして購入した場合とほとんど変わらない額になるそうです。

他にもこのようなケースで活用できる

他にもリースの有効活用の事例は、様々なものがあるそうです。具体的にお聞きしました。

「たとえばローカルシェアリースという契約形態があります。これは複数人の農家さんが、リース農機具を共同利用するケースです。例えば草刈り機のような緊急では無く使用頻度も低いが、あると便利なものは共同リースにすると一人あたりの導入コストを抑えることができます。」

「また、後継者がいない農家さんが第三者に事業継承する場合に、いったんJA三井リースが農機査定を行って購入し、それを後継者にリースで提供する、という方法もあります。この方法を使えば、第三者後継者は農機具購入資金を最初に用意することなくスムースに継承できますので、これは現在皆様から注目されています。」

他に、補助金をもらって機械・施設を導入する際も、購入金額から補助金を引いた残りをリース契約するケースもありますし、経営基盤強化準備金の積み立てを使って機械を購入して圧縮記帳する場合も、残りをリース契約できるそうです。

まとめ

農業機械はお金を借りて購入するものと思っていましたが、複数人による共同シェアリースは経費削減に大きく貢献します。個人によるリースは経費削減というよりは、(1)故障リスクの回避、(2)定期的な最新農機具更新による生産の効率化、(3)事務処理の簡素化、という点で経営全体の効率化に有効であることがわかりました。
リースは農機具導入の新しい選択肢として今後の農業経営に役立つのではないか、とそう感じさせられるインタビューでした。農機具のリースについて、もっと詳しいことを知りたい場合は、以下のリンクをご覧ください。

・JA三井リース/オンライン勉強会「農業経営に役立つかもしれない無料リースセミナー
・JA三井リース/農業経営のヒントを見つけるツール 「農LOUPE

リンク

JA三井リース株式会社

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。