農業利益創造研究所

作目

実は高所得率果樹であるウメ経営を見てみましょう

個人情報を除いた2023年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家11,655人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

皆さん、「ご飯に梅干し」を食べてますか? まさに日本人ならではの食べ方です。酸っぱい梅干しが普通ですが、最近は塩分控えめではちみつを入れた甘い梅干しも人気です。

実は、2023年の農業簿記ユーザーの果樹経営を分析し、高所得率の作目を調べたら、第1位はぶどう(41.2%)、第2位はスモモ(39.4%)、第3位がウメ(39.2%)でした。

つまり、ウメは高所得率果樹なのです。このコラムでは2023年のウメ経営30件の経営を分析してみたいと思います。

ウメは高所得率果樹である

ウメと言えば和歌山県が有名(収穫量は全国の58%)ですが、簿記データのウメ農家30件のうち23件が和歌山県でした。

ウメ経営と果樹経営全体を下の表のように比較してみました。

収入金額はウメ経営が少し高く、世帯農業所得(控除前農業所得+専従者給与)は636万円、世帯農業所得率は39.5%であり、果樹経営全体より良い数字です。借入金も少ないので安全性も高く、ウメは儲かり果実と言えます。

ウメ経営と果樹経営の比較
ウメ経営
平均
果樹経営
平均
経営体数301,947
収入金額16,11114,977
うち販売金額13,90113,924
専従者 人数1.51.2
世帯農業所得6,3655,215
 世帯農業所得率39.5%34.8%
建物構築物 資産額5,8774,568
農機具 資産額3,1302,366
借入金 残高1,7792,721
 借入金÷収入金額 率11.0%18.2%

所得率が高い理由は何か、と各科目の費用額を調べたところ、費用構成はほぼ同じですが、ただ一つ「荷造運賃手数料」が果樹全体より約1/3でした。

ウメはそのまま食べずに必ず何らかの加工をする果実なので、大量に収穫して手間をかけずに出荷できるからなのだと思われます。

高所得率なウメ経営を探る

下の散布図は30件のウメ経営を、横軸に収入金額、縦軸に世帯農業所得額でプロットしたものです。

経営規模が大きくなるときれいに右肩上がりで所得も増えていきます。しかし、収入金額が3,500万円になると所得が1,700万円で上げ止まっています

今度は、横軸に収入金額、縦軸に世帯農業所得率の散布図を作成してみると、収入金額が2,000~2,500万円あたりが高所得率な経営だということがわかりました。

そこで、①高所得率経営、②大規模経営、③低所得率経営、と3パターンに分けてそれぞれの経営を比較してみましょう。

3パターンの経営を下の表のように比較してみました。

3パターンの経営比較
①高所得率経営②大規模経営③低所得率経営
経営体数545
平均年齢55.852.360.6
収入金額21,36340,89015,770
うち販売金額16,67139,33011,804
ウメ主幹比率96.1%100.0%89.0%
専従者 人数2.02.52.0
世帯農業所得12,42917,3844,165
 世帯農業所得率58.2%42.5%26.4%
建物構築物 資産額3,11911,97816,343
農機具 資産額3,9874,3387,917
借入金 残高1,3873,5354,475
 借入金÷収入金額 率6.5%8.6%28.4%

※金額の単位は千円。

農業所得は②大規模経営が1,738万円と高額ですが、①高所得率経営は②大規模経営より経営規模が約半分なのに所得1,242万円はりっぱです。

②高所得率経営は、固定資産や借入金も少なく安全性も高いので、収入金額2,100万円程度の経営を目指すのも良いと思われます。

ウメの主幹比率を見ると、②大規模経営はウメのみで複合経営を行っていません。逆に③低所得率経営は複合経営を行っており効率性を下げています。

3パターンの経営のコストを分析するために、販売金額を100とした費用比率をグラフにしてみました。

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①高所得率の費用はバランスがとれているように思えますが、②大規模経営は雇人費が非常に高く、③低所得率経営は減価償却費が高いです

ウメは6月ころに集中的に収穫しなければならないので、大規模経営は今後の労働力不足傾向の中で人の工面が大変になってくると予想できます。

ウメの月別販売

ウメの収穫は6月ころですが、まだ果実が青い状態で収穫する場合と、完熟して落下したウメを収穫する場合の2通りあります。6月といえば梅雨(つゆ)の時期ですが、「梅の雨」とはよく言ったものです。

① 高所得率経営と②大規模経営の月別販売額をグラフにしてみました。

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②大規模経営は6月に収穫したらすぐ集中的に出荷していますが、①高所得率経営は11月も高くなっていてバラバラです。

自分でウメを干したり加工したりして出荷調整しているようです。ここに何か高所得率の秘訣があるのかもしれません。

まとめ

農林水産省の統計資料によると、ウメの栽培面積は年々減少しています。

また、2024年は高温の影響で開花前の気温が高かったことから開花が早まり、受精不良となって着果数が減少したことにより前年比約半分の収穫量でした。

ウメ栽培の課題は、天候の影響があってもリスクを減らすため複数の栽培品種にすることと、収穫期に労働力を確保できるか、と言われています。

ウメは梅干しや梅酒、ジャムなどの原料として人気が高いですし、市場は海外にも広がっています。総務省の家計調査によると、2023年の梅干しの年間支出額は1,349円だそうです。
ご飯に梅干し! いいですねぇ~。 ウメをもっと食べましょう!

関連リンク

農林水産省「新規就農者調査」

南石名誉教授のコメント

今回の分析では、ウメ経営を対象に世帯農業所得金額や所得率などの経営成果指標と経営規模(収入金額)の関係を明らかにしました。どの程度の経営規模が適正かという問題は、農業経営学では適正規模論として古くから論じられてきましたが、現代でも重要なテーマです。

適正の程度を計る指標は、経営目標や研究目的によっても変わりますが、今回の分析では、農家の関心が高い世帯農業所得金額や所得率に注目しています。収入金額のうち売上高はウメの栽培面積、面積あたり収量、品質、販売価格等によって決まります。面積拡大、面積あたり収量の増加、品質向上やマークによる販売価格向上などにより、収入金額の増加が実現できます。

個々のウメ経営の戦略や目標、技術水準、市場環境、気候土壌等の立地条件によって、どの程度の栽培面積、収量、販売価格を目指すのか、実現できるのかが変わってきます。その結果として、今回の分析で明らかになった高所得率経営、大規模経営、低所得率経営といった経営の類型に分かれると考えられます。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。