
個人情報を除いた2025年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家20,292人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。
今回は、果樹、花き、工芸作物の主要品目の経営を、2025年のデータを含めた経営ベクトルで見てみます。
まずは前年からの経営体の推移です。全般的に増加していますが、リンゴ経営は青森県のデータが増えたこともあり、特に多くなりました。
| 第一主幹品目 | 2024年 | 2025年 | 増減比 |
|---|---|---|---|
| カンキツ類 | 781 | 958 | 123% |
| ブドウ | 723 | 922 | 128% |
| リンゴ | 418 | 775 | 185% |
| 日本ナシ | 347 | 404 | 116% |
| 茶 | 271 | 311 | 115% |
| 桃 | 159 | 206 | 130% |
| タバコ | 89 | 115 | 129% |
| キク | 88 | 99 | 113% |
| 柿 | 74 | 74 | 100% |
| キウイ | 67 | 60 | 90% |
| 梅 | 43 | 50 | 116% |
| サクランボ | 37 | 37 | 100% |
| スモモ | 25 | 36 | 144% |
| バラ | 28 | 34 | 121% |
| リンドウ | 31 | 31 | 100% |
経営ベクトル
果樹、花き、工芸作物の3類型の経営ベクトルは以下の通りです。経営ベクトルは横軸が収入金額合計(規模)で、縦軸が所得率(効率)となり、矢印の元が2024年で先が2025年となります。各品目経営の値は中央値になっています。
3類型総合の中央値は、規模が13,120千円、効率が30.7%で昨年からほとんど変化はありません。しかし経営品目ごとにみると、大きな変化が見られます。中でもお茶経営は、規模・効率ともに右上に大きく動き、世帯農業所得が3,003千円から8,507千円に大きく伸びました。
逆にスモモ経営は、規模・効率ともに大きく下げ、4,871千円あった世帯農業所得は、2025年には1,455千円になってしまい、この中では規模だけでなく所得金額も最低となりました。
最も規模の大きいバラ経営は、所得率を落とし世帯農業所得は3,344千円にとどまりました。
効率が最も高いのは梅経営で、昨年も高水準でしたが2025年はさらに大きく伸ばし、所得も4,928千円から7,249千円となりました。米の消費と梅の消費は比例すると聞いたことがありますが、もしかしたら近年の米価高騰と関連しているのかもしれません。機会があったら確認してみたいと思います。
経営件数が最も多いカンキツ類経営は、若干所得を上げ4,077千円となり、次いで件数が多いブドウ経営は、規模も効率も落ち所得金額は3,691千円となりました。
花きで最も経営件数が多いキク経営も左下に落ちて、所得金額は2,740千円となりました。何があったのか気になるところです。

変動係数(CV)ベクトル
次は変動係数を見てみます。変動係数とは、データのバラツキを相対的に示した値です。同じ中央値でも、そのグループの値がどう分布しているかで解釈も変わってきます。高ければその集団のデータにはバラツキが大きく、低ければバラツキが小さいことになります。グラフの横軸と縦軸は経営ベクトルと同じ収入金額合計(規模)と世帯農業所得率(効率)です。
さて内容を見てみますと、果樹、花き、工芸作物の3類型総合は、右上に伸びており、規模や効率でのバラツキが大きくなったことを示しています。つまり経営ベクトル自体は変化が少なかったものの、各経営体は規模と効率両面で大きく差が開いたということです。
品目別にみると大きく変動したのはキク経営とバラ経営で、世帯農業所得率のバラツキが大きくなりました。経営ベクトルを見るとキク経営とバラ経営はともに所得率が低下しているので、元々所得率が低い経営体が2025年にさらに低くなって、バラツキを大きくしたと考えられます。
規模の変動係数が大きく、所得率の変動係数が最も小さいお茶経営は、2025年は大きな変化が見られません。しかし経営ベクトルでは右上に大きく伸びていますので、これはお茶経営全般的な変化と見ることができます。つまり規模の格差はあるものの、その構造のままお茶経営全体が規模・効率ともに改善されたということです。市場価格全般が良くなったのでしょうか、いずれにしてもなかなか珍しいケースです。
スモモ経営の変動係数は右上に伸びています。ただし経営ベクトルは真逆の左下に伸びていますので、経営規模が小さく所得率が低い経営体がさらにその傾向を強めたと言えます。データ上の経営件数は多くありませんが、経営品目として非常に厳しい状況にあるのかもしれません。
リンゴ経営は所得率の変動係数が大きくなりました。リンゴ経営は2025年に経営データも増加したことから、経営ベクトルで所得率が上がっているのは、効率がより高い経営体が多く加わったからではないかと考えられます。

複合経営の状況
最後に複合経営の状況を見てみます。
これは、縦軸に第一主幹比率(第一主幹品販売金額÷総販売金額)、横軸に販売月数(年間販売高の5%以上ある月数)をとった図です。これを平均で4等分して、グループ分けしました。各経営品目の値は平均値です。
この結果、左下の「主幹品分散・短期出荷型」が7品目と最も多くなりました。「主幹集中・短期出荷型」が3品目ですから15品目中10品目が短期出荷型ということです。また、「主幹品集中・長期出荷型」のうち3品目は区分ギリギリで、明確に主幹品に集中した長期出荷型はバラ経営くらいです。
つまりバラ経営やキク経営が全体を右(長期出荷型)に引っ張っているものの、今回の3類型の平均は4.3か月であり、全体的には短期出荷の傾向が強いということです。このことは、野菜経営の平均5.9か月(2025年の経営のベクトルから野菜経営を概観する)と比べても明確で、1年一作が基本の果樹経営等の特徴が大きく出た結果だと思われます。
主幹品目の集中が高いベスト5の品目は、経営件数のベスト5と同じです(カンキツ類経営、お茶経営、ブドウ経営、リンゴ経営、日本ナシ経営)。またすべてが3類型総合の所得率を上回り、ブドウ経営以外は所得金額も上回っています。変動係数も、2025年に経営体数が大きく増加したリンゴ経営以外、大きな動きはありません。
これらの品目は国内のメジャー品目と言えます。したがってもしかすると、比較的需要が多いことなどから、品目を集中することができ、集中することで効率が良くなり、それが所得額を上げ、経営体を多く残すことにつながっている、などの仮説が導けるかもしれません。そしてリンゴ経営を除けば変動係数にも大きな変化はなく、これらメジャー品目の経営は、主幹品目に集中した経営構造で比較的安定している可能性もあります。
逆に、スモモ経営やキウイ経営などは、主幹品目分散傾向が強く経営状況も好ましくありません。経営が好ましくないから分散傾向なのか、分散傾向だから所得金額が上がりきらないのかの因果関係は分かりませんが、一つの傾向として押さえておきたいところです。こうした傾向が続けば、今後、品目構成など経営構造にも何らかの変化が現れてくるかもしれません。
バラ経営は、バラ単品目で通年出荷に近い経営をやっていると思われます。したがって収入金額は大きくなりますが、燃油の高騰などから所得率を大きく落としているように思われます。つまり大規模・長期出荷を支える施設型の経営構造が、燃油高騰時にはかえって負担になっている可能性があるということです。施設や技術が特化しているので、なかなか経営構造を変化させにくいのかもしれません。

以上、今回は、果樹、花き、工芸作物の主要品目の経営概況を見てきました。様々な特徴をもつ経営類型を一つの図で表すことの難しさはありましたが、その反面、相対的な傾向がつかみやすくなるので、その後の詳細な分析の方向性を掴みやすくなります。
今後はこれを出発点に、個々の品目などの傾向を分析していきたいと思います。

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