農業利益創造研究所

農業経営

お待たせしました! 2022年農業経営統計データの概要

個人情報を除いた2022年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家11,500人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

2023年3月15日に確定申告が終了し、新たに2022年の青色申告個人事業の農業簿記データが集まりました。今後、農業利益創造研究所では、この最新データを活用したコラムを掲載いたします。

今回のコラムでは、2022年の会計データの全体像を分析しました。2021年の会計データと比較しながら、農業経営動向の概要をお伝えいたします。

2022年データの経営体数

2021年の農業簿記データの経営体数は13,300件でしたが、2022年は11,500件と減少しています。これは、経営データの金額に矛盾がある経営体をいくつか除外したためで、データの総数が減ってもむしろ精度は高まっています。

まず、収入金額規模別の経営体数は以下のグラフのようになりました。

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話題になっているインボイス制度ですが、対応するかどうか検討しなければならない収入金額1,000万円未満の免税事業者は、全体の30%です。2020年の農林業センサスによると1,000万円未満の経営体は全体の79%ですので、農業簿記ユーザーに小規模農家は少ないことがわかります。

世帯農業所得別の経営体数

次に、世帯農業所得の分布を見てみましょう。世帯農業所得は、「青色申告特別控除前の農業所得+専従者給与」のことです。個人事業の場合、事業主がある程度の範囲内で専従者給与の額を決めることができますので、専従者給与を含めた世帯全体としての所得がどうなのか、ということが重要です。

世帯農業所得別の経営体数をグラフにしてみると、300~500万円の階層が多くなっており、世帯農業所得の全国平均を集計すると554万円でした。

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一般のサラリーマンを調査した国税庁の民間給与実態調査統計では、令和3年(2021年)の平均年収は443万円ですので、農業簿記ユーザーの方が高いことがわかります。また、世帯所得1,000万円以上の経営体は全体の17%も存在し、農業でもやり方次第では高所得経営を行えるのです。

営農類型ごとの経営概況

次に、営農類型ごとの農産物販売金額と雑収入(補助金等)を、2021年と2022年の比較でグラフにしてみました。棒グラフの左側が2021年、右側が2022年の数値を表しています。

2022年はまだコロナウイルスが継続している年でしたが、意外と販売金額は減っておらず、むしろ少し増えています。棒グラフの左側が2020年、右側が2021年の数値を表しています。

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差異をわかりやすくするため、2021年から2022年にどれくらいの増減があったのかをグラフにしてみました。

農産物販売金額は全体的に増加している一方、雑収入は野菜や花き、工芸作物で減少しています。畜産は飼料費が高騰して大変な状況でしたが、意外にも販売金額は増えているのには驚きです。こちらも棒グラフの左側が2020年、右側が2021年の数値を表しています。

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営農類型別の農業所得と専従者給与の2021年と2022年の比較をグラフにすると、色んな傾向が見えてきます。こちらも棒グラフの左側が2020年、右側が2021年の数値を表しています。

2022年は肥料などの資材や燃料、飼料が高騰し経営を圧迫しました。稲作は肥料をたくさん使いますので肥料費が増えているはずなのに所得は増えています、これはなぜなのか?

酪農と肉用牛はかなり所得が減少しています。飼料費の影響と思われますが、本当にそうなのか? 花きと工芸作物はなぜ所得が減ったのか?

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これらについては、いずれ別のコラムにて詳しく分析してみたいと思います。今回はあくまでもデータの概要をご報告するにとどめておきます。

まとめ

農林水産省では、「食料・農業・農村基本法」という今後の日本農業の方向性を検討中です。食料安全保障や自給率向上、持続可能な農業、多様な経営体などが議論されています。

今後の方向性を検討したり、農業現場での営農指導を行うえでデータを参考にすることは重要ですので、当研究所にて引き続き様々な分析を公表していきます。農家及び農業関係者の皆様に、少しでも役立てていただけたら幸いです。

2022年の分析データについては、当サイトにて統計表として今後掲載予定です。無料登録の会員限定コンテンツですので、ご興味をお持ちの方はご登録のほどよろしくお願いいたします。

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関連リンク

2020年農林業センサス
国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査

南石名誉教授のコメント

一般に、個人経営は、法人経営に比較して、経営規模が小さいと言われています。しかし、個人経営を対象とした今回の分析結果をみると、売上高1億円以上が150経営(調査対象11,500経営の1.3%)、5,000万円以上が1,64経営(9.3%)も存在していることが明らかなりました。

世帯農業所得をみると、2,000万円以上が367経営(3.2%)、1,000万円以上が1,933経営(16.8%)も存在しています。

これらの結果は、経営努力と工夫によって、個人経営の農業経営が十分に魅力的な職業になることを示しているように感じます。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。