
ソリマチの農業簿記ユーザー(稲作専業 優良経営 農家44人)にインタビューした内容を統計分析しました。
今後の日本農業において後継者問題は大きい
2020年の農業センサスのデータによると、個人経営体は103万7000で、5年前に比べ30万3000(22.6%)減少しており、65歳以上の基幹的農業従事者が69.8%も占めていることからも今後も経営体が減少し国内の農業生産が賄えきれるのか、食料自給率を維持できるのか、大きな問題となっていくことが予想できます。
この問題を解決するには後継者を増やすことであり、後継者が増えるには2つの方法があります。
1つは新規就農であり、よく脱サラして農業を始めるという人もいますが、農業用の機械を購入するにしても相当な初期費用が必要になり簡単ではありません。
2つ目はもともと農業をやっている父の後を継ぐことです。この後継者を増やすことが一番有効なのですが農業は「儲からない、きつい、休めない、結婚できない」など、跡を継ぐ人が少なくなっています。
実際の農家にリサーチしてみました
ソリマチの農業簿記ユーザーの中の優良経営を行っている稲作専業農家44人に後継者がいるかどうか聞いてみました。
- 後継者がいる
- 20人
- 後継者がいない
- 20人
- まだ不明
- 4人
※44人の平均値:売上高3700万円 / 稲作作付面積28ha / 控除前所得900万円
という結果となりました。優良経営の皆さんなのに半分しか後継者がいないという現実です。
大学の時に親元を離れてしまいそのままサラリーマンになった、娘しかいない、など理由は色々ですが、利益が出ていて良い経営を行っていれば息子は就農してくれる、というだけでは無いようです。
後継者がいる農家はどういう経営をしているのか?
稲作専業農家44人に、経営ビジョンは何ですか?と質問したところ、「現状維持」「利益増大」など様々な回答でしたが、面白い結果が出ました。
- 現状維持でよい
- 後継者 有りの人は5人
- 利益増大したい
- 後継者 有りの人は6人
- 経営継承が大事
- 後継者 有りの人は12人
- 地域への貢献
- 後継者 有りの人は12人
つまり、経営継承を意識しながら経営を行っている経営者には後継者が育ち、地域貢献を意識している経営者は世の中のためになることをやっている親の背中を見て子供は親の仕事を尊敬する、ということなのではなないかと思います。
一般企業では会社を成長・継続するために重要なのは「人財」だとよく言われます。そのために優秀な人を採用し、社内教育、外部研修、など徹底的に行います。農業の後継者の場合は人材の採用はできませんから、息子(娘)に対して如何に農業がすばらしいか、おもしろいか、小さいときから興味を持たせ、親が子供の人材教育を照れずにこまめに行っていくことが一番大事なのかもしれません。
南石教授のコメント
「経営ビジョン」が経営の発展や人材育成に影響するというのは、農業を含むあらゆる産業に共通る法則のようなものでしょう。
「現状維持でよい」と考えている経営や、「利益増大」しか語らない経営では、後継者が育たないのも、納得がいきます。
お金や利益は、経営を継続する上では、もちろん大切でですが、それだけでは、人は夢が持てないということでしょうね。
特に、若いときに力を発揮するには夢がとても重要です。経営ビジョンの役割が大きいことが再確認される結果で、大変興味深いです。