
農業利益創造研究所では、農業に携わる方からご意見をお聞きするアンケートを定期的に実施しています。2021年10月の1か月間の質問は、「農業簿記ソフトは誰が入力してますか?」でした。ご回答いただいた方々には、改めてお礼を申し上げます。
あっという間に11月になり今年も残りわずかです。農産物の収穫が一区切りついたら今年の売上と経費を整理して来年の確定申告に備えなければなりません。申告の手間を軽減してくれるのが農業簿記ソフトですね。
青色申告を行っている農業者の数は?
2020年農林業センサスの「青色申告を行っている経営体数」の統計結果によると、全国約102万の農業経営体のなかで青色申告を行っている農家は38万(37%)しかいません。さらに青色申告を行っている農家の中で複式簿記を行っているのは54%の20万です。
さらに全国で農業簿記ソフトを利用している農家はどれくらいなのか、『農業簿記』メーカーのソリマチに聞いたところ、ソリマチ以外の簿記ソフトも含めて全国で5万農家くらいではないか、とのことでした。全国の農家数に比べるととても少ないです。
※参考:農林水産省「2020年農林業センサス結果の概要(確定値)(令和2年2月1日現在)」
一般企業では経理を会計事務所に委託し、税理士から申告してもらうことが多いですが、農家は委託する経費を節減するため、電卓計算か、エクセル計算か、農業簿記ソフトを使うか、など事業主が自分自身で経理申告するケースがほとんどです。とはいえ、農業簿記ソフトを使いこなすには、簿記の知識とパソコン操作の知識が必要です。
簿記ソフトを入力している人は誰なのか?
10月のアンケートの結果は以下のようになりました。
事業主である自分自身で入力する | 68.2 |
---|---|
事業主の 奥さん が入力する | 9.1 |
事業主の お父さん が入力する | 9.1 |
事業主の お母さん が入力する | 0 |
事業主の 子供 が入力する | 9.1 |
事業主の 子供の 奥さん が入力する | 0 |
外部の人に任せている | 4.6 |
予想通り事業主が入力するケースが最も多く、事業主の奥さん、お父さん、子供、はそれぞれ9%程度という結果になりました。事業主である自分が入力してやってみよう、ということなのではないかと思います。
女性活躍の時代へ
最近は「ダイバーシティ(多様性)」という考え方が盛んになってきています。何でもかんでも事業主がやるのではなく、女性や若い人など周りの人たちの人それぞれの特性を生かして、役割を与え、相乗効果を発揮することで全体がうまくいく、という考え方です。
女性の活躍が叫ばれて久しいですが、近年では農業界でもその動きが活発になっています。
農林水産省では「農業女子プロジェクト」(2013年設立)を行っており、農業内外の多様な企業・教育機関等と連携して、農業女子の知恵を生かした新たな商品・サービスの開発、未来の農業女子をはぐくむ活動、情報発信等を行い、社会全体での女性農業者の存在感を高める活動をしています。
働く女性が増えた今、農産物の販売においても消費者である女性目線をなおざりにはできません。生産、加工、販売に女性目線の工夫や発想力を取り入れることで、消費者に向けてより魅力的なアプローチができるかもしれません。
また、農業女子が増加した一因に、ICT化による物理的な農作業負担の軽減が挙げられます。肉体的な負担が少ないながら、経営においては非常に重要なパソコン農業簿記を女性に任せるのはいかがでしょう。女性目線で新たな経営課題や解決方法が見つかるかもしれません。
これは若い人にも言えます。長男が農業を継いだとしてもなかなかお父さんに意見することは容易では無いですが、簿記を通じて経営についてお父さんと議論することはとても良いことだと思います。
ソリマチでは、新規就農者や女性農業者の活躍を支援する「農業女子応援キャンペーン」を行っています。こういった世の中の動きを応援し、若者や女性がもっと活き活きと活躍できる世の中にしていきたいものです。
なお、11月のアンケートは「新しい政権に、農業政策が期待できると思いますか?」です。10/31に衆議院選挙が行われました。新しい政権は日本農業を良い方向に導いてくれるでしょうか。皆さんはどう思われますか? たくさんの投票をお待ちしています。