農業利益創造研究所

農業経営

アンケート結果「化学肥料・化学農薬を削減する取組みについて」

農業利益創造研究所では、8月29日~9月11日の期間で「化学肥料・化学農薬を削減する取り組みについてのアンケート」を実施しました。ご回答いただいた方々にはお礼を申し上げます。

有機農業と肥料の高騰

農林水産省は、持続可能な社会へとつながる取組み(みどりの食料システム戦略)を2022年から実施しました。これは農業に関わる資材の調達から、農産物の生産、加工・流通、消費まですべてのプロセスで持続可能な社会につながる取組みをしようという戦略です。

この戦略の中で化学肥料の使用を抑えて有機農業を行おうという目標も出され、ちょうどこの戦略と時期を同じくして、下のグラフのように化学肥料が高騰し始め、化学肥料や農薬を使わない農業が注目されてきました。

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※農林水産省 農業物価指数より

アンケート回答結果

それでは、化学肥料や農薬を削減する栽培方法や、有機栽培農業をどれくらいの農家が実践しているのでしょうか。興味深い回答を得ることができました。

以下のような営農類型の農業経営者、計14件の方から回答して頂きました。

回答者の営農類型

以下のような営農類型の方から回答いただきました。

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交付金が出る事業のことは知っている。

肥料価格高騰対策事業とは、化学肥料低減の取組を行った上で令和4年6月~令和5年5月に購入した肥料のコスト増加分の7割を交付金とする事業です。これは最近新聞などで多く公表されていましたので、知っている方が多いようです。

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化学肥料を減らす取組みを行っている方が多い。

化学肥料を使う今までの栽培方法を変えるのは容易で無いと思われますが、やはり値上がりしている肥料代を削減しようと皆さん取組んでいるようです。

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堆肥や有機質肥料を使う農家が多い。

取組み方法は、やはり堆肥や有機質肥料を使う方が一番多いです。2番目に多いのは土壌診断ですが、自治体によっては土壌診断の費用に補助金を出す場合もあると聞きます。土壌を調べて本当に必要な成分を必要な量だけ施肥するのは非常に有効だと思われます。

どのような取り組みですか?
単肥配合の低価格肥料の使用 14.3
土壌診断して、必要な成分のみを散布する 57.1
生育を観察しピンポイントで肥料散布する 7.1
堆肥、有機質肥料の使用 85.7
側条施肥 7.1

ほとんどの農家は農薬を減らそうと努力している。

ご覧のように農薬を減らそうという意識は皆さん持っています。農薬費の削減のためだけでなく、安全安心な農産物を生産するという意識もあるのではないでしょうか。

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無農薬栽培かピンポイント散布が多い。

農薬費削減と安全な農産物のために無農薬栽培は理想的ですが、すべての作付け面積で行うにはリスクがありますし、手間もかかります。おそらく一部分は無農薬栽培、残りはピンポイント散布、この2つの併用なのかもしれません。

どのような取り組みですか?
無農薬栽培に取り組む 27.3
病害虫の部分のみの手作業によるピンポイント散布 45.5
ドローンによるピンポイント散布 18.2
ロボットや機械による畦畔除草等 9.1
よく観察し余分な農薬は使用しない、農薬散布を遅らせる 9.1
化学合成でない農薬の使用 9.1

40%の農家が有機栽培を行っている。

40%の農家が何かしら有機栽培を行っています。農林水産省の資料によると、世界の有機農業の取組面積は、1999年から2016年の間に約5倍に拡大しているそうです。日本は世界に比べるとまだ少ないのですが毎年緩やかに増加しているそうです。

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まとめ

以上の回答から、皆さんは何らかの形で肥料・農薬の削減を行いたい、有機栽培をやりたい、という意向があるということがわかりました。しかし農業は1年単位で進んでいく業種ですから、新しい取組みには時間がかかりますので、資材の高騰による所得の減少に対しての短期的な対策は、国や自治体、JA等による支援が求められます。

しかし、長期的には、化学肥料を抑えて有機栽培などの循環型農業の取り組みを行っていくことにより、輸入肥料原料への依存を削減し、安全安心な農作物を増やしていくことが大事だと思われます。
アンケートの回答ありがとうございました。

リンク

農林水産省「みどりの食料システム戦略
農林水産省「肥料価格高騰対策事業
農林水産省「有機農業をめぐる我が国の現状について

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。