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作目

ブロッコリーが「指定野菜」へ昇格! 栽培農家の経営を調べてみました

個人情報を除いた2022年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家11,500人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。

2024年1月22日に、農林水産省はブロッコリーを2026年度から「指定野菜」に追加する方針を発表しました。

ブロッコリーが「指定野菜」に決まれば、ジャガイモ以来で50年ぶりだそうです。現時点での指定野菜は14品目(キャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、たまねぎ、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ばれいしょ、ピーマン、ほうれんそう、レタス)で、これらの野菜の出荷量は横ばいなのに対して、ブロッコリーは2020年から約1.3倍に上昇しているそうです。

「指定野菜」になると、国の需給ガイドラインに基づく供給計画により安定的な生産を行うことができ、さらに価格が下落した際に生産者に補助金が多く支払われるため安心です。

今回は、農業簿記ユーザーからブロッコリーを生産している農家123件のデータを分析して、どのような経営なのか探ってみたいと思います。

ブロッコリー出荷量TOP5

ブロッコリーは、体を健康に保つために必要な栄養成分が多く含まれているそうで、そういった所も人気が出てきた理由だと思われます。他にも、皮をむく必要がなく、比較的調理が簡単なことが人気の理由かもしれません。

ブロッコリー出荷量の都道府県TOP5を以下の表にしてみました。出荷量1位は北海道で全国の16%を出荷しています。2位は愛知県、3位は埼玉県、4位香川県、5位長野県です。

2022年産ブロッコリー 都道府県別の出荷量 TOP5
作付面積
(ha)
収量
10a当り(Kg)
出荷量
(t)
1位 北海道3,06090226,200
2位 愛知県9721,55014,100
3位 埼玉県1,1901,30013,300
4位 香川県1,3001,02012,700
5位 長野県1,1301,02011,100

表を見て気づくのは、愛知県と埼玉県の単収が非常に多いことです。ブロッコリーは冷涼な気候を好むそうなので北海道や長野県は適地なのでしょうが、近年多くの品種が生まれて、愛知県や埼玉県のような温暖な地域でも安定した栽培ができるようになりました。栽培地域が増えたことも、出荷量増大の原因かもしれません。

ブロッコリー農家の経営内容

次にブロッコリー農家123件のデータを調べて、全国の野菜農家平均と比べてみました。ブロッコリー農家とはいっても、他の作目も作付けている複合経営がほとんどで、あくまでもブロッコリーが経営内の販売額第1位の農家ということです。

収入金額は1,900万円、農業所得と専従者給与を足した世帯農業所得額は390万円、収入金額に対する世帯農業所得の率は20.4%となりました。

中には所得額1,000万円以上の農家が12件ありましたが、平均的に見るとブロッコリー経営は高所得作目である、とは言い切れないようです。

野菜経営とブロッコリー経営の費用構成を比べてみましたが、特に違いは無く、固定資産額や借入金額も差が無く、ブロッコリー経営ならではの特徴的なものは見当たりませんでした。

野菜平均とブロッコリー農家の比較
野菜
全国平均
ブロッコリー
全国平均
経営体数4,452123
収入金額23,11319,121
販売金額19,72116,264
雑収入3,2972,797
世帯農業所得6,1143,903
世帯農業所得率26.5%20.4%

※金額の単位は千円。

ブロッコリー主要産地の経営比較

ブロッコリー出荷量トップ5の中から4つの道県を比較してみました。さすが出荷量が多い県だけあって、どこも農業所得額が高くなっています。

ブロッコリー主要産地の比較
ブロッコリー
全国平均
北海道愛知県埼玉県長野県
経営体数1231441519
収入金額19,12149,22323,01921,86817,381
販売金額16,26437,86220,47420,29515,627
雑収入2,79711,3132,4961,4851,692
世帯農業所得3,9039,3118,6446,2843,413
世帯農業所得率20.4%18.9%37.5%28.7%19.6%

※金額の単位は千円。

北海道は大規模経営であり、雑収入が多いのに所得率が平均的なのはおそらく経費が多くかかっていると思われます。しかし、農業所得930万円はりっぱです。

愛知県はデータ数が少ないので参考程度に見ますが、農業所得率が非常に高くなっており、費用構成を調べてみると雇人費が非常に少なくなっていました。ブロッコリーの収穫作業は手作業ですが、どうやったら人手が少なくてすむのかさらに詳しく調べてみたいところです。

埼玉県も農業所得率が高く、肥料費と農薬費と減価償却費が非常に少ないことがわかりました。データを見て結果はわかるのですが、なぜそうなっているのか、どうやったらそうなるのか深いところまでわからないのが残念です。

農業所得1,000万円の経営

ブロッコリー経営は野菜経営の平均より多少所得が少ないことがわかりましたが、中にはすばらしい経営があり、所得1,000万円以上の経営が12件ありました。収入金額は6,000万円、世帯農業所得は1,500万円というすばらしい経営です。

この12件の農家を詳しく調べると、販売作物はブロッコリーのみに頼っておらず、75%もの農家が「ブロッコリー+トウモロコシ」を作付けしていました。なぜブロッコリーとトウモロコシの組み合わせを高所得農家が選択しているのかはわかりませんが、ぜひ参考にしてください。

農業所得額1,000万円以上農家の平均
所得1,000万円以上
(12経営体)
収入金額60,377
販売金額50,696
世帯農業所得15,015
世帯農業所得率24.9%

※金額の単位は千円。

まとめ

ブロッコリーは主に露地での栽培ですから、稲作の転作として徐々に広がってきたと思われます。2026年に指定野菜になるということで、水稲経営の転作作物として、野菜の複合経営の野菜として、今年からさらに作付けが増えてくるかもしれません。

消費者の声として、「ブロッコリーは栄養価も高く、調理に手間がかからず、少量でも食べごたえがある」という意見が多く、また、最近スティックタイプのブロッコリーで「スティックセニョール」というアスパラガスのような食感と風味の品種が注目されているそうです。

様々な追い風に乗って、これからブロッコリーが食卓に出てくる機会が増えそうですね。

以前掲載した、2021年のブロッコリーのデータを分析したコラム「ブロッコリーは2番手3番手が大事」もぜひ合わせてお読みいただければと存じます。

関連リンク

農林水産省「ブロッコリー生産量上位について

南石名誉教授のコメント

国内で栽培されている作物には、一般に、栽培地域に適した品種、作型、栽培方法等が知られています。

アスパラガスは、水田転作に適した作物ともいわれていますが、露地栽培と共にビニールハウス栽培もあります。条件がそろえば、周年栽培が可能で、早生・中生・晩成や春播き・夏播きなどの多くの作型を組み合わせることができます。

品種や作型によって、収量や価格も異なってきます。これらの要因が今回の分析で明らかになり、栽培地域別の収量や所得の違いの背景にありそうです。

 この記事を作ったのは 農業利益創造研究所 編集部

農業者の簿記データとリサーチデータをデータサイエンスで統計分析・研究した結果を、当サイトを中心に様々なメディアを通じて情報発信することで、農業経営利益の向上に寄与することを目標としています。