
みなさん、「ChatGPT(チャットGPT)」を知っていますか。
「チャットGPT」はアメリカのOpenAI社が開発した、大規模言語モデルの人工知能です。2022年11月にリリースされ日本語でも利用でき、様々な質問にもかなり賢く回答してくれるので大きな話題になっています。ビジネスの現場でも有効活用できるという意見も多く、仕事でどのようにチャットGPTを生かしていけばいいのか、というネット記事もたびたび見かけます。
当研究所では、農業会計データを分析して所得向上のヒントや、新規就農時に参考になるデータを紹介していますが、今回は、当コラムで分析した内容を「チャットGPT」に質問したらどんな回答が返ってくるのか試してみました。他にも、農業経営に関する質問もしてみましたので、どのように答えるのか楽しみですね。
今回の「対話型AI」は、マイクロソフトの検索ツール「bing」の中にある「チャット」機能を使いました。この機能はチャットGPTを元に開発されたGPT-4という新モデルです。
「bingチャット」はこんなことに活用できる
「bingチャット」は簡単な質問をすると、ネット内に存在する様々な文章を探して学習して組み立てて回答してくれます。質問に対する回答だけでなく、小説や詩の創作、英文の翻訳、議事録やレポートの作成、文章の要約やチェック、企画・提案まで行えるそうです。
まずは腕試しに、「日本の農業経営体数はどれくらいですか」と質問したところ、「令和4年2月1日現在の農業構造動態調査の結果によると、全国の農業経営体数は97万5,100経営体で、前年に比べ5.4%減少したそうです」と、即座に回答しました。
おそらく農林水産省のホームページから持ってきたのでしょうが、googleで検索するより簡単に答えにたどり着くことができます。
農業経営の質問にも答えてくれるのか
「bingチャット」は農業経営のことについても教えてくれるのでしょうか。実際に試してみましょう。当研究所にて、稲作の適正規模についてデータ分析したことがあり、そのコラム内では以下のように記述していました。
販売金額2,000万円以上(稲作面積だと約20ha以上)になると所得率は29.9%で伸び止まっています。3,000万円以上(約30ha以上)のデータは少ないためその先は何とも言えませんが、少なくともオペレータ1人の個人経営では、このぐらいの規模が最もパフォーマンスが良いのかもしれません。
引用:農業利益創造研究所「規模拡大は万能か? 農業所得率から見る適正規模とは」
それでは、「bingチャット」に質問してみましょう。
Q. 稲作経営の適正規模はどれくらいですか。
A. 稲作経営の適正規模は、一概には言えませんが、一般的には以下のような要因が影響します。
・地域や地形の特性:平場水田地帯では7~15ha程度、山間部では2~3ha程度が目安とされます。
・経営形態や作付け体系:稲作中心の単一経営では10~20ha、複合経営では5~10haが目安とされます。
転作割当や畑作物の作付けも経営規模に影響します。
・・・途中 省略
以上のように、稲作経営の適正規模は、さまざまな要因によって異なります。経営者は自分の状況や目標に応じて、最適な規模を見つける必要があります。
当研究所では約20haと分析しましたが、「bingチャット」は稲作単一経営なら10~20ha、とのことです。ちょっと規模に幅がある回答ですが、それっぽい回答をしてくれました。
(当研究所の分析が絶対かどうかわかりませんが...笑)
こんな高度な質問にも答えられるか
それでは、もう少し高度な質問をしてみましょう。どのように回答するか見ものです。
Q. 新規就農するなら何の作目をつくったらよいですか。
A. 新規就農するなら何の作目をつくったらよいかというのは、一概には答えられません。
作目の選択は、自分の農業経営の目的や規模、資金状況、栽培技術、地域の気候や土壌、市場の需要など、様々な要因によって決めるべきです。
ただし、一般的には、以下のような点に注意して作目を選ぶとよいでしょう。
・高収益を得られる作物を選ぶ
収量や単価が高く、経費や労働時間が少ない作物が望ましい
統計データや市場動向を参考にするとよい
営農類型別では、施設野菜作が最も高収益であることが多い
・自分の得意な作物や興味のある作物を選ぶ
栽培技術や知識が必要な作物は初心者には難しい場合がある
自分の好きな作物であれば、栽培に対するモチベーションが高まる
・地域に適した作物を選ぶ
地域の気候や土壌に合わない作物は栽培が困難であることが多い
地域の特産品やブランド品を栽培することで、販路開拓や販売促進がしやすくなる
以上のように、新規就農するなら何の作目をつくったらよいかは、様々な観点から考える必要があります。 自分の農業経営の目標や条件に合った作目を見つけるためには、事前に十分な情報収集や調査を行うことが大切です。
どうですか、かなり的確な回答だと思います。
なぜこれだけの内容を答えられるのか不思議ですが、実はこの回答を作成するうえで参考にしたサイトが回答文章の最後にいくつか表示されており、その中の一つに、当研究所のサイトがありました。当研究所のコラムを参考にして頂いて光栄です。
こんな活用方法がおすすめです
「bingチャット」は、アイディアの提案もできるようです。農業経営者にとって、直売所に農産物を売る際の宣伝文句に頭を悩ます方も多いと思います。そんな時に、「bingチャット」にマーケティング担当者になってもらうこともできるのです。
Q. 「人参」を宣伝するためのキャッチフレーズを30文字以内で3パターン作成してください。
A. キャッチフレーズを作るときには、ターゲットやベネフィット、緊急性や信頼感などを考慮すると効果的です。
以下に、参考になるキャッチフレーズの例を挙げてみます。
・人参の甘みがたまらない! 今だけ特別価格でお届け!(24文字)
人参のおいしさとお得さをアピールするキャッチフレーズです。
・人参で美肌効果! ビタミンAたっぷりの鮮やかなオレンジ色!(23文字)
人参の美容効果と見た目の魅力をアピールするキャッチフレーズです。
・人参は食べ方次第で無限大! 焼く・煮る・生で楽しむ!(23文字)
人参の食べ方の多様性と楽しさをアピールするキャッチフレーズです。
以上のように、おいしい「人参」を宣伝するためのキャッチフレーズを30文字以内で3パターン作成してみました。 どれも人参の特徴やメリットを伝える言葉を使っています。 ご参考になれば幸いです
いかがでしょうか? いずれも驚きのクオリティで、すぐにでも使えそうです。
まとめ
いずれの回答も最後に必ず「まとめ」の言葉があり、その内容がまるで人間が考えてコメントしてるような内容となっているのが本当にすごいです。今までは、「わからないことがあったときに検索エンジンで検索する」でしたが、徐々に「対話型AI」に質問する人が増えていくのではないでしょうか。
しかし、まだ不正確な回答をすることもありますので、完全に信じてはいけないようです。今回使用した「対話型AI」はインターネット上の情報をベースにしている部分があるので、間違った記事を参考にしたために間違った回答が出てくる可能性はあるのです。
また、気を付けなくてはいけないのは、仮に社外秘のような情報を「対話型AI」に入力してしまうと、その情報が学習されて、他の人の回答に使われる可能性もあります。ツールをじょうずに使いこなすかどうかは、やはり人間の知恵なのです。
関連リンク
マイクロソフトのチャットGPT (bingでのみ表示されます)
ソリマチ株式会社「みんなの経営応援通信 Chat GPTの登場で人間はより頭を使わなければいけなくなる」
南石名誉教授のコメント
マイクロソフトのBingチャットに、最近TVや新聞で良く取り上げられているChatGPTと、Bingチャットの関係を質問してみました。「BingはMicrosoftの検索エンジンで、GPTはOpenAIの自然言語処理モデルです。BingはGPTを使っていませんし、GPTはBingを使っていません。 BingとGPTは別々の会社とプロジェクトです。」
Bingチャットは、ChatGPTと異なり、回答の最後に「詳細情報」のURLを示してくれるので、回答の根拠を利用者が自分で確認できます。
次に、筆者が良く知っている学会について、質問してみました。学会の概要は、詳細情報の分かり易い要約になっていました。しかし、驚くことに、役員や代表者は、事実(詳細情報)と全く異なる内容になっていました。その後、暫くして同じ質問をしたら、全く違う回答になっていました。その内容はかなり正解に近づきましたが、間違った内容も含まれていました。
何故、詳細情報の内容と全く異なる内容を、Bingチャットが回答したのか、その原因は不明です。我々利用者が知らない事実について、Bingチャットに質問することには、大きな懸念があります。これは、ChatGPTでも同じです。最新のAIの機能には目を見張るものがありますが、事実と全く異なることを、堂々と回答することがあります。いつ、どのような時、間違った回答をするのかがわからないので、我々は、大きな可能性とリスクの両方を合わせもつ技術を手に入れたことになります。
1968年のSF映画『2001年宇宙の旅』が思い出されます。半世紀を経て、SFが現実になりそうな懸念と可能性を感じます。