
個人情報を除いた2024年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家15,780人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。
毎年当コラムにて、農業所得の都道府県ランキングシリーズを掲載していますが、今年も野菜経営のランキングを調べましたのでご覧ください。
※なお、このランキングはあくまでも『農業簿記』ユーザーの分析結果です。全国の農家全体のランキングとは異なっている可能性がありますので、ご了承ください。
地域別野菜経営の前年比較
まず都道府県を分析する前に、全国地域別野菜経営の状況を見てみましょう。野菜農家5,910件の2023年から2024年への増減率を地域別に比較すると、以下のグラフのようになりました。
農産物の販売金額は北海道、東北、中国、四国で増加しています。特に四国の販売金額が増加しましたが、これは徳島県と高知県が上昇したからです。
世帯農業所得が増加したのは、東北と四国です。四国は、やはり徳島県と高知県の所得が急上昇していました。徳島県では、ニンジン農家の所得が、高知県ではショウガ農家の所得が上昇していました。
全国的に北海道以外はどの地域も農業所得が増加しており、2024年の野菜経営は良かったといえます。
収入金額 都道府県TOP5
次に、収入金額を都道府県ごとにランキング集計し以下のような結果になりました。(データ件数が40件未満の県は集計対象外としました)農家一戸当たりの収入金額平均の1位は北海道(5,213万円)でした。北海道は2023年も1位、そして2位の群馬県と2倍の差があり毎年ダントツの1位です。
| 2023年度 | 2024年度 | ||
|---|---|---|---|
| 全国平均 | 24,782 | 全国平均 | 24,889 |
| 1位 北海道 | 52,841 | 1位 北海道 | 52,137 |
| 2位 群馬県 | 26,248 | 2位 群馬県 | 25,288 |
| 3位 長野県 | 24,603 | 3位 千葉県 | 25,182 |
| 4位 茨城県 | 23,501 | 4位 長野県 | 25,054 |
| 5位 熊本県 | 23,384 | 5位 栃木県 | 24,952 |
※金額の単位は千円
世帯農業所得 都道府県TOP5
世帯農業所得額では、またもや北海道がダントツの1位であり1,280万円は驚きの高さです。
北海道はジャガイモやタマネギなどを大規模農地で、機械化作業により効率よく経営していることで所得が高いのです。
第2位の栃木県は、所得トップクラスの経営を調べてみたところ、ホウレンソウ経営とイチゴ経営であり、所得3,000万円クラスの農家が多数いました。
今回TOP5に上ってきたのは長崎県です。農業簿記データを分析したところ、長崎県の高所得経営はジャガイモ農家だとわかりました。
全国でジャガイモ生産量の1位はもちろん北海道です。そして2位は2022年までは鹿児島県でしたが、2023年に長崎県が追い越しました。
ジャガイモは、オランダ人が長崎に持ち込んだことに始まり、「ジャガタライモ」と呼ばれていたそうです。長崎県では、春作と秋作の2期作栽培が行われ、一年中新鮮な新じゃがいもを供給できる産地なのです。
| 2023年度 | 2024年度 | ||
|---|---|---|---|
| 全国平均 | 6,454 | 全国平均 | 6,786 |
| 1位 北海道 | 12,865 | 1位 北海道 | 12,801 |
| 2位 栃木県 | 7,443 | 2位 栃木県 | 8,121 |
| 3位 石川県 | 7,037 | 3位 千葉県 | 7,778 |
| 4位 山形県 | 6,880 | 4位 山形県 | 7,494 |
| 5位 千葉県 | 6,747 | 5位 長崎県 | 6,996 |
※金額の単位は千円
世帯農業所得率 都道府県TOP5
世帯農業所得率(世帯農業所得÷収入金額)は、2023年も2024年も神奈川県であり、36.5%という高所得率です。
簿記データを調べてみると、神奈川県の野菜農家は、肥料費、農薬費が少なく(有機栽培)、消費地が近いので直売所が多くあり荷造運賃手数料が低い点が特徴的です。結果的に経費が少なくて所得率が高いと思われます。
今回TOP5に上ってきたのは福島県です。福島県の所得率が高い農家を調べたらトマト農家が多いです。
トマトは熊本県、北海道、愛知県が収穫量が多い有名産地であり、福島県は全国8位です。
なぜ、福島県のトマト農家の所得率が高いのでしょう?
福島県の高所得率トマト農家を調べたら、ほとんどが南会津地方の農家でした。南会津地方は「南郷トマト」というブランドをつくり、地理的表示(GI)保護制度に登録されています。そういった努力で高所得率経営となっていると思われます。
| 2023年度 | 2024年度 | ||
|---|---|---|---|
| 全国平均 | 26.0% | 全国平均 | 27.3% |
| 1位 神奈川県 | 34.9% | 1位 神奈川県 | 36.5% |
| 2位 岐阜県 | 33.2% | 2位 山形県 | 35.1% |
| 3位 栃木県 | 32.5% | 3位 岐阜県 | 33.7% |
| 4位 山形県 | 32.5% | 4位 栃木県 | 32.5% |
| 5位 石川県 | 31.9% | 5位 福島県 | 32.4% |
他に、2024年に急上昇した県は、6位の宮城県と、9位の兵庫県がありました。宮城県の野菜農家の中で高所得率経営はイチゴ農家が多くいました。宮城県は東北一のいちごの生産量を誇り、全国的にも十指に入る大産地だそうです。東日本大震災の大津波で沿岸部のイチゴ産地は被害を受けたのですが、現在新たな「いちご団地」の建設で生産量を取り戻しつつあるとのことです。
兵庫県で高所得率な経営は、淡路島の南あわじ市のタマネギ農家でした。淡路島玉ねぎは兵庫県を代表するブランド野菜であり、長期間貯蔵で甘みが増すと言われ、とてもおいしいタマネギだそうです。
まとめ
毎年この都道府県ランキングを集計していますが、まれに天候等による影響と思われる変化がありますが、さほど大きな変動はなくほぼ固定化しています。
これは間違いなく地域のブランド化戦略により高品質で高収量の野菜を安定的に生産しているたまものと思います。産地の特性を生かした野菜のブランド化が、農業所得を向上させるには大事なことだとあらためてわかります。
関連リンク
農林水産省「作況調査(野菜)」
南石名誉教授のコメント
今回の分析では、野菜経営の概要が明らかになりました。 世帯農家所得や世帯農家所得率が高い野菜は、ジャガイモ、タマネギ、トマト、ホウレンソウ、イチゴなどであることが明らかになりました。
このうち、ジャガイモ、タマネギ、トマトは、様々な料理の食材として季節を問わず安定した全国的な需要がある代表的野菜といえます。これらの野菜は、市場規模が大きな農産物を大規模生産することで生産コストを低下させることが、所得向上に向けた基本的な経営戦略の一つであることを再確認させる代表事例といえそうです。
