
個人情報を除いた2025年の簿記データ(ソリマチ農業簿記ユーザー:青色申告個人農家20,292人)を統計分析しました。統計基準や用語の解説は「統計分析に使用している用語の説明」をご参照ください。
8月のニュースで、2025年の全国の花き卸取扱高が前年比5.1%減となり、過去2番目の低さだったと報道がありました。花自体の需要減や生産者数の減少、地球温暖化による生産量の縮小など、さまざまな要因が絡み合っているようです。
今回は、農業簿記ユーザーである花き農家809件のデータから、花き経営の現況を分析してみましょう。
花き農家の現状
花き経営体数は、2020年農林業センサス時点の1万9,000経営体から、2025年には1万5,000経営体へと21%減少しています。農林水産省の「生産農業所得統計」によると、花きの総産出額の推移は以下のグラフの通りです。
コロナ禍前の2019年を100とすると、2020年は94まで落ち込みました。その後、コロナ禍が落ち着きを見せた2023年には108とピークを迎えましたが、再び減少傾向に転じています。
コロナ禍当初は葬儀やイベントの縮小で需要が減退したものの、2021年以降は「巣ごもり需要」によって市場が一時拡大しました。
しかし、2024年以降は再び総産出額が落ち込んできています。この背景には何があるのでしょうか。
花き経営の農業所得推移
続いて、農業簿記ユーザー(花き農家)のデータから、年度別の経営概況を見ていきます。
収入金額の動きは先ほどの総産出額とは少し異なり、2021年がピークになりその後減少傾向となっています。
世帯農業所得(特別控除前の農業所得+専従者給与)と、世帯農業所得率(世帯農業所得÷収入金額)の推移は以下の通りです。
2020年は478万円と落ち込み、2021年には607万円まで回復して過去最高を記録したものの、その後は下降線をたどっています。そして2025年には過去最低の439万円となりました。
また、2025年の世帯農業所得率も23.1%と過去最低を記録しています。2025年の現場では何が起きていたのでしょうか。
データを詳しく調べてみると、2025年は2024年と比べて収入金額が75万円減少した一方、動力光熱費が16.7万円増加していました。売上の減少に加え、近年の物価高・資材高騰が直撃したことが、所得減の明確な要因といえます。
花の品目別の分析
2025年全体としては厳しい状況だった花き経営ですが、品目別に見るとどのような違いがあるのでしょうか。
花き卸売市場の動向では、スイートピーの輸出好調やガーベラの需要拡大など、品目によっては堅調に伸びているものもあります。
そこで、農業簿記のデータ件数が多かった10品目について経営状況を比較してみました。
まず、2024年から2025年にかけての「収入金額の増減額」を見ると、スイートピー、ラン、ガーベラ、トルコギキョウが増加しています。対照的に、カスミソウ、キク、バラは大きく減少しました。
キクの減少は家族葬の増加など葬儀のコンパクト化、バラの減少は結婚式の小規模化や近年の猛暑・高温障害による出荷量の低下が影響していると考えられます。
次に、どの品目がより収益性を確保できているかを見てみましょう。
2025年の「世帯農業所得」の大きさでは、スイートピー、ガーベラ、ユリ、ランが上位を占めています。また、経営効率を示す「世帯農業所得率」が高い品目は、スイートピー、ガーベラ、カスミソウとなっています。
以下のグラフは、2024年から2025年にかけての「品目別・世帯農業所得の増減額」です。
近年、所得を順調に伸ばしている(=しっかり利益が出ている)品目は、スイートピー、ラン、リンドウです。一方、カスミソウ、トルコギキョウ、キク、バラは所得が減少傾向にあります。
かつて定番とされた汎用的な花きよりも、用途が明確で特徴のある品目や、輸出・イベント需要に強い品目の方が収益を維持しやすい傾向が見えてきます。
まとめ
近年の地球温暖化や夏場の記録的な猛暑は、花き栽培の現場において「品質低下」「開花・出荷時期のずれ」「病害虫被害の拡大」といった形で大きな影響を及ぼしています。
お盆・彼岸・母の日といった需要期に合わせた出荷調整が、気候変動によって難しくなってきているのが現状です。
また、近年の物価高は生産コストを押し上げるだけでなく、消費者の購買行動にも影響を与えます。
食料品などの生活必需品が優先され、嗜好品である花きは手控えられやすいため、社会経済の変化による影響をよりダイレクトに受けやすいのが花き経営の特徴です。
このように外部要因の影響を受けやすい分野ではありますが、環境変化に合わせた工夫や品目選択によって、高い収益性を維持している農家も数多く存在します。
当研究所では、そうした優良経営農家へのインタビュー記事も掲載しておりますので、ぜひ経営改善のヒントとしてご活用ください。
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